東京農業大学

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教員コラム

10年の根気が実って性フェロモン同定に成功

2016年2月18日

生物産業学部 アクアバイオ学科 水圏基礎生物学研究室 山家 秀信 准教授

魚のメスが自分のからだの中でつくり出し、体外に分泌することでオスの魚の行動を誘導する「生理活性物質」を、大学院生のころから研究しています。生理活性物質とは「性フェロモン」。こういうと、少しは興味をもってもらえるのではないでしょうか。
生物学の世界では、いろんな物質が混じり合った化合物から目的の物質を取り出して特定することを「同定」といいますが、この性フェロモン、なかなか同定が難しい。わたしの友人に、先代の研究を受け継ぎ、ケガニの性フェロモンの同定に取り組んでいる研究者がいますが、研究が始まって30年ほど経過しているのに、まだ同定できずにいます。いかに根気がいる研究か、わかりますよね。そのため、性フェロモン研究に取り組む研究者はきわめて少ないのが実情です。世界中の研究室を合わせても片手で足りるくらい。でも、それだけに未開拓で、やりがいのある研究です。

サクラマスの性フェロモンを同定

わたしの場合はとくにサケ科の魚にターゲットを絞って研究を続けています。コイ科の魚は種類が違っても、性フェロモンはほぼ同じであることがわかっていますが、サケ科は違うんです。種類ごとに調べなければなりません。
そんななかで、サクラマスについてはその同定に成功しました。それは「キヌレニン」という物質です。アミノ酸の一種である「トリプトファン」から代謝される物質で、産卵期を迎えたメスの尿の中に排出されます。満水の25mプールに耳かき1杯でオスは行動を起こします。研究開始から論文発表までに10年以上を要した研究の成果です。

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サクラマスを釣り上げご満悦の山家先生。これが大切な研究素材だ。

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