東京農業大学

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教員コラム

能取湖塩湿地の観光資源アッケシソウを再生

2016年2月18日

生物産業学部 生物生産学科 生態系保全学研究室 中村 隆俊 准教授

能取湖のアッケシソウ群落の再生に取り組んでいます。アッケシソウは別名サンゴソウといわれる通り、秋になるとアカサンゴのように赤く色づき、人々の目を楽しませてくれます。その国内最大の群生地である能取湖を抱える網走市にとっては貴重な観光資源になってきました。その能取湖のアッケシソウが立ち枯れしてしまったのです。網走市の観光課から連絡を受け、植物系の3研究室が集まって調査チームを発足させたのが2011年のことでした。

盛土による水質変化が主要因

植物資源保全学研究室(現 生態系保全学研究室)が最初に取り組んだのは水質調査です。枯れてしまった場所とそうでない場所の水質の違いに目をつけたのです。結果は明らかでした。枯れた場所の水質がpH3ほどの強い酸性を示したのです。pHは7を超えるとアルカリ性、下回ると酸性です。あの酸っぱいレモン水が2.5程度ですから、どれ程酸性度が強かったのかわかるでしょう。

主要因は2010年に行われた群生地への盛土および湖岸堤防の構築工事にあったようです。盛土に使われたのは湖底からさらった浚渫土砂です。海水が流れ込む汽水湖の泥は硫化物を多く含み、それが乾燥すると硫酸等の強酸性成分を生み出すことがあるのです。それが原因で群生地全体が酸性化したに違いありません。

さっそく酸性土の撤去を提案するとともに、もとのように湖水を群生地内へスムーズに流入させるための水切り溝の設置や、アッケシソウ種子の播種など多面的な再生アプローチを実施しました。

2014年秋現在、能取湖のアッケシソウはもとの5~6割程度にまで回復。一時は中止せざるを得なかったサンゴソウ祭も開かれました。

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能取湖アッケシソウ群生地。かつてはたくさんのアッケシソウで一面真っ赤に色づいていた。

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