東京農業大学

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進化する東京農大

平成29年度 入学式式辞

新入生の皆さん、入学おめでとう。

そして、皆さんの入学にあたり多大なる支援をくださったご家族をはじめ、ご関係者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。

本日は、皆さんの入学を祝うため、本学35番目の海外協定校として、昨年12月に協定締結をしました大韓民国・国立カンウォン大学のキン・ホンヨン学長、かつて本学を30年間にわたって経営された、公益社団法人大日本農会から染 英昭会長、在校生のご父母を代表して、青木教育後援会会長、そして本学から、理事長をはじめとする常務理事、理事、監事の方など多数の方に、ご登壇いただいております。ご多用のところ誠にありがとうございます。

本学に4月から新たに1学部、5学科が加わりました。新設学部の生命科学部には、遺伝子、化学、微生物の専門分野から人類が直面する難問にアプローチするバイオサイエンス学科・分子生命化学科・分子微生物学科の3学科、地域環境科学部には「自然再生」と「地域マネジメント」の2つの分野で、フィールドワークを主に実践的に学ぶ地域創成科学科、国際食料情報学部には生産科学や食品科学と社会科学の両面から学び、日本の「食農文化」を世界に発信する国際食農科学科です。

本学はここ世田谷キャンパスのほか、神奈川県厚木市に厚木キャンパス、北海道網走市にオホーツクキャンパスの3キャンパスに大学院2研究科、6学部22学科、短期大学部3学科の農学系総合大学に発展しています。

新入生の皆さんは数ある大学の中から、それぞれの夢を叶えるため本学を選び入学しました。これから皆さんには、生命・食料・環境・健康・エネルギー・地域創成など、幅広い領域を探究し、さらに『農』の進化に挑んでほしいと思っています。そのため、まず話しをしたいことは、本学の教育研究の理念「実学主義」を常に心に置いて、これからの新たな学生生活を過ごしてほしいということです。

東京農業大学は、今年で創立126年を迎えました。昨年の5月21日には「創立125周年記念式典」を開催し、秋篠宮文仁親王殿下のご臨席を賜りお言葉をいただくとともに、農林水産大臣、文部科学大臣、東京都知事並びにアメリカ・ミシガン州立大学長からご祝辞を賜り、国内外のご来賓、卒業生、学生代表、約800名の皆さまのご出席を得て、厳粛かつ盛会に執り行いました。

この歴史と伝統のある本学は、明治期きっての国際人であり、科学者でもある榎本武揚公により創設されました。榎本公は、徳川幕府から派遣留学生としてオランダへ留学し、蒸気機関学、船舶運用術などを学び、さらに科学全般や国際法などの分野も貪欲に勉強し、見識を広げられました。旧幕臣でありながら、その見識の高さと才能が明治政府に認められ、欧米列強がひしめく不安定な東アジアにおいて、わが国の独立と発展のため、逓信、文部、外務、農商務省大臣の重責を任されました。

榎本公は、経験により得た知識や見識により、当時は誰も試みることがなかった石鹸や焼酎の製法などの研究や温泉の地熱を利用した温室を考案するなど、榎本公の探究心の源には、自ら考え、科学的に実証するという「実学」にありました。そして目指す先に「日本の物質的利益」、「国利民福」を常に考えていました。

榎本公はこれまでの実学的経験から、これからの産業発展に先進的科学技術、特に「農業」の発展が近代国家の建設に極めて重要であると考え、本学を創設しました。

このような考えから榎本公は、農場実習や農家支援などの「実学教育」を重要視しました。この実学教育を継承し発展させるのが、我が国近代農学の祖である初代学長、横井時敬先生です。教育研究の理念「実学主義」は、横井先生の言葉「稲のことは稲にきけ、農業のことは農民にきけ」に込められています。つまり、机上の理論ではなく、その物、現場で自らの五感を駆使して、課題を発見し、その課題がなぜ起きているのかを自ら考え、科学的に実証するということです。

フランスの彫刻家オーギュスト・ロダンの言葉に、「天才?そんなものは存在しない。絶え間なく計画を立て、ひたすら勉強し、方法を探り続けることで、その域に達する。」とあります。

本日皆さんは、大学という「未来への扉」の前に立ちました。これから卒業までの間、大いに「実学主義」を実践し、「未来の扉」を開けるよう努めてください。

本学は、研究室での活動を教育研究の主体としています。講義や実験実習で専門的知識を蓄えることはできますが、今はそれだけでは、卒業してからの複雑化した社会で生きていくことの困難さを感じることとなります。専門知識に加えて幅広の教養を持ち、専門と専門とをつなげられる想像力と柔軟さを備えることが大切です。そのため学生と教職員がフェイスtoフェイスで教育研究ができる環境にある「研究室」を重要なものとして位置づけています。

「研究を通じて人物を育てる。研究を通じて教育をしていく。」これが本学の研究室のあり方です。そこには、同輩、先輩、後輩、留学生など様々な人間が集まり、ファミリーを形成しています。まったく違う知識や考えを持った人と対話できることが大事です。研究室のみならず、課外活動の場または卒業生や地域の皆さまとコミュニケーションをはかり、これからの学生生活を有意義に過ごしてください。

大学院生には、世の中の急速な進化に多くのことが求められています。そして社会は、より高度な専門性を備えた人材を求めています。大学院生の皆さんは、3年間あるいは2年間、指導教授の下、しっかりと社会へ出る準備を怠らないでください。

また、わが国では生産世代の減少の中、諸外国に後塵を拝しないためにも、さらなる個人の能力を向上することが求められ、大学院教育に大きな期待が寄せられています。学部生には、大学院進学を見据えた勉学姿勢で臨むことを期待しています。

本学は、創立125周年を記念して、本学学部を卒業し、かつ本学大学院博士前期課程を修了し、本学大学院博士後期課程(ドクターコース)に進学した場合の学費をほぼ無料とする「学びて後足らざるを知る奨学金」を創設しました。名称の由来、目的は、創設者榎本武揚が「礼記(らいき)」から学ぶことの尊さを説いて書した「学後知不足(学びて後足らざるを知る)」の精神を受け継ぎ、ドクターコースを経て、教員や研究者等、実学主義の教育研究の担い手となる有為な後継者を育成することです。

さらに、本学マスターコースに進学する学生全員の入学金・授業料・整備拡充費を半額に免除し、ドクターコースに進学するまでの経済的支援を行います。

初代学長の横井先生が好んで使われた言葉「質実剛健」「独立不羈」「自彊不息」が「東京農大精神」として、現在に継承されています。つまり、「物質主義に溺れることなく、心身ともに健全で、いかなる逆境に挫けない気骨と主体性の持ち主たれ」ということです。

本学の学びと研究の原点は「農」にあります。「農業」は、命を扱う業(ぎょう)であります。自然界に目を向ければ、そこには人知を超えた摂理があり、多くの生命の犠牲のうえに成り立っている人間の命もその一環です。

人が生きていくために必要不可欠な学問を「実学主義」で学び、「生命(いのち)」を大切にする「農のこころ」をはぐくんでもらいたい。

東京農大生の使命は、人類の幸せのため、倫理観をもって、地球に貢献すること。「農のこころ」をもって、人や動植物を含めたすべての地球の「生きる」を支えることであります。

これから、この大きな使命に、東京農大精神のもと立ち向かい、努力してください。

皆さんは、多くの人と出会う、場所と時間を与えられました。私から、人との出会いのなかでひとつお話ししておきたいことがあります。

「他者への理解と思いやり」が大切だということです。人は他人を理解し、信用することによって、自身の信頼を得ることが出来ます。思いやりをもって接することで、他者からの思いやりの心を受けることができます。自ら先に協力してあげることにより、その人も自分に協力してくれるようになります。双方で思いやりの心が生まれれば、それは真の人間関係が築けます。

最後に、本学の建学の精神は、「人物を畑に還す」です。「農のこころ」を持った学生を育て、世界の各地域のリーダーとして、輩出するということです。

この精神のもと、人々が幸せに生きることのできる社会の構築に、東京農大生が、それを担える人材となるよう、これから教育していきます。

これからの皆さんの活躍と努力に期待して、式辞とさせていただきます。

2017年4月2日

東京農業大学長
農学博士 高野 克己

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