最先端の化学を追究できる環境です
川上 祐樹 さん
農学研究科/醸造学専攻 醸造資源化学研究室(平成29年4月より 生命科学部 分子生命化学科 分子設計学研究室へ名称変更)平成20年3月 博士前期課程修了/東洋合成工業(株)勤務
バイオサイエンスの学びから化学の魅力を発見
東京農大では、食品の醸造を中心にバイオサイエンスの基礎を学びました。食品の味やにおいを決めるのは物質だと気づいたのをきっかけに、「すべての基本は化学だ!」と、本格的に有機化学へシフトチェンジ。
3年次からは、化学に特化した研究室に所属して、合成の研究に没頭する日々を過ごしました。
世界の最先端が体感できた研究室での活動
研究室では、主に抗生物質や糖をテーマにした研究に取り組みました。抗生物質とは、微生物がつくり出す「ほかの微生物の成育を阻止する化合物」で、分子構造はとても複雑です。また、糖はありふれた素材ながらも、セルロース、マルトース、デンプンなど、分子構造が1カ所違うだけでまったく性質の異なる物質に変化します。どちらも、非常に奥深い研究テーマでした。
いちばんの思い出は、週に1回の「進捗報告会」です。研究に行き詰まって思うように進まなかったときには、先生方との厳しいディスカッションが待っていました。当時は分かりませんでしたが、企業で働くと定期的な進捗報告は当たり前ですし、進捗がなかったら仕事として成立しません。試練だと思っていましたが、研究のやり方や考え方など、勉強になるアドバイスを受けることができた有意義な時間でした。
パソコンやスマートフォンの小型化に貢献
現在、私はフォトレジストに用いられる感光性材料の開発・生産に携わっています。皆さんが普段使用しているPCやスマートフォンの中には非常に多くの電子デバイスが使われています。それを実現するために用いられる技術がフォトリソグラフィであり、ここに使用される材料がフォトレジストと呼ばれる感光性の化学薬品になります。学生のころはあまり意識しませんでしたが、化学分野の領域は非常に広く、液晶ディスプレイや電子デバイスにも使用されるなど応用が利く分野なのです。
学生から社会人になり、フラスコで抗生物質や糖を合成していたのが、工場で電子材料に使用される化学薬品を開発・生産するようになりました。合成の規模や対象は変わりましたが、化学の魅力はいまも昔も変わりません。AとBを足して、Cという新しい物質をつくる楽しみ。合成に成功したときは、本当にうれしいものです。
自分が面白いと思うことを深く追究できたのは、東京農大に充実した学びの環境があったからです。常に自分の興味を駆り立てる驚きが、新しくできる分子生命化学科にはあると思います。