東京農業大学

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生命をつなぐ、「遺伝子」って何だろう。

精油成分がもつ耐性菌を生じにくい抗菌活性の枯草菌をモデルにした分子機構解析

 アロマテラピーとして利用される、植物から抽出される芳香性の精油は、抗細菌活性等の様々な生理活性を持っています。抗生物質が効かない耐性菌の出現が社会問題になっていますが、納豆菌と同類の枯草菌という、代表的な細菌を使って精油の抗菌作用について詳細に解析したところ、そのメカニズムには細胞死誘発という、耐性菌の出現を押さえる秘策があることがわかってきました。参考文献:Shinjyo Y, Midorikawa N, Matsumoto T, Sugaya Y, Ozawa Y, Oana A, Horie C, Yoshikawa H, Takahashi Y, Hasegawa T, Asai K. Analysis of cell death in Bacillus subtilis caused by sesquiterpenes from Chrysopogon zizanioides (L.) Roberty. J Gen Appl Microbiol. 2022 Sep 15;68(2):62-70. doi: 10.2323/jgam.2021.09.005. Epub 2022 Apr 13. PMID: 35418537.朝井 計、精油成分の抗菌活性に着目した細胞死研究~耐性菌を生じない抗菌薬開発の糸口~、化学と生物 Vol.61 (2023) No.3、Page. 104 - 106

シアノバクテリアにおける自律複製領域の探索とそれを利用した高発現ベクターの構築

 CO2を固定しつつ炭素化合物を合成するシアノバクテリアはCO2ニュートラルな有用物質生産ホストとして期待されています。産業微生物の多くは遺伝子改変により所望する形質の導入が行われてきましたが、シアノバクテリアでは遺伝子工学ツールが限られていました。私たちはシアノバクテリアにおいて高い複製活性を持つタンパク質CyRepAを発見し、これを用いて発現ベクターpYSを構築しました。参考文献:Sakamaki et al., (2022) Exploration of the autonomously replicating region and its utilization for expression vectors in cyanobacteria. Front Microbiol.

動物細胞の増殖ブレーキ因子を阻害する新規がん関連因子の同定と阻害機構の解析

  我々の体細胞では、むやみに増殖しないよう様々な増殖ブレーキ因子が働いています。その1つであるp27は、悪性度の高いがんほど発現量が少ないことから「がん抑制因子」として知られていますが、p27が十分に発現しているにも関わらず増殖し続けるがん細胞もあります。我々は、そのようながん細胞では「ブレーキ阻害因子」が多く発現しており、p27をトラップしてその機能を抑えていることを新規に発見しました。この因子は抗がん治療の新たな標的となることが期待されます。   参考文献:Kometani T,  Arai T, Chibazakura T.  Increased expression of NPM1 suppresses p27Kip1 function in cancer cells.  Cancers 12: 2886 (2020).

細胞の増殖と分化のキーファクターとしてのGTPの合成量制御機構の解析

GTPは、同じヌクレオチドでも、エネルギー通貨として知られるATP程には重要視されていません。しかし、ヒトから細菌まであらゆる細胞の増殖と分化には、GTP量の制御が密接に関わっていることが判明し、新薬のターゲットとして期待されています。胞子形成という細胞分化能をもつ枯草菌でも、餓死から細胞を救う機構に、GTPとその派生物(p)ppGppの合成制御が関与しています。参考文献:Osaka N, Kanesaki Y, Watanabe M, Watanabe S, Chibazakura T, Takada H, Yoshikawa H, Asai K. Novel (p)ppGpp0 suppressor mutations reveal an unexpected link between methionine catabolism and GTP synthesis in Bacillus subtilis. Mol Microbiol. 2020 Jun;113(6):1155-1169. doi: 10.1111/mmi.14484. Epub 2020 Feb 25. PMID: 32052499.

シアノバクテリアの複数コピー染色体のDNA複製機構

 大腸菌や枯草菌などのモデル原核生物の染色体のコピー数は細胞あたり1コピーです。これに対し、ある種のシアノバクテリアでは細胞あたり複数コピーの染色体を持っています。私たちはシアノバクテリアのDNA複製や細胞周期を解析し、DNA複製の開始点を世界で初めて示すとともに、複数コピーの染色体が一つずつ複製することを明らかにしました。参考文献:Watanabe, Cyanobacterial multi-copy chromosomes and their replication. Biosci. Biotechnol. Biochem., 2020; Ohbayashi et al. Diversification of DnaA dependency for DNA replication in cyanobacterial evolution. 2015; Watanabe et al., Light‐dependent and asynchronous replication of cyanobacterial multi‐copy chromosomes. Mol. Microbiol., 2012

 

 

5-アミノレブリン酸(5-ALA)による温熱下でのがん細胞死増強効果

 がん細胞は正常細胞に比べて41~43℃の温熱に弱いことが古くから知られており、副作用の少ないがんの温熱療法として利用されていますが、その効果は緩やかです。我々は温熱効果を高める物質として、全生物に含まれる天然アミノ酸の5-ALAに注目し、がん細胞に温熱処置とともに5-ALAを投与した結果、温熱下でのがん細胞死を増強することを見出しました。5-ALAは各種サプリメントとして市販されており、安全性も保証されているため、温熱療法の増強剤として期待されます。参考文献:Chibazakura T, Toriyabe Y, Fujii H,  Takahashi K, Kawakami M, Kuwamura H, Haga H, Ogura S, Abe F, Nakajima M, Yoshikawa H, Tanaka T.  5-aminolevulinic acid enhances cell death under thermal stress in certain cancer cell lines.  Biosci. Biotechnol. Biochem. 79: 422-431 (2015).

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