食品がもつ驚くべき力!?〜機能性食品〜
おなかの調子が悪い、血圧が高い……。こんな時私たちはどうすればいいでしょうか?ふつなら「薬」と答えるでしょう。でも、病気とはいかない軽い症状なら、実はある食品をとるだけで効果があるのです。『機能性食品』がそれです。
東京農業大学の応用生物科学部栄養科学科の荒井綜一教授が、食品のもつ驚くべき力を、紹介します。
昔、中国から伝わってきたこんなことばがあります。 『医食同源』−−。「日常の食生活に注意を払うことが、病気を防ぐ最善の方法である」という意味です。しかしこれはあくまでも思想であって、科学として証明されたものではありませんでした。
そもそも日本での食の科学的研究は、「栄養」が中心でした。戦前、日本はまだ貧しく、栄養によって健康維持を図ることが重要なことだったのです。そして、戦後になり食生活が豊かになってくると、関心は「おいしさ」に向かいました。ところが1980年代になると、高齢化社会の到来によって生活習慣病への関心が高まりました(生活習慣病とは、高血圧、糖尿病、アレルギー、がんなど、日ごろの食生活や運動不足によって起こる病気のことです)。そして、こうした機運の高まりとともに、食品の成分の研究が盛んに行われるようになり、その結果、ある興味深い事実が浮かび上がってきたのです。
”第三の力”
それは、「食品には、病気を予防する働きのある成分が含まれている」ということです。それまで食品は、「栄養」「おいしさ」だけに関心が集まっていました。ところが実は・第三の力・、すなわち病気を「予防」する力があることがわかったのです。そして、この働きをする成分のことを「機能性因子」と呼ぶことにしました。
機能性因子のいくつかを例にあげましょう。まずオリゴ糖。みなさんも一度は聞いたことがあると思います。お腹の調子を整える作用があり、便秘などに効果を発揮します。同じ働きをもつものとして食物繊維も有名です。また、お茶などに含まれるポリフェノールは、アレルギーに効果をもたらします。こうした病気を予防する成分である機能性因子は、これまでに何百・何千も発見されています。では、こうした機能性因子を含んだ食品を食べるだけで病気が予防できるのでしょうか?
答えは「NO」です。ほとんどの食品には機能性因子が含まれていますが、その量はごくわずかで、効果を期待するなら、大量に食べないといけないのです。食品には、機能性因子以外の成分も多く含まれています。そのため、一度に大量にとることは、逆効果をもたらすことがあるわけです。
そこで、有効成分を5〜10倍くらいに増やしたり、悪い成分を減らすなどして、より効果が上がるように計画的に作られたもの、それが機能性食品なのです。
薬と同じ?
機能性食品はこれまで数多くの商品が開発されています。その中でも、国が科学的な審査によって、「確かに効果がある」とお墨付きを与えたものがあります。『特定保健用食品』です。特定保健用食品になると、パッケージには、薬と同じように「効果」を表示できる特典がつきます。
でも、ここで間違えてはいけないのは、機能性食品は決して「薬」ではないということです。薬は「治療」が目的ですが、機能性食品は、あくまでも「予防」を目的としたものだからです。
ですからとり方も、病気になってからではなく、病気の予兆が出てきた時にとります。たとえば、血圧が140以上を高血圧といいますが、現在はそれ以下でも年々上昇の傾向にあって、近いうちに高血圧になるかもしれない、というのが予兆です。その時に、血圧を下げる機能性食品をとればよいのです。
効果は薬ほど劇的ではありません。でも、徐々に確実に効果を発揮するのが機能性食品なのです。そして強調すべきは、副作用がないということです。
『医食同源』。これは単なる思想にすぎませんでした。ところが科学の力によって、それが正しかったことが見事に証明されたわけです。
「古来の思想を現代科学によって実証する−−」そんな科学者ならではの醍醐味を、私たちは日々、味わっているのです。 |