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知的好奇心へのアドベンチャー VOL.13  

21世紀の「食」をささえる中食!

 「中食」って知っていますか?昼食(ちゅうしょく)とまぎらわしいので、一般的には「なかしょく」と呼ばれています。90年代に入ってから比較的頻繁に使われるようになった言葉で、21世紀の[食]を担う重要な“キーワード”になっているのです。
そこで東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科の藤島廣二教授が、この「中食」の実態と知られざる可能性について語ってくれました。

    

「中食」って何?


「中食」とは「内食」と「外食」の中間に位置している食べ物のことです。この場合の「内食」とは自分自身または家族のだれかが自宅で調理し、そこで食べる食事のこと。「外食」とは自分や家族がレストランなどに出向き、自宅外で調理されたものを食べる食事のことです。これに対して「中食」とは自宅外で調理されたものを購入し自宅、学校、職場に持ち帰って食べる食事のことです。いまテレビ番組や雑誌で”デパ地下グルメ”という言葉が取り上げられたり、コンビニ流通革命など話題の多いところでは、「中食」は中心的な存在となっています。  
それでは「中食」にはいったいどんなものがあるのでしょう。あえ物(野菜のゴマあえ、サラダなど)や揚げ物(カキフライ、トンカツなど)といったおそう菜、持ち帰りのお寿司やお弁当といった米飯類、サンドイッチなどの調理パン、そのまま食べることができる焼きソバなどなど、買ってきてすぐに食べることができるものを指します。そうそう、これからの季節に暖かさを感じさせてくれるコンビニのおでんなどは、「中食」の代表的なメニューといえるでしょう。
「中食」の歴史は意外に古く、その元祖は江戸時代のてんぷらです。屋台で揚げたてを買って、食べながら帰る……。そんな庶民の味が発祥だったのです。



この10年で急成長


この「中食」がここ10年ほどで急成長しています。日本惣菜協会の調べによると、99年度の中食市場規模はなんと6兆円を超えています。このうち、お弁当やおそう菜、ファースト・フード、宅配ピザなどの専門店が一番多くて半数近い40パーセント、おなじみのコンビニが第2位で約4分の1に当たる25%、食品スーパーが21%でこれに次いでいます。
たとえばコンビニの場合は1軒に約3千〜4千種もの商品が並べられていますが、なかでも「中食」の占める数は多く、経営をささえる重要な商品と位置づけられています。,90年代に入ってから「外食」市場の伸びが80年の約2倍弱と頭打ちになったのに対し、「中食」市場は引き続き増大傾向にあって、今後10年以内に10兆円を超える規模に成長するのは間違いありません。
ではなぜ「中食」は急成長しているのでしょう?利用面の特徴を調べてみました。私たちが,99年に調査したところ、1回当たりの利用額の大半が千円未満。「外食」のおよそ半分以下にすぎません。また安く利用できることからか利用頻度も高く、週2〜3回以上利用する人が約7割を占めます。「低料金でしかも手軽」という特徴が急成長の秘密といえそうです。


"パワーの源”は主婦と高齢者


 さらに、主婦と高齢者の利用がこの5〜6年で非常に増えていることが、「中食」の伸びを押し上げている要因であることもわかりました。一般的には若い人たちが利用するというイメージが強いと思いますが、調べてみると主婦であっても食事のバリエーションを増やすために利用しているという結果が出ていて、過去6年間で約1.8倍も伸びています。一方高齢者はまさにヘビーユーザー。とくに高齢女性の利用はめざましく、わずか5年間でほぼ2倍に達しています。この人たちはもともと「中食」を利用する習慣がなかった。しかし一度利用してみるとその便利さがわかり、リピーターになったものと思われます。  
いまから7、8年前に、ある高齢者の方が毎日スーパーに買い物に行くのは大変だということで、タクシー会社に買い出しを依頼するケースがありました。これは個人的な例ですが、もしタクシー会社、新聞販売店や牛乳宅配店、法改正が必要ですが郵便局などと連携した新たな宅配システムが開発されれば、まさにだれでも、いつでも、どこでも「中食」を利用できる環境が整い、市場はさらに伸びると予測されています。
おいしい、食べやすい、健康によいなどメニュー面での改善もテーマとしてあげられますが、これからは「中食」をどのようにして高齢者に届けるかを考え、宅配システムをどう作っていくかが、さらなる市場拡大のポイントとなるでしょう。「中食」産業はまさに21世紀をささえる産業といえます。その研究は日本人の食生活の変化の解明につながると同時に、私たちの食卓をさらに豊かにする可能性をも秘めているのです。
マーケットを調査し、食生活の変化の解明や、食卓を豊かにする可能性を考えるのも農学のおもしろさです。

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