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知的好奇心へのアドベンチャー VOL.34  

人間とペットの共生を考える〜犬との上手な付き合い方とは?〜


 日本は今、空前のペットブーム。家庭などで飼育されているペットの数は2003年に1900万頭を超え、なんと15歳以下の子どもの数を上回りました。そこで、東京農業大学農学部バイオセラピー学科の増田宏司講師が、私たちの最も身近なペットである犬とのよりよい付き合い方について語ってくれます。

動物とのふれあいが心を癒す


 動物とのふれあいには人間の心を癒すふしぎな効果があります。最近はその点に着目した「アニマルセラピー」も行われるようになってきました。セラピーに使われる動物は馬やイルカなどさまざま。なかでも最も多く使われているのが犬です。なぜなら、犬は何万年も前から人間と暮らしてきたため生活パターンが私たちに近いうえ、もともと狩猟など人間の仕事を手伝うための動物なので、「人間の命令を待つ」という忠実な性質を備えているからです。
 セラピーの一つとしてよく行われているのが、老人ホームなどの訪問。現在セラピー犬を務めているのはボランティアの家庭犬がほとんどですが、新たに活躍が期待されている犬がいます。それは現役を引退した盲導犬。訓練を受け、我慢強く、人間が大好きな彼らは、まさにセラピー犬に最適です。また、セラピーは人間だけが癒される場とは限りません。たとえば、犬がお年寄りの相手をし、お年寄りも犬の散歩やシャンプーを行う。そうすることで互いに癒され、人間と犬が共生関係を築けるようなセラピーの研究も進められています。


人間と犬を区別して考えることが大切


  ところが最近、癒しを与えてくれるはずのペットが逆に飼い主を悩ませるケースが増えてきました。犬の場合ならムダ吠えをしたり、いたずらをしたり、命令に従わなかったり。これらは「問題行動」と呼ばれるものの一例で、飼い主と犬との付き合い方に原因がある場合が少なくありません。なかには扱いに困った飼い主によって処分されてしまう不幸な犬もいます。こうした事態にならないよう、ペットを飼う場合は自分の生活に合った動物種を選ぶことが大前提。家の広さは十分か、毎日散歩させられるかといった点がクリアできないなら、犬より猫を選ぶべきです。
 また、犬も犬種ごとに性格が違います。たとえば人気のミニチュアダックスフンドは、小さな子どもがいたりすると自分のほうが上だという優位性を示したがります。一方、おとなしくてやさしい犬の代表格がゴールデンレトリバー。どんな性質の犬がいるのか、本などでよく調べてみてください。なお、飼い主と犬は異性同士のほうがうまくいくケースが多いようです。
 最近は、犬をペットとしてではなくパートナーや家族の一員として扱う人も多いようです。しかしいくら大切な存在でも、人間と犬は別の動物種。人間にとって快適なことが、犬にとっては嫌なことかもしれません。お互いが幸せに暮らすためにも、人間と犬を区別して考えましょう。たとえば、狭くても犬専用の場所を確保し、人間はそこに立ち入らないと決める。犬はいつでも逃げ込めるいわば「自分のお城」があることで、より安心して生活できるのです。
 しかるときは体罰ではなく言葉で。なでたりする場合もメリハリをつけ、過度に甘やかさないこと。「自分が人間に何かをしてあげない限り要求は通らないんだ」と覚えさせることが大切です。しつけは犬が痴呆症にならない限り何歳まででもできるので、あきらめずチャレンジしてください。


 

ペットの心をケアし人間との共生をはかる


 みなさんのなかには、「ペットをしつけるなら訓練士に預ければいいのに」と思う人もいるかもしれませんね。それも一つの手ですが、訓練を終えたらペットにとっての主人が自分ではなく訓練士に変わっていた、ということもありえます。そこで活躍するのが「行動治療の専門家」。ペットだけでなく飼い主とペットの両方に向き合って問題行動を治療し、両者の関係を修復するのが特長です。
  まずは飼い主からペットの様子を詳細にヒアリング。原因をつきとめ、それを治療するプログラムを作成します。ただし、実際にペットを治療するのは飼い主。専門家は症状が治るまでアドバイスに徹します。たとえば、郵便配達員のオートバイの音に吠えてしまう犬なら、その音を録音し毎日聞かせて徐々に慣らすといった治療を行います。時間と根気が必要ですが、その分愛犬の問題行動を自分の手で治すことができたときの喜びは格別ではないでしょうか。
  最近、しつけ相談や行動治療を行う専門機関が徐々に増えてきています。また、獣医師以外の動物に携わる職業、たとえば訓練士や動物病院で働くスタッフなどについても、人間でいう看護士に相当する「動物看護士」の国家資格化などが検討され始めています。
  ペットの数の増加とともに、今後は動物の行動治療や心のケアにあたる専門家や、獣医師と飼い主との橋渡し役をする人材が強く求められるようになるでしょう。そうした分野で活躍するために、人間とペットが仲良く共生していく方法を研究することも、農学のおもしろさです。

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