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知的好奇心へのアドベンチャー VOL.12  

資源を生かす食品科学の魅力

 スーパーの食品売り場にいくと、数限りない食品が並んでいます。しかし、こうした食品がどのようにして、またどのような思いで作られているのか、知っている人はほとんどいないでしょう。
そこで、東京農業大学生物産業学部食品科学科の福島正義(元教授)が、食品科学の現場と、食品科学を学ぶ人たちが抱いている夢について語ってくれました。

    

北海道は資源の宝庫


北海道に網走管内と呼ばれる地域があります。この地域は、網走刑務所、オホーツクの流氷などで有名ですが、そのほかにもうひとつ別の顔をもっています。
それは『資源の宝庫』であるということです。海からはホタテ、サケ、マスなど豊富な魚介類がとれます。大地には小麦、ばれいしょ、テンサイなどの寒冷地向きの農作物が実り、さらには酪農も盛んです。ちなみに乳牛の数は12万頭余りで、網走管内で最も人口の多い北見市の11万人を上回るほどです。
しかし、こうした資源は有効に生かされていないのです。こうした資源を上手に加工し、商品として生産できれば、地域の活性化に役立つのです。食品科学にたずさわる人たちは、地域振興という壮大な夢をかけて、商品開発に取り組んでいるのです。



レオロジーで食品を科学する


資源を利用して商品を開発していくのに、私たちが手がかりとしているのが「レオロジー」です。レオロジーとは「物質の流動と変形に関する科学」のことです。たとえば、食品を調べる時、ふつうは風味、かみごたえなど実際に食品を食べて主観的に判断していきます。しかし、資源を加工して商品にするとなると、一定の品質のものを大量生産しなければなりません。主観的な判断だけでは品質を一定に保つのが難しいのです。そこで、そうしたものを客観的な数字に置き換えていくのがレオロジーなのです。
網走管内では牛乳がふんだんにとれるので、牛乳から作るバターを例にレオロジーしてみます。バターはパイなどを焼くのに使用されるため、重要になってくるのはその粘性です。バターを上から押しつぶし、破壊のしかたを観察し、それを数値化します。パイ生地はバターを何層にも重ねて焼き上げるため、粘り気の強いバターだとバター同士がくっついてしまい、パイ生地が浮き上がらず、独特の歯ごたえが失われてしまいます。そこで粘り気やこしの数値によりパイ生地に適したバターがわかるのです。その基準となる数値の評価、これがレオロジーです。

資源を生かす創造力

 資源がありながら有効に生かされていない地域が日本にはたくさんあります。私たちはそうした資源を食材に次々と取り入れることで、地域振興に少しでも役に立ちたいと考えています。  
たとえば北海道で豊富にとれるホタテと牛乳から作るバターをドッキングさせ『ホタテバター焼きセット』という冷凍食品を作ることで、両方の消費量を増やすことができます。ホタテをバター焼きにしたときのおいしさを決める条件を実験で調べたところ、調理用バターとホタテの比率がおよそ1対12の時が最もおいしくなることがわかりました。また、液状しょうゆだけでなく粉末しょうゆを加えたバターなども開発しました。将来的には調理用バターをレストランや学校給食に使えないかと考えています。
さらに、この地域に自生しているブルーベリーをヨーグルトとドッキングさせ「ブルーベリー入りヨーグルト」の商品化も進めています。
創造力とレオロジーを使って資源を生かしていくのも、食品科学のおもしろさです。

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