森林環境工学分野 治山緑化工学研究室
生物多様性の保全に配慮しながら自然の回復力を引き出し、災害や開発で失われた豊かな生態系を再生する緑化工技術の研究を行っている。また、その基礎として、森林における水や土砂の動きを明らかにする研究を展開している。森林からの流出や蒸発散などの水循環過程、山地斜面における土壌侵食や崩壊、防災機能を発揮する樹木根系の役割などを中心に研究することで、水源かん養機能、気象緩和作用、土砂災害抑止効果など、森林が持つ様々な働きについて追究する。
KEYWORDS
環境再生技術、防災技術、砂漠化防止、生態系修復、森林の水収支、緑化技術、水源涵養、気象緩和
森林の環境保全機能を究め、緑を回復する
温暖化、沙漠化、生物多様性の低下など地球環境の劣化を食い止め、生態系、食料生産・生活環境を早期に修復、改善し、また永続的に保全していくために、森林の水源涵養能、気象緩和作用、土砂災害抑止効果、特に斜面における樹木根系の防災効果など、多彩な「森林の働き」を追究している。さらに、植生や土壌の発達についての研究、リサイクル資材や共生微生物資材の研究などを通して、荒廃地に豊かな生態系を取り戻すための緑化技術の開発をおこなっている。
所属教員
学生の主な研究テーマ
・風化花崗岩斜面における表面流発生と土砂生産・流出機構
・シカ食害地丹沢における林床被覆物の季節変化と降雨浸透率との関係
・Granier法による樹液流速の測定精度に関する検討
・含水率を低下させたマユミ種子の休眠の強さと発芽との関係
・灌水量・灌水頻度の違いがポット苗の根系伸長に及ぼす影響
・膨軟化処理を施した木材廃棄物の緑化資材がコマツナ及びヤシャブシの初期生育に及ぼす影響
・緑化法面における散布種子と自然定着植物との関係
FREE TALK
私は治山・緑化工学研究室に3年生から入室しましたが、実際に一年間を過ごしてみての感想は「光陰矢のごとし」です。
私の所属する研究室では高速道路などの法面や荒廃地、乾燥地などの緑化技術や森林地域の地下水の挙動などについて研究しています。私の場合は緑化対象地にて導入した樹木がいかにすれば健全に生育するかを研究しているのですが、実験対象が植物ですのでしっかりとした実験の結果を出すには早期の播種、年間を通しての手厚い管理が必要ですので暇な時期はありません。
それでも今までこうして腐らずに研究室活動を続けられるのはそんな忙しさの中にたくさんの得るものがあるからだと思います。計画性・責任感・考察力…そんなかっこいい響きの性質は簡単に得ることができますし、就職活動ではこの氷河期を乗り越えられる(現時点ではまだ乗り越えられていませんが)くらいの経験という武器を得ることができますし、何よりも気心のしれた仲間がたくさんできます。
ひどく大変なことも多いですが、楽しいこともその分多いのでこの研究室に入室してよかったと思っていますし、これからも治山・緑化工学研究室の室員としてがんばっていきたいと思っています。
(渡部晃司)
卒業論文を作成してみての感想
最初は,なにからはじめれば良いのかわからずに,研究のテーマを模索するところからはじまりました。
自分が興味のある分野の論文を集めたり,先輩から話を伺いながら現在まで,何が分かっていないのかなどを学び,実際の実験方法を検討したりとスタートを切るまでが大変だったのを覚えています。しかし,実験がはじまり,徐々に目的とするデータが集まるにつれて,努力が実ったときのように,嬉しかったことも覚えています(もちろん逆のこともありました)。
約1年間にわたり卒業論文を作成してみて,想像したように結果がでるときもあれば,でないときもあり,自然は私達が認識しているよりも複雑で未知の部分を隠し持っていることを知りました。また,実際に植物が生長する様子や普段あまり見ることのできない微小生物を観察することもあり,感動を覚えた同級生も多かったと思います。最後には自分の研究に対して誇らしいものを感じることができました。小中高でおこなってきた座学とは異なり,ゼロから自分で何かを創るということは,まさに実学であり,行動力や計画力など社会で生き,貢献する上で必要な能力を養えたと思います。
(伊藤大輔)