微生物研究の醍醐味を知り、企業の研究者に。
望月 大地さん
農学研究科/バイオサイエンス専攻 資源生物工学研究室(平成29年4月より 生命科学部 分子微生物学科 資源生物工学研究室へ名称変更)平成26年3月 博士後期課程修了/日本たばこ産業(株)勤務
農学の“最先端”の分野を学びたい
実家がイチゴ農園を営んでいるので、子どものころから農作業をする父親の背中を見て育ってきました。おいしいイチゴは、丁寧な作業のたまものです。収穫時期は農園を見ているだけで楽しい気分になったものです。生命の神秘に興味をもったのは、そんな実家の環境も影響していると思います。
実は、父親は東京農大の卒業生。農学への関心もあったのですが、高校生のころの私は、バイオサイエンスに“最先端”というイメージを被らせ、並々ならぬ興味をもっていました。ですから、「農学の“最先端”の分野を学びたい」という気持ちで東京農大へ進学したのは自然な流れでした。
微生物研究の醍醐味を体感
研究室では、「微生物の酸素代謝機構の解明」をテーマに研究をしていました。酸素代謝とは、酸素を使ってエネルギーを生み出すという、生命の根幹を支える機能です。最もシンプルな生命体である微生物は、「どうやって酸素を代謝しているのだろう。それを解明したら、生命の根幹が見えてくるのではないか」。微生物に生命体のロマンを感じ、研究に明け暮れる日々を過ごしました。
研究の中でも特に力を入れていたのは、微生物からタンパク質を精製する実験。精製に時間をかけてしまうとタンパク質の性質が変わってしまう可能性があるので、いかに短時間で取り出すかを必死で考えました。そして、何日もかけて何度も実験をやり直し、苦労の末に短時間で取り出すことに成功。このとき味わった達成感から熱意が高まり、次第に研究者への道を考えるようになりました。
基礎と応用、その両方を知るメリット
現在は企業の研究員となり、「原料科学」という分野を追究しています。主に、新たな原料処理方法の探求・解析、現象解明に関する基礎研究をおこなっています。最終的に、商品開発やプロセス開発に結びつけることをめざしています。例えば、新しい香喫味を発現させるためにはどんな処理が必要で、そこでは何が起こっているのか、その処理工程は実際にできるのかなど、その処理フローを日々、模索しています。
興味の追究から、商品化を見据えた応用的な研究へ。学生のころとは視点が大きく変化しましたが、革新的な研究をするには双方の視点をもつことが重要だと実感しています。基礎的な視点と応用的な視点、双方が学べる分子微生物学科は、非常に大きな魅力があると思います。