テレビ番組のプロデューサーとして、 農業と向き合う日々。
望月 欧州 さん
農学部 農業経済学科 / 農村社会学研究室(当時)平成10年3月卒業 / (株)NHKエデュケーショナル勤務
テレビや新聞で話題になった「日本の農業」に着目
受験生のころ、冷夏による農作物の不作の影響で、全面輸入禁止をしていた米を9年ぶりに海外から緊急輸入するということが起こりました。テレビや新聞では連日のように「米の輸入は、是か非か?」をテーマに、著名人たちが激しい議論を交していました。後にも先にも、社会があれほどまでに農業の話題で盛り上がったことはないと思います。
そこで、社会現象にもなった日本の農業を学べば、有意義な学生生活を送れるのではないかと考え、東京農大へ入学しました。
国内外の農村に出かけ、さまざまな学びを得た大学時代
「農村に足を運び、農家の人の生の声を聞き、その体験を自分の言葉でレポートせよ!」。在学中はこの課題のもと、国内外のさまざまな農山村に出かけ、農業の手伝いをしながらたくさんの方から話をうかがう機会に恵まれました。
東京農大の卒業生の方々にも、多くの時間を割いていただきました。面識がないにもかかわらず、ベトナムでNGO活動を行っている卒業生を頼って現地へ行き、2カ月間、マングローブ植林の隊員として活動したこともありました。
研究の際に最も重要視されたのは、「現場に行って、一次情報を得る」こと。これは、テレビの世界でも同じです。自分の目で見て、体験したことを伝えなければ何の価値もありません。「~らしいです」では、ニュースとして成立しませんから。また、レポートにまとめるときは、「自分の言葉で書く」ことも厳しく叩き込まれました。教えられたことをそのまま書くのではなく、自分の頭を使って考えて、情報を整理してから伝えること。思えば、大学での学びは、テレビ局での仕事ととても似た方法でおこなわれていました。
農業のカッコよさをテレビ番組でアピール
卒業後、(株)NHKエデュケーショナルに入社しました。2008年に初めてプロデューサーとして新番組の立ち上げに参加したのは、いまも担当している「趣味の園芸 やさいの時間」。講師やゲストを招き、家庭菜園やプランターでの野菜づくりを楽しく紹介する番組です。まずは農業を知ってもらうために、「家庭菜園はお洒落でカッコいい」ことが伝わるように努力をしました。衣装はアウトドアメーカーに協力していただき、当時はまだブームにもなっていなかった山ファッションに。出演者も、一人ひとりに直接声をかけさせていただきました。気づけば、家庭菜園は愛好家が増え、いまやすっかり定着しています。
日本の農業は、伝統工芸に匹敵するほど高いクオリティを誇っています。その手わざは本当に素晴らしいと思います。しかも、その年だけ品質の高い作物をつくればよいわけではなく、翌年もまた、おいしい作物をつくらなければいけません。これを当たり前に続けている、農家の人たちのカッコよさ。相当にレベルの高い仕事だと思います。その魅力を、これからも伝えていきたいです。