環境経済分野 環境経済研究室
環境問題は現代社会の最も重要な問題の一つである。その内容は、リサイクルをはじめとする身近なものから地球温暖化のような世界規模の問題まで幅広い。その中でも、特に近年食品ロスに対する関心が高まっている。当研究室では、このような食と環境に関連すること、あるいは農業・農村の多面的機能の評価といった環境保全に関連することを対象として、近代経済学の方法により研究を行う。またこれらの分析結果から、環境保全の重要性を明らかにすること、より良い環境保全政策を考えることも目的とする。
KEYWORDS
食品ロス、グリーン・ツーリズム、農業の多面的機能、新エネルギー、SDGs、フードバンク
資源・環境の評価・保全を経済学で考える
資源問題・環境問題は現代社会の最も重要な問題の一つです。その内容は、地球温暖化のような世界規模の問題から食品ロスの削減やリサイクルのような身近なものまで多様です。また、農業・農村の生物多様性保全機能やレクリエーション機能など、高く評価されながら価格付けがなされていない環境の存在も重要です。当研究室では、こうした幅広い分野にアプローチし、食資源の有効利用や環境保全の重要性を明らかにすることにより、有効な資源・環境保全政策に資する研究を行うことを目的としています。
所属教員
学生の研究テーマ
農業生産段階における食品ロス発生の要因解析
離島における産業発展 -沖縄県伊江島のサトウキビ産業を例に-
沖縄県におけるサンゴ礁の経済的価値 -保全に対する人々の意識-
白神山地と地域住民 -価値の認識と教育-
2023年度の研究テーマ・研究活動
規格外農産物のアップサイクルと沖縄県渡嘉敷島の環境協力税に関する研究
本研究室では食品ロスと地域活性化に関し 2 つのテーマで班に分け研究を行った。
食品ロス班のテーマは「規格外農産物を利用したアップサイクル事業が持続的に発展するためには」である。規格外農産物、アップサイクルに関する文献調査による概念の定義付けや 3 つの事業者に対して、経営上の課題等に関してヒアリングを行った。アップサイクルとは廃棄予定の物に価値を見出し、付加価値をつけて再利用するものである。規格外野菜を使用し加工商品の販売等を行う事業者へのヒアリングでは複数の地元農家との繋がりや差別化に注力し、使用する野菜を農家の言い値や正規品と同価格で買い取っていることが分かった。
地域活性化班では「渡嘉敷島を事例として沖縄の離島における入島税の支払意志額の推定」をテーマとして、アンケート調査を実施し、CVM(仮想状況評価法)を適用して、入島税の支払意志額に関する研究を行った。
入島税の一種である環境協力税は渡嘉敷島の道路整備やビーチ清掃、観光施設の管理に使用されている。金額の引き上げを検討する際の材料として調査を行った。環境協力税は住民も含め 1回の島への入域者ごとに 100 円徴収している。本研究では観光客に対し税の趣旨を説明した上で100 円から 1000 円のうち環境協力税をいくらまで支払うかを質問した。平均支払意志額の推定結果は 245 円となった。現状を考えると、観光客のみ金額を上げるなど税の徴収方法について更なる検討が必要であると考えられる。
2022年度の研究テーマ・研究活動
環境経済研究室では例年環境に関する 3 つのテーマを設定し、それぞれ班に分かれて研究活動を行っています。2022 年度は「食品ロス班」「地域振興班」「ESG 班」に分かれて研究活動を行ってきました。ここでは、2022 年度における各班の研究内容について紹介します。
食品ロス班では、ダイナミックプライシングによる食品ロス削減の可能性を既存の報告書を基に研究しました。また、規格外野菜の廃棄の実態や原因、削減の可能性を、農家への調査や消費者調査により研究しました。
地域振興班では今年度、静岡県伊豆市を対象に飲食店における地産地消の現状と課題について調査しました。伊豆市産の食材を使った地産地消による地域振興を目的とし、現地調査も行いました。
最後に ESG 班では今年度、企業の SDGs 達成のための取り組みについて、ESG の観点から分析をしました。企業の SDGs 達成のための努力はどの程度効果をもたらしているのか、また社会課題の解決を企業目標とする中でその価値は向上しているのかについて研究を行い、各種データを用いて企業評価を独自に行いました。
2021年度 研究テーマ
炭素税に関する研究とフードシェアリングサービスに関する研究
本研究室においては、興味のある研究テーマに取り組める体制とするために、3 つの異なるテーマについて、班ごとに調査を行いました。
1 班は、炭素税に関する研究として、「地球温暖化対策に有効な税制度についての現状と検討すべき論点」をテーマとしました。炭素税に関して、日本の現状や海外の動向を踏まえつつ調査を行いました。
また残りの2 班は、フードシェアリングサービスについて取り組みました。フードシェアリングサービスとは、飲食店や小売店で余っている食品を安価で販売することで、新たな消費者のニーズとつなぎ合わせるものです。今回の研究内容として、1 グループは、フードシェアリングサービスを利用すること、利用しないことでの環境負荷問題について比較しながら研究を進めました。もう1 グループでは、フードシェアリングサービスの認知度や利用実態について、アンケート調査を通して現状を明らかにし、考察を行いました。
2020年度 研究テーマ
食品ロス・バイオマス・地域活性化
現在、地球環境は CO2 の増加による温暖化や砂漠化、水不足など深刻な多くの課題を 抱えている。そういった環境問題が発生している近年、持続可能な開発目標「SDGs」が 頻繁に話題として取り上げられている。本研究では、「SDGs」という国際社会全体が取り 組むべきとされる 17 の目標の中から「飢餓をゼロに」「エネルギーをみんなに そしてク リーンに」「住み続けられるまちづくりを」の 3 項目を選択し研究を行った。具体的な研 究テーマとしては、「大学生の食品ロス意識と削減行動の実態調査」「地域におけるバイオ マス活用の可能性について」「佐渡島におけるグリーンツーリズムの意義と可能性につい て」の 3 点である。
「大学生の食品ロス意識と削減行動の実態調査」は Google Form を用い、195 名の大学 生にアンケートを実施した。食品ロスを削減するためにどういった行動をとっているのか をより詳しく知るために「行動」を「購入・管理・調理」の三段階に分け、詳細な分析を 行った。その結果、食品ロス削減には意識と行動の啓発の両方が不可欠であり、食品ロス 削減の方法や食品の管理方法の啓発や周知を行っていくことが重要であるということが示 唆された。
「地域におけるバイオマス活用の可能性について」はバイオマス資源を廃棄物系・未利用・ 資源作物バイオマスに分け、それぞれの事例からバイオマス発電の今後を考察した。林産 系は群馬県の上野村、家畜系は北海道の鹿追町、廃棄物系は新潟県の長岡市の事例をそれ ぞれ研究した。その結果、地域内の資源だけでエネルギーを生み出し、関連産業の促進や 廃棄物処理問題を解決していることがわかり、持続可能な地域社会の形成に大きく寄与で きると考察した。
「佐渡島におけるグリーンツーリズムの意義と可能性について」は新潟県佐渡市を調査 の対象地とし、実際に、佐渡市の農家さんと DMO の清永さんにヒアリングを行い、地域 活性化の課題として、農業と観光業の連携が不十分であることがわかった。その結果より、 地域住民観光客双方からの情報の収集、管理、共有を徹底するべきであると考察した。