農業経済分野 農業経済研究室
― 次の農業へ ― 本研究室では、新しい技術の発展や、社会経済環境の変化に対応した「次の農業」を研究し、持続可能で幸せな「食の世界」を創造する。具体的には、①農業システム、②人材マネジメント、③政策・計画の三つのテーマである。①農業生産を中心に6次産業化、農商工連携といった視点から、付加価値を生み出す農業システムを考える。②新規就農や経営継承、企業参入といった視点から、新しい農業を創っていく人材の育成、マネジメントについて考える。③農協や集落営農、地域住民など地域農業に関わる主体の役割について分析し、農村や都市近郊農業が発展するための政策や計画を考える。「次の農業」を創るためには、昔や今を知ることが大切である。各地で活躍する人たちへの調査・交流を通じて、消費者だけでなく生産者や地域も幸せにする食の世界を創造する。
KEYWORDS
6次産業化・農商工連携、スマート農業、新規就農・経営継承、JA、農業政策、企業参入、都市農業
幸せな食を創る「農業」の価値・人・カタチを考える
― 次の農業へ ―
本研究室では、新しい技術の発展や、社会経済環境の変化に対応した「次の農業」を研究し、持続可能で幸せな「食の世界」を創造します。
具体的には、①農業システム、②人材マネジメント、③政策・計画の三つのテーマです。
①農業生産を中心に6次産業化、農商工連携といった視点から、付加価値を生み出す農業システムを考えます。
③農協や集落営農、地域住民など地域農業に関わる主体の役割について分析し、農村や都市近郊農業が発展するための政策や計画を考えます。
「次の農業」を創るためには、昔や今を知ることが大切です。各地で活躍する人たちへの調査・交流を通じて、消費者だけでなく生産者や地域も幸せにする、食の世界を創造します。
所属教員
学生の研究テーマ
集落営農法人におけるスマート農業導入による人材育成への効果
農産物直売所を基軸とした6次産業化による地域活性化
規制緩和による企業参入の推進は中山間地域を救うか?
生産部会の共選共販体制におけるインセンティブ設計
有機農業に取り組む新規就農者の類型化と社会的ニーズへの対応
2023年度の研究テーマ・研究活動
農協を取り巻く環境変化が営農指導事業に与える影響
―統計分析と事例調査分析をもとに―
2014 年に政府より提言された「農業改革に関する意見」に端を発する系統農協の「自己改革」は、2014 年 6 月から 2019 年 5 月までの 5 年間実施され、農協改革推進期間の終了後も、さらなる改革を目指し取り組まれている。本研究では、それらの自己改革の背景にある農協を取り巻く環境の変化が、農協の基幹事業である営農指導事業に与える影響を明らかとすることを目的とした。具体的な研究内容としては、まず、全国農協統計表を基にした相関係数行列の分析と回帰分析による営農指導事業の実施効果の測定を行った。次に、都市近郊の神奈川県 JA あつぎと地方産地の和歌山県 JA 紀南の 2 つの単位農協に対する事例調査分析を行い、営農指導事業の現状と環境変化が事業に与える影響を調査した。
分析の結果、統計分析における実施効果の測定では、農協経営において営農指導事業が金融事業や経済事業など他事業にプラスの影響を与える事業であることが明らかとなった。さらに、営農指導事業の持つ他事業に対する波及効果は、経営相談における金融事業の提案や、他事業部と連携した事業が展開されていることを、事例調査から実態として確認することができた。このことから、営農指導事業は農協の事業運営においても、依然として、なくてはならない事業であることが明らかとなった。また、事例調査分析から、既存研究で指摘されていた人材育成に関する課題のほかに、事務作業をはじめとした業務量の増加を課題となっており、事務作業の一部を他の指導員が担うといった組織内の連携によって対応していた。しかし、組合員や職員の高齢化をはじめとした要因により、直接的に業務量を減らすための取組みは難しく、課題となっている実態も明らかとなった。
以上から、営農指導事業のサービス縮小は、農協事業全体のサービス縮小を招くものであると考えられる。今後は、増加する業務負担に耐えうるだけの営農指導員の確保及びそれによる営農指導事業のサービス維持を重要課題として改革を進める必要があると考えられる。
2022年度の研究テーマ・研究活動
家族農業経営における農業と家事の役割分担
近年の社会状況として、家族観・ジェンダー観の多様化があり、仕事や家事の分担が大きなテーマとなっている。本年度の研究では、そうした農業界ではどのような分担を行っているのか調査した。
調査の結果、まず、農業の役割分担について、先行研究で指摘されていたような、女性が男性の農作業の補助を行うというという実態があった。一方で、妻が部門を担当する例など、農村社会おいても女性の農業参画において様々な変化があることがわかった。また、家事における役割分担は、概ね妻が家事を行っている事例がほとんどであった。仕事と家事の分担については、いわゆる会社勤めとは異なり時間のやりくりはしやすい面もあった。農村の生活スタイルが、就農者や農業に興味をもつ人に対して魅力のあるライフスタイルになることに期待したい。
2021年度の研究室活動
【研究室活動】農業経済研究室 6次化事業の研究と学生応援賞の選出
農業経済研究室の今年の研究テーマは「6 次産業化経営体における経営発展と地域との連携」です。加工や直接販売などを行い、事業を拡大している農業法人が、どのように地域と連携しているかや、地域農業・経済に与える影響を考察しました。農業は地域に根ざしています。そのため、単にどうすれば事業が成功するかではなく、地域との関係を視点にしたことが、これまでの研究にはない、私たちのオリジナルな点です。この解明のために、アンケート調査と事例調査、二つの調査手法を用いました。また、対象とする品目は、特に地域農業と関わりが深く、加工などで高付加価値化の実現可能性がある、果樹としました。
アンケート分析では、農林水産省の補助事業を実施している経営体333件にアンケートを配布し、145件の回答(回収率43.5%)を得て、全国的な傾向をつかみました。事例分析では、先駆的な事例で、みかんを生産・加工している(株)早和果樹園様(和歌山県有田市)を対象に、Zoomでヒアリング調査を行いました。事例分析により、6次化事業の意義をより深く理解することができました。
収穫祭にあわせて開催したリモート研究・活動発表会では、調査結果から分かったことを発表しました。また今後、調査させていただいた法人様に声をかけて、報告会を行う予定にしています。調査に協力してもらうことによって、研究室活動は、単なる勉強ではなく、社会的な活動になりました。そのため、その成果をお返しし、社会に還元することを目指しています。
発表会での発表後、本研究室では、農林水産省後援の「六次産業化アワード」の学生応援賞を選出しています。公的で大きな賞を選定するという責任のある仕事です。真剣に取り組むことで、全国の優良事例を評価する目を育みました。農林水産省や事業を実施している企業の職員さん達とも議論をすることで、良い経験になりました。
Zoomでの調査。取締役社長の秋竹様(黄色枠)に丁寧に対応いただきました。秋竹様自身大学院に在学中とのことで、研究について話が弾みました。来年こそは現地に行きたい。
事例対象である早和果樹園様のミカンと加工品をならべて。商品の品質やラベルなどを、楽しみながら確認、評価しました。これも大事な調査の一環です。
6次化アワードの選定風景。1,2年生中心に、11,12月に選定します。スーツの方は、農林水産省の担当職員様。無責任な選出はできないため、事業内容の確認をしています。
2020年度の研究室活動
農業経済研究室では、学生を中心に毎年一つのテーマを決めて、教員三名も参加して、共同研究をしています。共同研究の成果は、毎年11月に行われる収穫祭の文化学術展で、他の研究室とともに、発表します。当日は、一般の参加者や、研究室のOBOGの方など、多くの方に学生が直接説明しています。
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響があり、収穫祭が中止、私たちが最も大切にし、楽しみしている現地調査ができない、という状況でしたが、学生たちの工夫と、現地の農業者や、企業、公的機関の方の協力を得て、例年通り(以上?)に充実した活動ができました。
今年のテーマは、「集落営農法人におけるスマート農業導入による人材育成の効果」。スマート農業という、今後の農業を変えていく新しい技術が、日本ならではのムラを基盤とした集落営農法人にどのように影響するか、特に、今後の農業を担う人材の育成に、どの程度効果があるのか、分析しました。
現地調査に行けないことを逆手に取り、通常、一地域に行っている現地調査を、Zoomで全国4地域・法人に調査を行うことができました。農事組合法人神崎東部さま(千葉県)、農事組合法人うもれぎの郷さま(山口県)、農事組合法人田原さま(長野県)、農事組合法人ほづ様(京都府)のみなさん、調査協力、どうもありがとうございました。
また、収穫祭の代わりに、主に学内者対象にとした文化学術展で、Zoomで発表することができました。さらに今年は、アグロ・イノベーション2020(主催:一般社団法人日本能率協会、学術共済:全国農学系学部長会議、一般社団法人日本農学会、後援:農林水産省、経済産業省、日本貿易振興機構(ジェトロ))という、大変大きなイベントに参加し、多くの関係者の前で発表することもできました!
調査も、研究室での議論も、特に前期は遠隔で行わざるを得ず、苦労も大きかったですが、特に3年生の頑張りにより、大きな成果を残すことができた一年でした。
Zoomでの調査風景。左側のおじいちゃんと若い女性が、集落営農法人の代表と従業員。
ホワイトボードに書いて、調査結果についてディスカッション
Zoomでの文化学術展。例年のパネルではなく、パワーポイントで報告。
アグロ・イノベーション2020での発表。
様々な業界で活躍している人を前に、研究成果をぶつけました。
すべての発表を終え、充実感とともに
コロナのもとで研究室活動
新型コロナウイルス感染症に対しては、大学全体の方針に従い、しっかりと対策をしつつ、教育・研究・交流が十分にできるよう、活動しています。
学生による発表(教室とZoomのハイブリッド)
質問は、Zoom参加者にも届くよう、接続しています
研究室の時間以外にも、パネルなどでコロナ対策をしながら、共同研究の進め方を議論