植物生産分野 作物生産管理学研究室
作物の遺伝的能力を最大限に生かす生産環境の実現や、農薬・化学肥料などに起因する環境負荷を抑制した生産技術の開発を目的とした研究に取り組んでいます。また、網走地域の畑地にみられる作物生産力の阻害要因について探り、作物学・土壌学・植物病理学などの様々な側面から生産環境の最適化についても分析・研究を重ねています。実習や卒業論文研究等も、実際の農家で生産されている作物を調査し、生産や品質の向上について考察し21世紀に適した新たな作物管理体系の創出を目指しています。当研究室ではこのような教育・研究活動を通じて現場での課題解決能力や未来について俯瞰的に見る力をもつ学生を育成することを目標としています。
KEYWORDS
畑作物、生産現場、土壌環境、土壌病害、最前線農業技術
日本有数の食料生産拠点である北海道オホーツクのフィールドで、農業による環境負荷の低減と食料自給力の向上を目指して、作物学・土壌学・植物病理学等の分野を統合した教育・研究を行っています。
所属教員
研究紹介
吉田 穂積 教授
寒冷地の畑作物を病気から守る研究をしています。近年、病気から守る有効は方法が少ない土壌を介した病気(土壌病害)のために畑作物の生産ができない畑が多くなり、生産量が低下していることが日本のみならず世界で大きな問題となっています。私は、現在、ジャガイモの表面にアザを作り、イモの商品価値を著しく低下させる「ジャガイモそうか病」という病気を対象に農薬にのみに頼るのではなく、品種、施肥方法、栽培法などの観点も含めた総合的な土壌病害防除技術を開発するために農家さんの畑等を利用した実践的研究を行っています。
伊藤 博武 教授
FAO(2021)によると、干ばつ(34%)と冠水(19%)による被害が2008年から2018年の世界の食料生産に大きな影響を与えています。排水性の優れる北海道の畑圃場では広く深い根域の確保が超多収化のキーとなるのに対し、湿害が発生し易い地域環境である本州の水田転換畑圃場では湿潤下での酸素不足によって根の活力低下が生産量低下の原因となります。湿害や乾燥害に耐性を持つ品種・系統を見出すことは、大麦生産にとって早急な課題です。私達の研究チームでは、乾燥と還元土壌を調整して根系の初期生育に焦点を絞って観察し、危機を乗り越えるために日々実験を続けています。(写真:オオムギの根系を調査中)
中丸 康夫 教授
地球温暖化や飢餓などの環境・食料問題には、農業とそれを支える土が大きく関係しています。土を健康に保ち、持続的に農業生産を行うためには、土作りと呼ばれる、有機物の補給が重要です。これは同時に土からの炭酸ガス放出を減らし、地球温暖化対策ともなります。私たちは日本最大の畑作地帯である北海道で、家畜糞などの有機肥料を効果的な使用することにより、化学肥料への依存を減らす研究に取り組んでいます。また一方で、化学肥料、有機肥料それぞれによる環境汚染を防ぐための研究も行っています。
笠島 真也 准教授
畑作物の栽培技術を研究しています。品質の良い農作物をより多く収穫するにはどうすればよいのか?品種改良、植物生理、土壌肥料など、さまざまな分野が協力して課題を解決します。例えば、優れたコムギ品種の光合成の特徴などを把握し、肥料を与える時期を改善することで、どんな年でも品種のポテンシャルを十分に引き出すことが可能になります。また、雑穀の仲間であるソバは、収穫量が極めて低く、その制限要因を調査しています。このように、農業試験場や普及機関と連携して、北海道のフィールドで農業技術開発に取り組んでいます。
研究室活動の様子
今年も4月にバレイショ畑の肥料まきを行いました。今値段が高騰している化学肥料から有機肥料に切り替えても、バレイショの生産が維持できるかどうか、農薬に頼らず病害を防げるか、等の試験です。
網走市は北海道内でのビール大麦の70%近くを生産しています。そして此処で収穫されたビール大麦は主にサッポロビールに出荷しています。美味しいビールは、良い原料からと国内で唯一ビール会社としてビール大麦の育種を手がけているサッポロビールの新しいビール大麦品種なるかもしれない有望系統の栽培方法について学生も参加し協働で試験を行っています。
研究室の研修旅行でJAしれとこ斜里を見学させていただきました。大型ポテトハーベスターや自動トラクターの乗車体験を含めた施設等の見学をさせていただきました。JAしれとこ斜里の職員にはオホーツクキャンパスの卒業生が多く、社会の第一線で活躍する先輩たちと有意義な時間を過ごすことができました。
小麦栽培を学ぶK君は4月に播種し、8月に収穫しました。大事な要素は雑草管理と茎数管理であり、倒伏対策と病害虫対策に通じていると解説しました。彼は「パンを作るのに、どれだけの時間がかかるのだろう。パンは小麦から作る。小麦は畑で作る。パンを作るって農業だ。このパンはあなたと同じ空気を吸っていた小麦だ。そんな事を想ってパンを食べたことはありますか。“美味しい”を畑から作る世界にしたい。」と語りました。
春播き小麦の脱穀前に記念撮影(左端がK君)