植物生産分野 植物生産科学研究室
本研究室ではオホーツクの豊かなフィールドから着想を得た植物の分子細胞生物学研究と、遺伝子組換えを用いた植物分子育種・組織培養技術の指導を担当し、フィールドとラボワークを融合する感性と応用力を身に着けた人材を養成しています。その目標の下で地域の作物生産の課題であるジャガイモ病害の抵抗性の分子機構解明、動物細胞の糖鎖染色や糖鎖診断に用いられるトマトレクチンの異種植物発現生産と応用、過酷な環境に適応した希少植物アッケシソウを対象にその耐性能力の解明を通して土壌塩害克服を目指した植物の作出やファイトレメディエーションに応用可能な分子の探索を行います。冷涼な気候に適した工芸作物ホップの香り成分生合成解明など、他学科や企業とも連携しながら寒冷地の作物と野生植物の魅力を引き出す先進的な研究を展開しています。
KEYWORDS
遺伝子組換え、分子育種、糖鎖、塩害応答、病害抵抗性、植物バイオテクノロジー
植物の組織培養や遺伝子とタンパク質の解析、遺伝子組換えなどを担当する研究室です。トマトなど作物の病害耐性や、塩生植物アッケシソウを題材に植物がストレスに対応する生理メカニズムの解明と応用を目指します。
所属教員
研究紹介
小栗 秀 教授
レクチンは糖・糖鎖と特異的に結合するタンパク質で、赤血球凝集素とも呼ばれます。多様な糖鎖構造を認識し結合することから、組織染色や、悪性腫瘍化に伴う細胞の糖鎖変化の検出に応用されます。トマトやチョウセンアサガオはそうした有用なレクチンを生産する植物です。まず私達は、似た構造を示す二つのレクチンが、異なるタイプの糖鎖を認識するメカニズムの解明を目指し、その遺伝子配列を明らかにしました。植物はなぜレクチンを生産しているのでしょう。我々はトマトの病害抵抗性の観点からレクチンの役割解明を進めています。
坂本 光 准教授
塩害、乾燥、高温、そういった劣悪な環境に耐えうる遺伝子組換え作物の開発を目指しています。環境が悪化しても植物はそこから移動して逃げることができません。そのため、植物は様々な環境条件に耐えるための分子メカニズムを発展させてきました。私は、北海道に特徴的な希少植物であるアッケシソウに注目しています。この植物は、多くの植物が嫌う塩に強い、むしろ塩を好むという性質を持っています。この性質がどんな遺伝子によるものなのかを明らかにし、その遺伝子を導入することにより作物の耐塩性を上げる研究を行っています。
研究室活動の様子
1年生必修の実験科目の中で、我々の研究室では「ニンジンの無菌培養」を担当しています。大学院生がティーチングアシスタントとして1年生を指導してくれます。彼らは日頃の研究室活動で鍛えられた技術を持ち、また後輩の指導にも慣れているので、非常に頼りになります。一方、初体験の1年生は大騒ぎ。それでも農大には実験・実習を楽しむ学生が多いです。
トマトの交配をしています。開花前のトマトの花弁を開き、ピンセットでオシベを取り除きます。除雄という操作です。むき出しになったメシベに、交配する別の品種の花のヤクを押し当てて受粉完了です。今回は、矮性小型のトマトを母親、中玉のトマト品種を父親として受粉しました。こうして雑種第一代(F1)を作出、自家交配によるF2作出、PCRによる遺伝子の判別と実験を進めています。
卒業後、渥美農業高校で教鞭をとるOBのN先輩から、毎年7月にメロン1箱が届きます。高校の生徒と温室で育てたという、立派なメロン。食べごろになるのを待って、研究室のクロマトチャンバーの試験管とシャーレをどかして冷やし、ゼミ終了後に全員でいただきます。毎年ありがとうございます!今年もおいしかったです。君の作ったメロンを食べた後輩たちが実験引き継いでいます。