醸造微生物学分野 醸造微生物学研究室
清酒酵母などの醸造微生物を生理・生態・遺伝子解析など分類学的に検討して、醸造プロセスの構造、機能を解明し、それらを利用した新規酒類の開発も行っている。また、醸造酵母の香味生成機構の解明、生産性の効率化などの育種も行っている。
KEYWORDS
国酒酵母、微生物多様性、醸造特性解析、微生物育種、国酒醸造
食品・酒類をクリエイトする微生物
醸造微生物には特定のカビ・細菌・酵母が存在する。当研究室では主に、酒造りの環境にのみ生育する、世界に類を見ない清酒酵母の研究をおこなっている。清酒酵母はパン酵母・ワイン酵母などと同種とされているが、多くの形質から区別されることを見出している。そのため、パン酵母・ワイン酵母などとは区別した学名を提唱し、世界に紹介して日本酒文化の発展に努めている。また、醸造関連の微生物を生命科学・分子生物学の分野まで言及し、その特性の解明と機能の改変をおこなっている。その他、新規酒類の開発について研究をおこなっている。
研究室トピックス
所属教員
学生の主な研究テーマ
・国酒酵母の分類
・清酒もろみ中の酵母相の解析
・新規醸造法による清酒および焼酎醸造
・真性火落菌の分類学的研究
・清酒酵母の育種による香味改変
・網羅的遺伝子発現解析による香味成分精製機構の解明
・醸造酵母における醸造特性の解明
FREE TALK
国酒酵母!
醸造は、複数の微生物による複雑な相互作用の上に成り立っているため、微生物の性質を知り、区別するということが醸造を行う上で、最も基本的で重要なことであると言えます。そこで、私は日本の国酒と呼ばれる「清酒」「焼酎」「泡盛」の醸造に利用されるそれぞれの酵母の分類学を研究しています。国酒酵母は現在、ワインやビール醸造に利用される酵母と分類学的には同種とされていますが、これらにはみられない特性を持ち、独特な国酒醸造を可能にしています。実験では、それらの酵母の栄養要求性や生育温度を培養により調べる生理学的試験、どのような遺伝子を持つのかを調べる分子系統学的試験、微生物自体の成分組成を調べる化学分類試験など、多方面からアプローチしています。そして、国酒醸造に利用される酵母の様々な特徴を明確にすることで、分類学的に国酒酵母を区別し、更には国酒の地位向上に繋がると考えています。
清酒酵母の育種からメカニズムの解明まで!
清酒の味や香りの成分は酵母によって作られています。本研究室では、酵母の育種を行い味や香りのバランスを変えた酵母をつくり出し、製品化まで実現しています。私は育種だけでなく製品化した酵母の味や香りの成分を生み出すメカニズムを明らかにしそれを育種に応用するための研究を日々行っています。現在は清酒の味に関わる酸のバランスを変えた酵母を網羅的にRNAレベルで解析することでその酵母の代謝メカニズムの全貌を明らかにしています。
微生物の扱い方や清酒・焼酎などの醸造する専門的な知識、日々進歩する分子生物学、これらの知識、技術を応用し研究を行うには日々勉強が必要ですが、理解を深めるほど結果が出ることが楽しくなり、さらに製品化などの形になることもあるのでやりがいが感じられることも多いです。
夏の研究室旅行
夏には1泊2日で旅行に行きます。今年は神奈川県の秩父に行きました。旅行では蒸留所の見学やうどん作り、その他にも温泉、花火、バーベキューなど様々なことをして楽しみました。夜の宴会では時間を気にせず語り明かし、室員や先生方の普段とは違う面も垣間見られ親睦も深まり大盛り上がりでした。
研究室での生活
毎朝研究室に登校し、皆それぞれの実験にとりかかっています。しかし、実験が終わってからは、時間に余裕のある人が集まり、お金を出し合いお鍋をしたりお好み焼きを作ったりしています。時には先生も参加することがあり、普段、実験や研究を行っている時には話せないことを話したりして、室員、先生、先輩とのコミュニケーションをとる有意義な時間となります。これも研究室生活での1つの思い出になっています。