東京農業大学

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動物の特性と生命現象の探求

薫る野牧場 花坂 薫氏の特別講義を実施しました。

2023年9月7日

2023年7月4日にフレッシュマンセミナーという授業において、薫る野牧場の花坂薫氏をお招きし、学科の特別講義を開催いたしました。

東京農業大学のOGでもある花坂薫さんは、神奈川県で山地(やまち)酪農を実践しています。今回は、「『私でもできる』という姿を見てもらうことで、山地酪農を広めたい」という思いと、その挑戦の一部始終を伝えて頂きました。

このような特別講義をお引き受けいただいた花坂様には大変感謝しています。本当にありがとうございました。

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特別講演および講演後の様子

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学生の感想

Aさん:
 牛に優しい酪農と日本の山を作っていくことを同時に目指している山地酪農について、とても興味深く面白い話が聞けてよかったです。大型の家畜がのびのびと生活できる環境は、土地の広さを必要とすることや管理する人間が家畜を扱い易いように角を切ることがないこと、また、山路酪農を続けるために商業として成り立たせる工夫をしていることなど、これらの話を実際の経験と感想と共に聞けたのは貴重な体験だったと思います。どの話も体力や工夫、リスクを取る勇気が求められそうだと感じましたが、人が乳牛を育てることが自然のいい循環に組み込まれるというところは、あまり環境に無理のない自然な人と動物との付き合い方として魅力的だと感じました。
 そして、乳牛がどう生活していて牛乳が生産されるかについては富士農場の実習で学びましたが、事業を個人で始めるにあたって借金を作り、生産品を出荷して利益を出し、借金を返済するというお金の周りの話は聞けていなかったので、今回の講義で触れられて良かったです。ただ借金を返すだけでなく、国からの援助金があること、援助を貰うのに事業として成り立たつことを説明する必要があることなど、こういう話は面倒な部分が多いですが、社会に出て新しいことを真剣にやりたいのなら必ず必要になると思うので、その一例を聞けたことを出来る限り覚えておこうと思います。

Bさん:
 講義を聞く前は、牛は牛であって、草を食べて乳や肉を生産するために飼われていて、その生産能力にしか注目できていませんでした。しかし、山地酪農ではウシが持つ機能を利用して、土砂災害にも負けない強い山にすることが出来るということで、ウシを畜産業・食としての視点だけで見るのではなく、更に多面的なウシの利用が出来るという、自分にとって新しい視点を得ることができました。
 森林面積が7割を占める日本において、森林を管理する後継者不足や高齢化は大きな課題で、人の管理がされず木々が生い茂った森では草本が林床に繁茂しにくく、土壌をつなぎとめる根が広がりません。これでは大雨が起こると土壌が流されやすく、土砂災害が起こるリスクも高まってしまいます。そのような問題を解決する一つの形が山地酪農ではないかと、今回の講義を通して感じました。
 強い山を作るためには山に広く伸びる植物が繁殖することが重要であると考えますが、花坂さんの牧場ではノシバという匍匐茎(地上と並行して伸び、節から葉や根を伸ばす)を持つ植物を用いていました。ウシは山に入ることでノシバが繁茂する手助けをします。背の高い雑草を食べて、背の低いノシバが光合成できるような環境を作り、ノシバの種を食べたとしたら、糞の排泄に伴い山の様々な所に種が運ばれます。また、ウシの踏圧が刺激になって芝生が緻密になることもあるそうです。
林業のなり手不足は利益が少ないことも一つの要因であると聞いたことがあります。ウシの力を借りて森林を管理することは、人間にとって環境を整備する労力を低減できるだけでなく、ウシが生産する牛乳や食肉を副産物として販売でき、林業以外での収入経路の確保ができます。日本の森林を維持するひとつの方法として、山地酪農はとても魅力的な営農方法であると感じました。

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