植物共生分野 植物共生学研究室
植物の知識から自然環境を守り、人々の健康を守る
私たちの健康な生活は自然の恵み(生態系サービス)の恩恵のもとに成り立っており、地球資源の保全と持続的な利用は人類の課題である。当研究室では、都市、人里、里山から奥山にある自然や生態系の状態を、植物の分類、生態および遺伝的特性の解析により評価する研究を行う。これにより、絶滅に瀕している植物の保護と自生地の保全、環境の修復と再生に取り組む。さらに、植物資源の利用法に関する研究として、野生から得られる民間薬や漢方生薬などの原料となる薬用植物の有効利用、栽培体系化、薬用植物を用いた教育・福祉活動に取り組んでいる。学生は、国立公園、植物園、農業法人などさまざまな現場での体験、薬草や作物の栽培、加工、分析などの実験実習を通して、植物に関する基礎・専門知識を習得する。
所属教員
学生の主な研究テーマ
・絶滅危惧植物ヤマタバコ(Ligularia angusta Kitam.)の保全生態学的研究
・軽井沢半自然草地に生育するユウスゲの保全生態学的研究
・絶滅危惧種コシガヤホシクサの保全生態学的研究
・絶滅危惧種ヤナギタウコギの種子発芽特性
・帰化植物ウラジロチチコグサの生態学的研究
・イセイモにおける土壌および土壌水分の相違が生育に及ぼす影響
・日本の棚田の保全活動の現状
・ベニバナの容器栽培における摘心が花数に及ぼす影響
・チャの実生を用いた屋上緑化への試み-乾燥による枯上がり後の再生-
・モウソウチクを減らすため国産の竹箸の利用
FREE TALK
私たちの研究室の実験・演習について
2年生の後期になると3年生から所属する研究室を選ばなければなりません。私は里山での竹林の環境問題に興味があり、この研究室を選択しました。3年生からの実験と演習は所属した研究室単位で進められます。
植物共生学研究室の実験・演習は基本的には野外で行なうことが多いのが特徴です。4月は色々な植物の種まきから始まります。つまりこの一年間の実験のための植物の仕込み作業です。特に「稲作の文化を知る」というテーマでイネの播種を行い、6月には「人と稲の共生を学ぶ」ために手植えをし、7月に「稲と水田植物の共生」で水田の管理、10月に「稲の収穫調整を学ぶ」のテーマで手刈りによる収穫と脱穀、精米、その後の藁細工作り、11月には「稲の食文化を学ぶ」で自分たちが育てた色々なコメ(白・黒・赤米)と雑穀(キビ・アワ)を食味することで収穫までの大変さと喜びを学びました。また絶滅危惧種コシガヤホシクサ保護のため毎年、6月に苗を田んぼに植えつけ、11月に種子を収穫し、種の絶滅を防いでいます。さらにキャンパスに残されているクヌギ-コナラからなる雑木林の伐採更新、林床管理をおこない、キャンパスの森を守っています。7月には富士山5合目まで出かけて植物の垂直分布や森林限界の植物群の観察をおこなったり、季節を通じて自然の不思議さを知ることもできました。
自然が大好きな人、里山の環境に興味がある人、痛んだ環境を何とかしたい人、絶滅に瀕している植物を何とかしたい人、是非、植物共生学研究室に来てください。
(小林平和)
卒業論文を通して学んだこと・・・
私は、入学当初から環境問題に興味があり、植物共生学研究室に入室しました。そこで、環境向上植物であるソナレシバの耐塩性に関する研究に取り組むことにしました。世田谷キャンパスや(財)進化生物学研究所の先輩方の引き継ぎ実験だったので、さらに発展させた実験を行う必要がありました。先輩方の論文はどれも120頁ほどでしたので、私はこんなに論文を書けるのだろうか…という不安を抱えたまま研究を始めることになりました。
実験は全て自己責任で行うので、私にとっては孤独との戦いでした。先生のご指導も大変厳しく、挫けそうになることもしばしばありました。しかし、無我夢中で頑張った結果、卒業論文はデータを含めると350頁にも及び、結果的に先輩方の頁数を更に超えた論文を書くことができました。数で勝ることが必ずしも優位ではありませんが、私の努力が実った結果だと思います。
ひたすらに努力をすることは、必ずしも結果に繋がるとは限りませんが、自らを鍛える上で努力は必要なことだと思います。そして、ここまで努力を続けられたのは、周りの方々の支えがあったおかげです。卒業論文をやり遂げたことは、私の中で大きな自信になりました。
(石井優海)
収穫祭で得た宝
東京農業大学の収穫祭は他大学の学園祭とは一味も二味も違っています。収穫祭は学校生活において心身両面でつかんだ収穫を形にして学内外に伝える祭りです。
私の植物共生学研究室の文化学術展は、環境保全とその基礎知識、乾燥や塩害により植物が育たなくなった土地の回復、伝統工芸作物の現代における積極的利用、日本の原点である里地里山の研究という大変幅広い研究内容を、限られた時間と空間の中でどのように表現するかという点で何度も何度も話し合い意見を学生同士でぶつけあいました。
このような話し合いが、日ごろ話す機会の少ない同じ研究室の同級生や後輩たちとの交友を深めるきっかけを作ってくれたことが収穫祭に参加した大きな収穫でした。
一つの目標に向かってみんなで何度も話し合い、草案を作り、作業に取り掛かりました。収穫祭の開催日が近づくと作業は時には徹夜で続けられました。 また、先生が休憩の差し入れや夕飯をつくってくれたことは、忘れられない思い出の一つです。振り返れば本当に何もかもが楽しい瞬間でした。宝物のつまった時間でした。文化学術展の責任者をさせてくれたみんなに心から感謝しています。
(山本悦律子)
一生忘れることのできない研究室活動
皆さんは山へ登ると「緑がいっぱい!自然が豊か!」と思うかも知れません。でも、その緑が実は植林されたスギ林だとしたら、それは本当に豊かな自然なのでしょうか?あなたが今見ている自然は人工的なものかもしれません。
私自身この研究室に入室するまでは、自然の表面的な部分しか見ることができませんでした。つまり、正しく自然を読み取る力が無かったのです。しかし、宮本先生の研究室に在籍した2年間で白馬岳、北海道、軽井沢など豊かな自然が残されている様々な場所に出かける機会に恵まれました。白馬岳へはテントや食糧など、重たい荷物を背負って、研究室の皆で励ましあいながら2932mの頂に立つことが出来ました。そこには今まで見ることが出来なかった植物たちとの出会いがあり、また一生忘れることが無い自然景観の美しさを感じることが出来ました。私は植物についてはまだまだ知らないことばかりですが、研究室活動を通して“自然本来の姿”を見る目を養うことができました。卒業論文では軽井沢に自生する絶滅危惧種ヤマタバコの生態を3年生から追いかけ、ヤマタバコの生き様を知ることが出来ました。世界でこれだけヤマタバコと時間を共にしたのは私だけだと自負しています。
また厚木キャンパスに現存する雑木林の保全のため、研究室で伐採作業を行いました。木を1本切るということはとても大変な作業で、簡単には雑木林を健全に維持・管理することはできません。植物の保全はとても地道な作業で、沢山の人の協力が必要であるということがわかりました。
興味があることは自分から近づいてみて下さい。きっと面白いことに沢山出会うことができると思います。
(太田勝也)