学生による研究成果発表
2017年1月30日
1.フードビジネス研究室の活動
フードビジネス研究室では、大浦裕二教授、菊地昌弥准教授の指導のもと、研究活動を行っています。毎年、収穫祭(文化学術展)で発表するだけでなく、研究成果を広く学界・一般社会に知ってもらうために、学会報告、学会誌掲載を目標に取り組んでいます。
本研究室は60名を超える大所帯なので、6班に分けて活動しています。毎週金曜日の4限には、1週間の活動成果を各班が報告するとともに、学生だけではなく教員も加わって白熱した議論を交わすことで研究水準を高めています。
2.2015年度の研究内容
研究タイトルは、「中規模酪農産地における販路別の経営戦略に関する一考察 ―富士宮市の2つの経営体の事例をもとに―」です。中規模酪農産地である静岡県富士宮市を対象に、指定団体向け販路における乳量増加および生産コスト低下の対策と、自家販売の販路における6次産業化が、経営戦略として有益となっているのかを考察しました。
3.富士宮市への貢献
静岡県富士宮市と東京農業大学は2004年度より「フードバレー推進に向けた包括連携協力協定」を締結しており、この富士宮市のフードバレー推進協議会から、2015年4月に「地域食材に関する情報集約及びマーケティングに関する調査」の研究依頼がありました。これを受けてフードビジネス研究室では、地域食材の掘り起こしのための農家調査、小売店調査、さらには市民調査を1年かけて実施し、その内容を報告書に取り纏めました。さらに、その一部については、学会報告、及び学会誌に掲載いたしました。
4.現地でのインタビューとアンケート
統計資料を分析した結果、わが国の中規模酪農産地の中でも静岡県富士宮市が中核的であったため、地域貢献のための研究対象としてだけでなく、酪農研究としても重要な事例として位置づけられました。そして、市役所や農協の協力を得た上で、市内の酪農家にアンケート調査を実施するとともに、経営戦略を導入している酪農家にも3度の実態調査を行ないました。その際、礼節をわきまえて接することの大切さを実感したことに加え、教科書には載っていない現場や地域の特殊性の存在にも気がつきました。
5.収穫祭での発表
収穫祭の文化学術展では、食料環境経済学科の研究室が揃って研究発表を行っています。また、私達の研究室では、収穫祭の2週間前に、宇都宮大学と明治大学の研究室と研究交流会を行なっています。
収穫祭直前には、自身達が目標とした水準を超えるために、いっそうの努力を行ないます。遅い時間まで作業することや室員間で徹底的に議論することも珍しくありません。大変ですが、完成した時や来場者から「面白かった」、「勉強になった」との声をいただいたときに得られた達成感は、格別なものでした。
6.学会報告
例年、実践総合農学会という農大が主体となった学会で、学生が研究室を代表して報告しています。今回は、2015年度実践総合農学会第10回地方大会(茨城県久慈郡大子町にて2015年11月22日開催)での報告でした。
収穫祭とは異なり、来場者は研究者や大学院生が多いので、報告資料用のパワーポイントの作成に苦労しました。特に、1枚のスライドの中で何を伝えるのか、学術的な意義をどのようにして明快に伝えるのかについては時間がかかりました。こうした経験は就職活動時のエントリーシートの作成にも広く活用できました。
7.学会誌掲載(農村研究)
研究成果を『農村研究』(第123号、食料・農業・農村経済学会2016年9月発行)に掲載することができました。査読者からはいくつかの厳しいコメントが寄せられ、正直、心が折れそうになることもありました。そんなときは、仲間で励まし合い、また先生からも指導を受け、さらに再調査も実施することで乗り越えました。大変な作業を重ねることで、今までは理解することができなかった事象を専門的な知見から理解できるようになったことは、個人として成長できたと思いますし、研究組織としてもこの分野の研究の発展に多少なりとも貢献できたことを誇りに感じています。学問を学ぶだけでなく、学会誌掲載を通じて、学問の世界の一員となれたことは、卒業後の自信にもつながる大きな糧になりました。