食料経済分野 消費行動研究室
消費者データから食の消費を科学する
「なぜその食品を消費するのか」、「その食品を消費することによって社会にどのような影響をもたらすのか」、そして、「消費者を幸せにする食品とは何か」。私たちの研究室では、消費者行動論やマーケティング論、経済学を中心に、社会心理学、認知科学などの他の学問分野からの知見も活用し、これらの課題解決に取り組んでいます。具体的には、企業やJA(農協)による商品開発の現場に密着したインタビュー調査、消費者を対象としたアンケート調査や購買行動実験、スーパーや直売所での店頭観察調査などの様々なデータの分析を通して、食に関する消費行動を明らかにしていくとともに、新商品開発や新サービスの提案までを手掛けていきます。
所属教員
学生の研究テーマ
農産物直売所における青果物コーナーの新提案
企業やJA(農協)との連携による新商品開発
若者の食行動に関する研究
インターネットショッピングの利用動向に関する研究
2020年度 研究テーマ
コロナ禍における大学生の消費行動研究
2020 年度の消費行動研究室の研究活動では、世界中に混乱と恐怖を与えたコロナ禍に おける大学生の消費行動をメインテーマとして、異なる 3 つの視点からサブテーマを設け、 研究を行った。各サブテーマの研究概要は以下のとおりである。
テーマ 1 では、緊急事態宣言下での外出自粛、学校休校、バイト先の休業をうけ余暇時 間が増えた大学生の SNS 利用時間の増加と、Instagram で流行した「#️ ダルゴナコーヒー」 「#おうち café」など料理投稿の増加に着目し、新しい購買行動モデル ULSSAS を用いて、 Instagram の優位性を検証した。分析の結果、大学生の調理行動と SNS の関係性、およ び Instagram の優位性を確認できた。
テーマ 2 では、新型コロナウイルスに対する不安感が、食料品の購買行動に及ぼす影響 を研究した。利己的・利他的消費に着目し「利己的買い溜め」「利他的買い溜め」「利己的 買い控え」「利他的買い控え」の 4 つの購買行動を取り上げた。コロナ禍の買い溜め・買 い控え行動の実態や不安感の構造を把握した後、回帰分析を用いてこれらの購買行動と不 安感の関係を分析した。分析の結果、大学生においては、学校への不安といった学生特有 のものも含めて不安感が「買い溜め・買い控え行動」に影響を及ぼすことを明らかにした。 テーマ 3 では、コロナ禍での食事形態選択に対して時間・リスク選好が及ぼす影響につ いて大学生を対象に研究を行った。食事準備時間と、準備をするにあたり感染するリスク の 2 軸を中心に食事形態を細分化し、時間・リスク選好がこれら食事形態選択に及ぼす影 響を分析した。回帰分析の結果、時間に対して我慢強い人はネット注文型デリバリーなど の食事準備時間が比較的長い食事形態を、リスクに対して比較的中立的な人はモバイル端 末を利用したテイクアウト等の食事形態をよく利用することが明らかになった。