農業ICTの普及に向けた研究開発
1.ICTとスマート農業普及の背景
ICTってご存知ですか? Information and Communication Technologyのことです。情報通信技術と和訳されています。農業へのICTの応用は大変盛んで、様々な大学・研究所・企業がこぞって取り組んでいます。農業へのICTの応用は、スマート農業の研究分野の一つです。(スマート農業は、農林水産省のHPに詳しく紹介されています。関心のある方はぜひこちらもご覧ください。)
農業ICTは、環境をリアルタイムでモニタリングできること、生産量・品質の予測に必要なデータベースの作成を自動的に行うことなど、様々なメリットがあります。しかし、初期費用が高額になりがちなこと、利用にあたっての基礎知識が必要になることなどのデメリットもあります。そのため、大規模農業法人など、技術・資金に余裕のある農業への普及は積極的に行われていますが、中小規模の農家さんや農業法人では、導入がなかなか進んでいません。そこで、経営情報学研究室・畑中ゼミでは、農業ICTの普及のために、安価で簡単なセンシングシステムの導入と各種予測システムの開発について共同研究を実施しています。
2.イチゴ生産農家への農業ICTの応用
本学OBのイチゴ農家さんと共同で、農業者が気軽に購入可能な数万円規模のセンサーネットワークシステムを構築し、スマートフォンのアプリを通じて農業情報を収集し、収集したデータを分析することで作業管理・品質管理・生産予測などに貢献することを目的とした研究開発を行っています。
栃木県にはとちおとめという有名なブランドイチゴがあります。とちおとめの生産ではビニールハウスを利用しますが、これはイチゴの生育環境を調整し収穫時期を操作するためです。露地栽培のイチゴの収穫時期は4〜6月ごろですが、ハウス栽培では1年を通じてもっとも需要が高い12月(クリスマスシーズン)にあわせて生産を行っています。このため、ビニールハウス内の温度・湿度・二酸化炭素濃度など詳細なデータを利用したいという要望が高いのです。本研究では本学OBの農家さんと共同で、ビニールハウス内のリアルタイム環境監視を行っています。
この研究には、タンザニア出身の留学生が参加しており、センサーネットワークの知識やデータ分析のみならず、イチゴ栽培のノウハウについても勉強させてもらうなど、日本の優れた技術を実地から学ぶことなども行っています。
3.トマト生産農家への農業ICTの応用
農大OBの農業法人では、トマトの水耕栽培技術を確立し、安全・安心・高品質のブランド・トマトの生産を行っています。最新の種苗育成技術、水耕技術、大型ビニールハウスを使い1年を通じてトマト生産を行い、ほぼ毎日、出荷ができる優れた技術を開発しました。この農家さんのご協力のもと、農業ICTの応用について共同研究を行っています。
また、トマトの生産管理の自動化に向けた活動として、Webデータベースを応用したデータ入力、顧客満足度調査のためのアンケート調査と分析についても共同で研究を行っています。アンケート調査により、顧客満足度を多変量解析にて分析し、それらの知見を今後の販売戦略や農業経営に活かしてもらうことが目的です。この研究は、大学院生が中心となり、学部学生も参加して実施しています。