東京農業大学

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人の生活の豊かさと環境との調和を化学・生物学的視点から実現する

研究紹介|栄養生化学研究室

代謝シグナルを介してた生活習慣病の発症メカニズムの解析

ホルモンは細胞内シグナル伝達を介し細胞活動を制御している。これらのシグナル機構が制御不能になることでがんや血管系疾病に代表される生活習慣病が発症する。一方で、生活習慣病のリスク因子として肥満が挙げられ、ホルモンバランスの破綻が起きることが明らかにされつつある。我々は、ホルモンバランスのみならずその過程で生じる代謝異常も細胞活動に大きく影響していると考え、これら代謝物が細胞活動に与える影響について中心的に解析を行っている。本研究課題ではモデル動物を用い、代謝異常とがんの発症の関連性を中心に実験を展開している。これらの研究成果は、生活習慣病予防の新たな機構性食品成分の探索や、食事療法の提案に繋がるものと考え、高騰する医療費の削減に貢献できるばかりでなく、ジャパンオリジナルな食習慣の提案が可能になるものと考える。

[論文]
・ Tomomi Shira, et.al., High dietary fat-induced obesity in Wistar rats and type 2 diabetes in non-obese Goto-Kakizaki rats differentially affect retinol binding protein 4 expression and vitamin A metabolism Nutrition Research 36 262-270 (2016)
・ Yumi Aizawa, et.al., Metabolic abnormalities induced by mitochondrial dysfunction in skeletal muscle of the renal carcinoma Eker (TSC2+/-) rat model. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 80(8):1513-9 (2016)
・ 山本祐司 ケトジェニックダイエットが生体に及ぼす影響 化学と生物 vol.54, No.9 650-56(2017)


細胞内のエネルギーセンサータンパク質AMPKの解析、ならびに制御化合物の探索

細胞内のエネルギー状態によって、細胞内では様々な代謝が変動してエネルギー恒常性を保っている。AMPKは細胞内のエネルギーセンサーとして働き、活性化することで基質をリン酸化して糖や脂質を含む多くの代謝を制御している。中でもAMPKは、血液中の糖を細胞内へと取り込む作用を促進することから、糖尿病治療薬のターゲット因子としても知られている。

我々は、様々な化合物からAMPKを活性化させる化合物を探索し、抗肥満作用や糖尿病の緩和作用を示す化合物の開発を行うとともに、AMPKが関与する新たな制御経路を同定することで、エネルギー状態が細胞内に及ぼす作用のさらなる理解を目指している。

[論文]
Inhibition of AMPK catabolic action by GSK3. Suzuki T, Bridges D, Nakada D, Skiniotis G, Morrison SJ, Lin JD, Saltiel AR, Inoki K.Molecular cell. 50 (3) 407-419, 2013年

[総説・解説記事]
GSK3によるAMPKの関与する異化作用の阻害 鈴木 司, 猪木 健 ライフサイエンス 新着論文レビュー(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンター)2013年
AMPKシグナル伝達 (AMPK: A Key Regulator of Enegy Balance)鈴木 司, 猪木 健 細胞工学 (秀潤社) 28 (8) 2009年


大豆が肝臓脂質代謝に及ぼす影響とその分子メカニズムの解明

大豆は、古来よりタンパク質源としての用途が主であったが、近年の健康への関心からその生体調節機能が着目され、脂質代謝改善効果が期待できる機能性食品の先駆けとして研究、開発がなされてきた。大豆の脂質代謝改善メカニズムの一つとして、血中インスリン濃度の低下を介して、脂質合成の中心的な役割を担うSterol regulatory element-binding protein 1c (SREBP1c)の発現量を低下させることが知られている。しかしながら、インスリン非依存的なメカニズムも存在することを示唆する報告もあり、詳細なメカニズムは不明である。我々は、転写因子の活性を負に制御する核内受容体であるSmall heterodimer partner(SHP)に着目し、大豆のインスリン非依存的な脂質代謝改善メカニズムにSHPが関係しているか、栄養試験や分子生物学的手法を用いて解析している。

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