研究紹介|応用微生物学研究室
食品由来または共生細菌を用いたドラッグ・ワクチンデリバリーシステムの開発
食品由来微生物や腸内共生微生物などは一般的に安全性が高く経口摂取が可能であることから、これらの微生物を治療剤やワクチンのデリバリーベクターとして応用する試みがある。我々は主に乳酸菌を媒体とした経口機能製剤の開発を目指し、免疫刺激・調節作用を持つ菌株および免疫誘導関連分子の探索、遺伝子組換えまたは非組換えにより異種タンパク質を菌体に付加するための技術や生体内の特定部位に菌体を誘導するデリバリー技術の開発、特定分子を付加した菌体の経口投与による機能性の評価などを行っている。
[論文]
・ Mucosal Immunogenicity of Genetically Modified Lactobacillus acidophilus Expressing an HIV-1 Epitope within the Surface Layer Protein. Kajikawa et al. PLoS One. 2015 10(10):e0141713. doi: 10.1371/journal.pone.0141713.
・ Adjuvant effects for oral immunization provided by recombinant Lactobacillus casei secreting biologically active murine interleukin-1β. Kajikawa et al. Clin Vaccine Immunol. 2010 17(1):43-8. doi: 10.1128/CVI.00337-09.
[学会発表]
・ Mucosal Immunogenicity of Recombinant Lactobacillus acidophilus Exposing HIV Epitope on the S-layer Protein. Kajikawa et al. 11th International Symposium on Lactic Acid Bacteria (Egmond aan Zee, The Netherlands) 2014
枯草菌に由来する環状リポペプチドの植物病害抑制メカニズムの解明
枯草菌(Bacillus属)は生物農薬の原料として、世界中で広く使用されている。生物防除活性を示す枯草菌の多くは、各種植物病原菌に対して生育阻害活性を示す環状リポペプチド(cLP)を分泌することが知られている。cLPの抗菌活性が報告されて以来、本菌の植物病害抑制メカニズムはcLPの抗菌活性に依存するものと予想されてきた。しかし、cLPの植物病害抑制メカニズムを証明する直接的な実験データは示されていなかった。我々は、枯草菌の培養から得たcLP精製物を使用して、植物病害抑制効果を実証した。すると、cLPの植物病害抑制メカニズムには、病原菌に対する抗菌活性以外に、宿主植物の病害抵抗性を誘導する新規のメカニズムの存在が明らかとなった。 今後、cLP処理による宿主植物の病害抵抗性誘導に関する分子機構を解明することで、学術的根拠に基づいた、枯草菌を原料とする生物農薬の防除価の向上への貢献が期待される。
[論文]
・ Impact of antimicrobial lipopeptides from Bacillus sp. in suppression of Fusarium yellows of tatsoi, Kenji Yokota and Hiroshige Hayakawa, Microbes and Environments,2015, 30(3), 281-3. DOI: 10.1264/jsme2.ME15062. Epub 2015 Jun 27.
[学会発表]
・ Antimicrobial-independent disease suppression by Bacillus cyclic lipopeptide on Arabidopsis bacterial disease, Mana Kaneko, Yuta Kurosawa, and Kenji Yokota, 16th International Symposium on Microbial Ecology, 2016