■微生物班
農作物、雑草に寄生する微生物の探索と機能開発
本研究班では世界的な難防除病害を対象に生物的防除、耕種的防除法の開発を行ってきた。第1期5年間の研究期間に室内および圃場試験で実用化可能な数種の防除法を開発してきた。第2期の研究期間ではこれらの防除法を作物の栽培体系の中に組み込み、新技術として利用するための研究を主体として推進する。室内検定で実用化可能な方法は圃場での効果を調査、改良して実用化できる技術の開発研究を進める。また、第1期に検討しなかった難防除病害、地域限定の特産作物(マイナー作物)についても新たに基礎的研究を行い、実用的な技術開発を試みる。研究内容は次の通り。
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▲ジャガイモそうか病 |
(1)ジャガイモそうか病の防除には施肥法の改善(硫安の畝施用法)及びリン酸の低投入が効果的であることを明らかにしたので、今期は施肥法改善をわが国北海道の農家圃場で実践し本法の普及をはかり、新農法の確立を目指す。さらに、インドネシア、ベトナムでは展示圃を設け、農家に普及するための教育啓発を行い、そうか病防除に貢献する。
(2)インドネシア(ジャワ、バリ島)、ペルーではナス科野菜の青枯病、疫病の微生物源農薬の探索を行い、一部は特許を取得した。今期は有望な資材の製薬化、施用方法等実用化に向けた研究を実施する。また、あわせて、各種作物の病害防除に適応できる微生物の探索と実用化を検討する。
(3)植物体表層や体内には有望な微生物が多数存在する。今期は植物環境微生物に注目し、微生物源農薬の開発を予定している。
(4)ウイルス病対策としてバリ、ジャワ島のトマトモザイク病の防除に弱毒ウイルスの利用が可能であることを明らかにした。今期はさらに病徴の軽微な系統の選抜、大量接種法、感染苗の安定供給システムの開発を行い、農家圃場で防除を実践、安全なウイルス病の防除体制を教育啓発する。
(5)弱毒ウイルスと同様、各種病原菌の病原性喪失株は様々な効果を作物に付与する。今期はそれら作用の内、病害抵抗性誘導を標的とし、非病原菌の活用を目指す。
(6)種子として利用する塊茎植物は作期間で長時間貯蔵する必要があるが、貯蔵時に発生する病害で壊滅的被害を受ける。そこで、貯蔵病害の解明とその制御、ならびに農作物の鮮度保持に関する研究を新たに開始する。
(7)地域特産作物の病害対策;わが国では農薬取締法の改正で地域で特産化してきたマイナー作物に適用できる農薬が登録抹消され、農薬に代わる防除システムの確立が要望されているので、これらマイナー作物を対象とした新たな防除システムの確立をはかる。
(8)雑草を制御する微生物源資材について検討してきたが、有望な資材の開発には至らなかった。今期はより有望な資材の探索に傾注し、近い将来の実用化を目指す。また、雑草に影響を与える植物資源の発掘と、雑草を有用資源に変える利用法を検討する。

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