■植物源農薬班
植物の持つ生理生態活性物質の探索と農薬利用
植物源農薬の候補植物は地球上に多く存在し、それらの活用を図り、対象病害虫に選択性の高い素材開発ならびに有効成分の同定をすすめ、新規薬剤のリ−ドを探索する。また、特定した有効成分を多く含む植物の作出を培養技術によって、植物自身を農薬工場にする。すなわち、植物源農薬研究班は次の研究を実施する。
(1)植物源昆虫制御薬の開発:植物は、熱帯・亜熱帯を中心に約30万種あるといわれている。その活用は、生薬などに限られている。ここでは、これら植物を素材とした病害虫防除への利用と有効性の高い植物を材料とした製剤化農薬工場を稼働させ、農家への供給を展開することを目的としている。現在まで約200種類の東南アジア産植物を探索したが、今後、さらに300種類以上の植物の抽出物を作成し、病害虫制御活性を野菜の大害虫であるコナガやケブカノメイガ、ハスモンヨトウ、タバコガ、アザミウマイネ害虫カメムシなどについて室内、圃場試験から総合的に判定し、新たな植物源農薬を探索する。すでにインドネシアで特許を取得している植物源農薬、BIOTA-LやFRONTIRの圃場での効力の持続性の検討、製剤化と果樹、野菜圃場での栽培法の確立を目指す。
バニラの病気に対する植物源農薬の処理 |
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▲無処理 |
▲BIOTA-L処理 |
開発した植物農薬 |
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▲FRONTIR |
▲BIOTA-L |
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▲キャベツ圃場での植物源農薬の効果試験 |
(2)植物源抗菌薬の開発:トマトやトウガラシ、レタスの青枯病や立枯病、バナナの萎黄病への抗菌活性試験からバンレイシ科、ショウガ科、ビャクブ科などの多くに抑制効果が確認され、圃場試験での有効性も立証されている。これらを素材とした植物源農薬の製剤化を図り地域農家への普及を進める。日本国内においても、現地で作成したBIOTA-LやSADAOなど植物源農薬を導入し野菜害虫コナガやハスモンヨトウ、イネ害虫、カメムシ類などの防除を実施、その有効性を確認する。さらに、それらを材料とした病害虫制御活性を持つ有効成分の確認、同定から興味ある化合物群を見出している。これらをリードとした新規農薬の開発も目指す。
(3)殺線虫剤の開発:ペルーでは、線虫による加害が大きくその駆除が大課題である。約50種のペルー産植物からトマト線虫に有効な植物を数種見出している。これらの有効成分の特定と新たな植物の探索からより有効な殺線虫植物を検索する。さらに有効性の強い植物、Plangomajorの圃場試験を現地トマト圃場で実施する。
(4)リ−ド化合物の探索:さらに、それらを材料とした病害虫制御活性を持つ有効成分の確認、同定から興味ある化合物群アセトゲニン、ステモナアルカロイドやテルペノイドなど今後発展性の高い化合物をいくつか見いだしている。これらをリ−ドとした新規農薬の開発をも目指す。
(5)植物農薬の製剤化:有用成分を含む植物の探索とそれらの植物源農薬としての展開を一層図ると共に培養技術を用いての有効成分を多く含む植物の作出を進め、植物を材料とした植物農薬工場を目指し、地域の農業発展に貢献する。

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