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応用生物科学部醸造科学科 醸友会

醸造科学科助教に着任して

 平成20年4月1日より醸造微生物学研究室にて助教として勤務しております中山俊一と申します。伝統も古く、緑豊かな東京農業大学に勤務できることに大変喜びを感じ、誇りに思っております。若輩者ですが、若さを生かして教育、研究活動に精力的に取り組みたいと思っております。諸先生、卒業生の先輩方におかれましては、ご指導ご鞭撻の程どうぞよろしく御願い申し上げます。

 私は昭和54年に宮崎県の宮崎市で生まれました。宮崎県は焼酎どころとしても有名であり、幼いころより周囲にある「お酒」といえば清酒ではなく焼酎がほとんどであったため、清酒という存在を知らずに育ちました。九州大学へ進学した際、周囲の人たちが「お酒と呼ばれるもの」をお湯や氷で割らずにストレートで飲んでいる様を見て、よくもアルコール度数の高い焼酎をがぶ飲みできるなーと不思議に思った程でした(この時初めて、酒とは日本酒のことであり、焼酎はあくまでも焼酎であることを知りました)。

 九州大学農学部では、ポスドクとしての研究生活を含め学部4年次より7年間発酵化学研究室に在籍しました。発酵化学研究室はその名の通り、発酵に関する研究も行なっておりますが、当時は古川謙介教授による微生物による環境浄化技術の研究も行っておりました。環境問題に強い興味を抱いておりましたので、ぜひともこの研究を行いたいと志望しましたが、期待に反して教授の研究テーマではなくアセトンとブタノールを生成するClostridium属細菌の代謝機構について研究することになりました(おそらく先生が担当していた分子生物学を履修していなかったためだと推察しております)。しかしながら、研究を行ってみると、微生物が絶妙なタイミングで様々な遺伝子を発現させることで代謝をコントロールしていることが分かってきました。生命の神秘に触れて以来、生物がどのように代謝を制御しているかについて興味を抱くようになり、今後も代謝研究に注力したいと考えております。

 また、産業技術総合研究所でポスドクとして、有機酸(特にコハク酸)生成能の低いCandida属酵母の有機酸生成制御機構について解析を行ないました。有機酸生成経路の酵素活性、転写量比較解析からコハク酸生成量が少ないCandida属の酵母では、コハク酸代謝遺伝子の発現量が増大していることで代謝が盛んに行なわれ結果的に有機酸生成量が少ないことが分かりました。この研究はバイオエタノール製造プロセス開発の一環として行なったものですが、有機酸は清酒呈味の決定因子の一つであり、これまでに得た知見や知識は醸造酵母を初めとする他の酵母の有機酸生成制御について有用であると考えております。研究所は大学と違い産業応用を強く意識した研究を目指しております。ここでの一年間で、学術研究のみならず社会に対して還元するというまさに実学の精神も学びました。

 酵母研究については日も浅くまだまだ右往左往しながらの研究生活ですが、得意とする分子生物学、代謝工学的手法を駆使し、醸造酵母の特性について遺伝子レベルで解析し、よりよい醸造酵母の育種開発を目指したいと思います。また、これまでの経験を生かし、本学が目指す「人物を畑に還す」の精神の元、研究活動を通して学生らを成長させると共に、自分自身も日々精進し、醸造科学科のみならず日本の醸造産業、バイオ産業の発展に貢献したいと思っております。以上簡単ですが新任の挨拶とさせていただきたいと思います。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

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