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応用生物科学部醸造科学科 醸友会

醸造学科助手(嘱託)に着任して

数岡 孝幸  助手(嘱託) 酒類学研究室



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(図)アルコールデヒドロゲナーゼと本酵素によって触媒される反応

 図に示された酵素の三次元構造は、南極海水より単離された低温菌Flavobacterium frigimaris KUC-1のアルコールデヒドロゲナーゼのものです。本酵素は、私が研究をはじめるにあたり、最初のターゲットとなった酵素であり、本酵素の研究を進めるなかで研究のイロハを学びました。本酵素は、エタノールを含むアルコールの合成・分解反応を触媒します。酵母に本酵素が存在しなければもちろんお酒を醸すことができません。私は今後、酒類学研究室でお酒に関する様々な研究を行っていくのですが、私の研究生活が本酵素で始まっていることについて、運命めいたものを感じずにはおれません。
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 平成18年4月1日より醸造学科酒類学研究室にて助手(嘱託)として勤務しております数岡孝幸です。研究者として、また教育者としてもまだまだ経験浅く、多くの至らぬ点がございますが、醸造両科の発展のため精進していきます。諸先生方、また醸造両科を卒業し活躍されております卒業生の方々には、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

 私は兵庫県の東播磨に位置する稲美町で生まれ育ちました。稲美町はその名の通り大変稲の美しい町でありまして、実家を離れてはや12年になりますが、鮮明にその美しい稲穂が風に揺れる姿を思い浮かべることができます。稲美町は、明治政府のプロジェクトとして欧州産葡萄の栽培とワイン醸造試験などを目的として明治13年(1880年)に播州葡萄園が開園した地であり、また稲美町が位置する東播磨は、現在清酒醸造で最も好まれ使用されている酒米・山田錦の生産量が日本で最も多い地域でもあります。醸造学科で勤務することとなった現在、改めて日本の醸造に深く関係した地域で生まれ育ったのだと思います。
その地元を大学進学とともに離れました。当時バイオテクノロジーが、その言葉とともに非常に流行しはじめた時期でありまして、漠然とただ流行に乗り遅れまいと、関西大学工学部生物工学科に入学しました。当初はっきりとした目標がなかったのですが、研究室配属以前の3年間の授業の中で、あらゆる生物の生命活動に必須の役割をはたす酵素を知りました。酵素は、本来自然界では起こりえない反応を触媒として働き進めてしまいます。しかも生体内においては非常に多くの種類の酵素が絶妙なバランスで代謝系を構築し、その恒常性を保っています。そのように重要な酵素個々の性質を明らかにするとともに産業に応用するような研究がしたいと思い、酵素の研究ができる研究室に入りました。以後、関西大学で博士課程を修了するまでの6年間、京都大学での研究員としての1年間と教務職員としての2年間、一貫して酵素および機能性タンパク質の研究を行ってきました。これまでに様々な研究テーマを進めていく中で、私の研究のキーワード(酵素・極限環境微生物・補酵素・アルコール・アミノ酸・光学異性体・微量金属)が見えてきました。これらのキーワードに醸造・醗酵というエッセンスを加えて、それらの組み合わせから私の研究が今後どのような展開を迎えるのか、私自身非常に楽しみしております。

 本年度より、醸造学科に勤務させていただいておりますが、現在は醸造学について知識・経験とも大変少ない状態にあります。今後諸先生方から多くの教えをうけ、学生達と共に学ぶなかで、現在までに学んできた専門分野と醸造学をうまく融合させること、そしてこの醸造の世界で自身の足場を築きつつ、まず何か一つ極めることを目標に、日々邁進していく所存です。以上簡単ですが新任の挨拶とさせていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

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