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応用生物科学部醸造科学科 醸友会

鈴木昌治教授 安藤百福賞受賞

 鈴木昌治教授(醸造科学科・醸造環境科学研究室)が2月27日(月)に行われた平成17年度安藤百福賞において「第10回記念奨励部門 特別奨励賞」を授賞いたしました。
 安藤百福賞とは食創会が独創的な加工食品の開発研究を表彰することで食文化の向上・発展に貢献しようと設けたものです。
 この度授賞した記念奨励部門とは環境保全、省資源、省エネルギーなど広く環境に貢献する食品分野の開発において優れた研究を行った研究者に送られるものです。

醸造科学科
(醸造環境科学研究室)
鈴木 昌治 教授

受賞内容

「食品廃棄物からのクリーンエネルギー回収型システムの開発」
 生ごみなどの食品廃棄物からの創エネルギーに関して、2種類の発酵システムを研究開発したものです。その概要を以下に 紹介します。

1. 食品廃棄物の高速メタン発酵法の開発

<システムの原理(図1)>
食品廃棄物(学校給食の調理くずや食べ残し)を好気性可溶化槽(生ごみ溶解槽)に入れ、攪拌しながら好気性微生物の分解作 用および散水により溶解する。

液状化した溶解液は次に酸生成槽に送られ、嫌気性微生物の分解作用を受けて酢酸を中心とした脂肪酸へと効率的に変換す る。

高速リアクターに送られた脂肪酸は、高密度に集塊した粒状のメタン生成細菌により速やかにメタンガスに変換する。
メタン発酵をスムーズに行うため、酸生成槽の汚泥は生ごみ溶解槽へ返送して再処理し、発生する残渣を最小限にする。

図1 食品廃棄物の高速メタン発酵システム

<システムの特徴>
○従来型のメタン発酵施設より約30%の省スペース、メタン発酵処理液の後処理や汚泥処理設備が不要なため、小規模や分散型のシステムとして適用できる。
○従来型のメタン発酵施設より約60%の残渣(汚泥)量が削減できるため、汚泥処理設備の建設費や維持管理コストが少ない。
○メタンガスの有効利用(ボイラー燃料、発電、燃料電池など)により、地球温暖化防止に貢献できる。

<実証プラント>
 本システムは本年5月より東京農業大学のバイオマスエネルギーセンターに、1日当たりの最大処理量が180kgの実証プラントとして設置し、世田谷区の学校給食センターの調理くずと食べ残しの一部を処理している。回収したメタンガスは、生ごみ乾燥機のボイラー用燃料として利用する。実証プラントの全体像を写真1に示す。

写真2 高速メタン発酵実証プラント

2. 食品廃棄物の固体エタノール発酵システムの開発
 本システムは、蒸留廃液の排出を極力抑制することが可能な発酵システムとして、食品廃棄物を固体状のままで糖化と発酵 を同時に進行させることを可能にした新規の固体エタノール発酵システムである。
<システムの原理>
食品廃棄物(学校給食の調理くずをと食べ残し)は、蒸気乾燥機により乾燥処理して品質の安定化を図る(乾燥工程)。

乾燥生ごみに雑菌の増殖抑制作用をもつクエン酸生産能とでんぷん分解活性が強い焼酎用麹菌の分生子を散布して生ごみ麹 を製造する(麹製造工程)。

乾燥生ごみと生ごみ麹を同量ずつ混合し、これにクエン酸耐性をもつ焼酎酵母を添加後、固体発酵槽に投入し、酵母の増殖と でんぷん質やセルロースの糖化を促進しながら固体状態で並行複発酵を進行させエタノールを生産させる(糖化・発酵工程)。

発酵終了後の発酵物は減圧真空蒸留機により72℃、-0.09Mpaで蒸留しエタノールを回収する。蒸留残渣は固形物として排出 される。

固形残渣は、発酵作用によりCN比が低下した酵母菌体を含む良質な速効性肥料として利用できる。

図2 食品廃棄物の固体エタノール発酵システム

<システムの特徴>
○蒸留廃液が排出されないため、蒸留廃液の処理施設の設置が不要である。
○固体発酵は酸性下で進行し雑菌による発酵阻害は小さいため、発酵原料の厳密な滅菌処理は不要である。
○エタノールの有効利用(ボイラー燃料・ガソリンの代替品など)により地球温暖化防止に貢献できる。また、食品工場では殺菌 剤としても利用できる。でんぷんあるいはセルロース系の多くの食品廃棄物(廃パン、じゃがいもの加工残渣、バナナ皮・廃棄弁 当など)から幅広くエタノール生成ができる。

<試験用固体エタノール発酵装置>
 固体エタノール発酵システムは、他に事例がないため、現在は写真2に示す試験装置により基礎データを集積している。本年 度末には、原料の乾燥、製麹、糖化・発酵、蒸留工程を一体化した1バッチ250kgの処理能力をもつ実証プラントが東京農業大 学のエネルギーセンターに設置され稼動する(特許出願準備中)。

写真2 食品廃棄物の固体エタノール発酵装置

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