環境共生時代の緑地学 その地域にちょうど適する“ぴったりの緑の風景”の創造・保全・再生 東京農業大学短期大学部 環境緑地学科 Department of Environment and Landscape

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環境緑地学科について

環境緑地学科の新たな挑戦 「環境緑地学科指針No.1 2009」

 本学科は新らたに“緑地共生学”を標榜する。
 地球環境時代の今、都市と緑、田園との共生を志し、新らたな分野に挑戦する。
 環境緑地学科では、生き物や植物をはじめ自然の声に耳を傾け、数百年間も変わらず持続してきた田園自然、里山や屋敷林、鎮守の森や公園、日本庭園から学び、その持続可能な共生環境を創造、保全、再生するための技と知恵の修得に挑む。
 庭園のデザインコンセプトは美しさだけでない。日本のみならず世界最古の作庭書『作庭記』には、“自然に従いなさい”とされている。このコンセプトは、今なお生き生きと感じられ、地球環境時代の今こそ、大切な庭づくりの設計思想である。
 市民のための都市公園が生まれてすでに150年。産業革命による都市環境問題の解決としてPark(公園)が誕生した。公園は都市の肺臓といわれ、都市にとって公園は必要不可欠な存在となった。20世紀自動車社会の到来による大都市化の環境問題に対し、1894年フレデリック・ロウ・オルムステッドによるボストンのエメラルドネックレス、1898年エベネザー・ハワードの田園都市論にみられるように、理想都市案も含めて多くの緑地計画、グリーンベルト計画がつくられた。今なおヒートアイランド化した都市環境の改善に向けて都市と緑との共生を考えると、大切にしたい緑地計画の共生思想である。
 1962年に『沈黙の春』を著したレイチェル・カーソンは、その著の中でDDTを始めとする農薬などの化学物質の危険性を訴え、“自然の征服。これは人間が得意になって考え出した勝手な文句にすぎない。”“自分達の扱っている相手は、生命(いのち)あるものなのだ”“人間だけの世界ではない。動物も植物もいっしょにすんでいるのだ”と記している。さらに2006年にベストセラーとなった『国家の品格』を著した藤原雅彦氏は、品格ある国家の指標の1つに、“美しい田園”をあげている。環境省によると動物RDB種(絶滅のおそれのある種)集中地域の49%、植物RDB種集中地域の55%が里地里山の範囲に分布しており、国土の4割を占める里地里山は、生物多様性の保全上重要な役割を担っている。かつて川越藩主柳沢吉保による三富新田をはじめとする武蔵野の雑木林や屋敷林、仙台藩主伊達政宗による仙台平野をはじめとする居久根(いぐね)の屋敷林が点在する水田景観は、江戸時代からおよそ300~400年間変わらず持続してきた環境である。その環境を持続可能とした共生の思想には、“1木1草無駄にしない暮らし”、“無駄な木はないので、雑木とはいわない”といった無駄のない、自然と共生した人々の生きざまがみえてくる。荒れた山林、放棄された水田など里地里山景観の荒廃がクローズアップされ、都市農村交流、参加協働型社会、循環型社会の構築が今日的課題である今、これまで田園自然と共生してきた人々の生きざまは、大切にしたい共生文化である。
 緑地共生学は、これからの分野である。教員も学生も同じスタートラインに立っている。虫や動物、花や植物を観察、育てて、野外フィールドや自然の中を歩き、現場から発見、発想する実学研究に果敢にチャレンジしてほしい。そのため虫や動物、花や植物を愛し、緑と共に生きる緑地共生することに共感し、ともに緑の中で汗を流し行動力のある人材を求めている。

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