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応用生物科学部醸造科学科 醸友会

新任あいさつ2023 海野

新任のご挨拶

海野 良輔 助教(発酵食品化学研究室) 

 本年4月より、醸造科学科発酵食品化学研究室の助教として着任しました海野 良輔(うんの りょうすけ)と申します。母校である東京農業大学で教育・研究に携われることを嬉しく思いつつ、農大人としての責任を感じながら日々過ごしております。遅くなりましたが自己紹介とご挨拶をさせていただきます。

 私は1995年に神奈川県津久井郡津久井町で生まれました(2006年の市町村合併により現在は相模原市になりました)。私の実家は山に囲まれた盆地のようなところにあり、水源にも恵まれて川や湖が身近にある自然豊かな環境で小学校・中学校を過ごしておりました。当時は気にならなかったのですが、熊出没注意の町内放送を聞きながら登下校をするなど、なかなか珍しい体験をしていたなと思っております。また、私は小学校からバスケットボールを始め、小中高大と部活動に打ち込んだ学生生活でもありました。特に高校時代は朝から晩まで毎日練習をしており、悲しいことに私自身には運動の才能がなく万年補欠ではあったものの、今思えば充実した日々を過ごしていたなと感じております。醸造科学科との出会いは高校生の頃でした。バスケットボールの活動は高校3年生の12月まであり、夏で引退するか冬で引退するか悩んでいた時期に、生物の先生が「微生物を扱う面白い学科がある」という話を授業でしていたことを思い出しました。そのことが妙に頭に残っており何となしに興味をひかれ、夏で部活動を引退しそのまま東京農大醸造科学科への進学を決めました。きっかけは些細な事であったものの、入学後は微生物のことを詳しく知るにつれ興味が深まり、目に見えない生物の計り知れない力に心を躍らせていました(いまもですが)。ただ、このときは現在に至るまで東京農業大学にずっとお世話になるとは夢想だにせず、このようなご縁もあるのだなと驚きつつありがたく思っております。

 大学3年生の時に現在の所属でもあります発酵食品化学研究室に配属されてから、酢酸菌、乳酸菌、大腸菌などの細菌の取り扱いや基礎技術を学んだのちに、チーズに存在する微生物と品質の関連についての研究を始めました。チーズは世界で1000を超える種類が存在していますが、これらの風味や状貌といった特徴の違いはチーズに存在する微生物の違いが関与していると考えられています。しかし、チーズに存在する微生物の多様さや含まれる成分の複雑さゆえに、両者の関連は不明な点が多く、品質管理の点から早急な理解が望まれます。そこで私は、ソフトタイプのチーズを対象に、オミクス解析と呼ばれる生体分子を網羅的に解析する技術を用いることでチーズに存在する微生物と成分を一斉に解析し、両者の関連を統計的に検証しました。その結果、チーズに含まれる成分の違いはチーズの種類の違いではなく、チーズに存在する微生物の違いと関連があることが明らかになりました。また、海洋環境を主要な棲息源とする海洋細菌がソフトチーズに存在し、チーズの風味成分と相関を示すことも明らかになりました。海洋細菌がチーズに存在することは近年明らかになっていたものの、チーズ中での役割は不明であり、風味形成に関する理解は進んでいませんでした。そのため、チーズから海洋細菌を含めた様々な種類の細菌を分離し、それら細菌をチーズの模擬熟成試験に供することで実際に風味成分が生成されるのかさらに検証しました。その結果、細菌を接種していないチーズに比べ、海洋細菌を接種したチーズからはケトンや硫黄化合物の香気成分が生成されていました。特に、Pseudoalteromonas属やPsychrobacter属を接種したチーズからは他の細菌よりも多様な種類の香気成分が検出され、チーズの風味の形成に強く寄与することが示唆されました。これらの研究成果をもとに論文をまとめ上げ、無事に博士の学位を得ることができました。

 これらの研究活動の間には、COVID-19の感染蔓延などの様々な出来事があり苦労した時期もありましたが、ここまで続けてこられたのもご指導くださった先生方や家族などの周りの支えのおかげであると感じております。今後はこれまで自分がされてきたように、学生に対して農学・微生物・研究の魅力を伝えつつ、人として成長させてあげられるような指導を努めて参りたいと思っております。また、私自身も研究者、教育者として模範になれるよう尽力いたしますので、皆様のご指導ご鞭撻のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

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