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応用生物科学部醸造科学科 醸友会

新任のご挨拶

曾 厚嘉 助教(醸造環境科学研究室) 

 本年4月より、醸造科学科醸造環境科学研究室の助教として着任しました曾 厚嘉(ソウ ホウチャー)と申します。実は今年3月30日まで徴兵の義務を遂行するために、台湾に滞在していました。その翌日の便で、台北桃園国際空港から出発し、無事に日本に入国できました。水際対策に基づく入国制限がある中に、4月1日に大学の辞令交付式に出席できることが心から嬉しく思っております。最近は新任教員研修を経て、少し落ち着いてきたこともありまして、自己紹介とご挨拶を述べさせていただきます。

私は、1992年11月に台湾の嘉義県で生まれました。同い年に祖父が冷凍食品会社(明華食品)を創立し、現在は2代目社長として父親が会社を経営しています。ちなみに、大根餅、焼き餃子、水餃子及び豆乳は人気商品で、よく台湾の朝食屋に販売しています。また、5月は台湾の「端午」連休があるため、最近は粽(ちまき)を大量に生産しています。この様に、私は家族のおかげで、食品の開発、加工および生産に触れ合うことができました。その影響で、私は食品科学及び微生物に興味を持ち、大学は国立中興大学の食品科学及びバイオテクノロジー学科に入学しました。基本的な生化学から栄養学、食品加工学の現場実験実習など充実な大学生活を過ごしてきました。その頃から初めて発酵食品の奥深さ、食品と微生物の間の絶妙なコラボレーションを学びました。大学3年生の時に、私は大学の代表として東京農業大学主催の国際学生サミット(ISS)とComprehensive International Education Programs(CIEP)に参加し、世界他国の学生と深く交流しました。翌年は、農大で交換留学生として実際に講義を受けて、貴重な経験及び知識が得られました。特に醸造微生物学と環境微生物に凄く魅力を感じました。これをきっかけに、私は農大で長期留学して、博士号を取得することに決心しました。そして色々ご縁があって、醸造科学科の鈴木昌治教授(現在は東京情報大学学長)の紹介で醸造環境科学研究室に加入させて頂きました。そこから、研究室の先生方々を初め、先輩および同期から実験技術の伝授だけではなく、文化を深く知ることができました。

2016年に博士前期の入試試験を無事に合格し、正式に醸造環境研究室の一員になりました。私は高温メタン発酵(TMF)による生分解性プラスチック(BDP)ポリ乳酸(PLA)の分解過程における微生物学的研究を取り組んできました。石油製プラスチックからBDPに置き換える社会的な背景があり、BDPの生産技術の効率化の研究が年々増加しています。それに対して、BDPを効率的に処理する知見が不足している現状です。そこで私の研究は微生物学的な側面からTMFによるPLAの分解機構の解明に着目しました。まずはPLAの分解及びメタン生成特性を評価し、それに寄与する微生群集を解析しました。更に、特徴的な微生物を培養法により純粋分離し、能力を評価してPLAの分解および燃料化過程における役割を明らかにしました。TMFによりPLAは効率的に分解されてメタンガスに変換されることが示唆されました。TMFは生物学的なPLA解重合の促進剤もしくは乳酸消費細菌がPLA分解に寄与していることを強く示唆しました。また、この過程から純粋分離したTepidimicrobium属は、基準株に比べて乳酸資化性に伴う増殖能、水素および酢酸生成能が優れていることが明らかになりました。最終的にTMFによるPLA分解経路の推定に成功しました。以上の通り、博士前期と後期の期間で、高温メタン発酵によるPLA分解に微生物学的な新知見を貢献し、新たな分解経路の可能性を報告しました。

 これからの研究は「食品廃棄物の分解及び燃料化、自然環境中における生分解性プラスチックの分解機構の解明及び応用」を中心に活動していきたいと考えています。また、自ら体得した留学および実学的な経験を生かして、各国からの留学生をサポートし、他国の文化、学術の発展に貢献し、国際人の輩出に貢献します。将来の抱負としては、日本と私の母国である台湾をはじめ、世界中の大学間の文化及び学術の交流を促進し、国際的に活躍できる研究者、教育者になることを常に目指していきます。そして、世界中の人々に農学の大切さ、最先端の知識や技術を発信し続けることをこれから人生のミッションにしたいと考えています。教育・研究活動の経験がまだ不足していますが、今後も農大の実学主義の理念に応えられるよう、最善を尽くします。ご迷惑をおかけすることもあるかと存じますが、お引き立ての程、よろしくお願い申し上げます。

 

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