新任あいさつ2021
新任のご挨拶
眞榮田 麻友美 助教 (調味食品科学研究室)
本年4月より、醸造科学科調味食品科学研究室の助教として着任しました眞榮田麻友美と申します。昨年は嘱託助教として1年間過ごさせていただきました。1年間はあっという間でやっと東京農業大学に慣れつつあるところです。つきましては自己紹介とご挨拶をさせていただきます。
私は1993年6月に沖縄県の名護市で生まれました。名護市でも中心地から離れた北側の出身で,海・山・川に囲まれた環境で育ちました。小学校の同級生は私を含めて5人しかおらず、私以外は全員男子で常に複式学級で小学校6年間を過ごしました。それぐらい小さな学校で今では廃校になってしまいましたが、学校行事で5月には川探検、6月には皆で作ったいかだで川下り競争など自然あふれる田舎で育ちました。中学校では同級生が120人を超え、初めて女子の友達が出来たりと,初めての経験に戸惑いながらも嬉しかったことを覚えています。高校では中学校から続けていた吹奏楽部に所属しました。この部活ではマーチングバンドにも力を入れており、朝から晩まで練習に打ち込む毎日でした。部活と学業との両立は大変で進路もとても悩みましたが、先生の勧めもあり,琉球大学農学部亜熱帯生物資源科学科への進学を決心し,無事合格することができました。
大学に進学を決めた理由の大半が,「実験が好き」という至ってシンプルな気持ちが強かったためか,テスト勉強や日々の予習、復習などの学業にいまいち身が入らず,アルバイトに時間を割くことが多い学校生活でした。しかし、学生実験を重ねていく中で微生物や酵素を使った実験に強く関心を持つようになり、発酵食品コースに進んだのち、応用微生物学研究室に配属後は,平良東紀先生の下で「黒麹菌由来フェノール酸脱炭酸酵素の研究」というテーマで研究に取り組むことになりました。黒麹菌は泡盛醸造で使用されている麹菌です。泡盛は3年以上熟成させると香り豊かな「古酒(クース)」になります。古酒の特徴香の1つにバニリンが知られており,バニリンの前駆体である4-ビニルグアヤコール(4-VG)は,酵母や乳酸菌が持つフェノール酸脱炭酸酵素(PAD)や蒸留時の熱によって生成されると考えられていました。一方で,Aspergillus kawachiiのゲノムが公開された際に黒麹菌にもCandida属や乳酸菌のPADと相同性のある配列があったことからこの研究が始まりました。4年生の頃は実験が楽しく原理そっちのけで実験に明け暮れる毎日でした。しかし,研究室では実験をするだけではなく,自身の研究内容や英語文献などを発表・紹介するゼミがあり,資料作成や発表が苦手な私はよく先生から聞く人のことを考えて発表してくださいと厳しいアドバイスを頂くこともありました。現在では先生と同じような立場になり,学生を指導している中で当時を振り返ると先生の大変さを容易に想像できると同時に貴重なアドバイスをたくさん頂けたことにとても感謝しています。
修士課程ではなかなか思うような結果が出ず、悶々とした日々を送っていました。そうこうしているうちに就職活動の時期を迎え、将来の方向性について悩みましたが、今の実験を続けたい気持ちが強く、博士課程の進学を決心し,鹿児島大学大学院へ進学しました。鹿児島大学大学院は鹿児島大学・琉球大学・佐賀大学の農学部の連合大学で,学歴は鹿児島大学になっていますが,引き続き琉球大学で研究を続けていました。博士課程在学中は私が修士課程の時に着任した上地敬子先生や他大学から博士課程に入学した先輩の研究者としてのレベルの高さを目の当たりにし,研究者を目指そうと思っていた自分の気持ちがとても揺らいでしまったことを覚えています。また,研究者を諦めてしまおうかと考えることもありましたが,この経験が自分を見直す機会になり、今に繋げることができたのだと思います。後に,博士課程では念願の破壊株の実験を行うことができるようになり,泡盛醸造中の4-VG生成に黒麹菌由来のPADが約9割関与していることを明らかにすることができました。この結果は研究生活の中で一番達成感を得られたものになりました。
私はこれまでに,黒麹菌の研究を通して研究の大変さや楽しさを学んできました。また,自身の研究だけではなく地域の企業との共同研究にもいくつか参加させていただく機会にも恵まれ,たくさんの素晴らしい経験を積むことができました。今後は,これまでの経験を活かし東京農業大学で醸造・発酵の発展に携わっていきたいと思います。研究者としてまだまだ未熟ですが、これからも日々精進し、たくさんのことを学ばせて頂ければと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。