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応用生物科学部醸造科学科 醸友会

新任のご挨拶

吉川 潤 准教授 (調味食品科学研究室) 

 本年4月より、醸造科学科調味食品科学研究室の准教授として着任しました吉川 潤と申します。4月1日の初出勤以降、右も左も分からぬままに状態での新入生受け入れから、実験・講義と定期試験、卒業研究の指導、さらにオープンキャンパスまで、あっという間に前期日程が過ぎていったという印象です。少し落ち着いてきたこともありまして、自己紹介とご挨拶を述べさせていただきます。

 私は、1975年2月に東京都足立区で生まれ、27歳で実家を出るまで他の土地で暮らしたことがありませんでした。昭和末期の足立区中央部は住宅街で、当時多かった団地が原風景と面白みのない景観でした。唯一、小学生くらいまでは駄菓子屋が併設するもんじゃ屋があったくらいが、昭和らしさでしょうか(ちなみに、当時は一杯が50円~100円で、具で土手を作らずに鉄板へぶちまけて焼いていました)。近所の区立中学校を卒業後は都立白鷗高校、埼玉大学理学部生化学科(現 分子生物学科)へと進学しました。教える苦労を知った手前から大きな声では言えませんが、お世辞にも真面目な学生ではなかったと思います。卒業研究では檜山哲夫教授の研究室で「好熱性ラン藻における重金属ストレスに関する研究」に携わり、目に見えない小さな生き物内での変化を目の当たりにすることで実験科学の虜となりました。卒研開始早々に大学院進学を決めていましたが、テーマを変えて様々な微生物に触れたかったことと、研究時間を増やすために実家からのアクセスを考慮した結果、千葉大学院自然科学研究科(現 園芸学研究科)に進学しました。この時の藤井貴明教授の下で行った「メタノール資化性酵母におけるリンゴ酸脱水素酵素のアイソザイムに関する研究」が記念すべき初学会発表、初論文発表となった思い入れの深い研究で、ここからが研究生活の始まりとなりました。

 修士課程修了後は博士進学と就職で揺れ動きましたが、幸運なことに研究職として採用していただくことができたので、日研化学株式会社に入社しました。そこでは、機能性食品素材であるエリスリトールの製品および製造工程液に含有する不純物の定量や構造推定を担当しました。また、触媒を用いた合成法による新規糖アルコール類の開発なども実施していました。個人的には意欲的に取り組み、充実した研究生活を送っていたのですが、残念なことに三年半ほどで事業撤退による会社都合退職をすることとなりました。その後、一年ほど理化学研究所で研究補助員をして食いつないでいる内に博士取得への想いが再燃し、千葉大学院の博士課程に籍を置くことにしました。博士課程では、藤井教授の理解を得られたことから、研究テーマの立案から始め、「黒色酵母におけるβ-フラクトフラノシダーゼの解析とフラクトオリゴ糖の生産に関する研究」という題目で博士(農学)の学位を取得しました。黒色酵母であるA. pullulansを用いて、フラクトオリゴ糖の蓄積、分解に関係するβ-フラクトフラノシダーゼの生理学的、生化学的な解明を行い、高収率でフラクトオリゴ糖を生産することに成功しました。学位取得後は産業技術総合研究所で特別研究員として勤務し、油脂産業における副産物であるグリセリンを原料とした、微生物による糖アルコール生産に関する研究を行いました。そこでは一年間という限られた任期の間に、マンニトールやアラビトールといった糖アルコールをグリセリンから発酵生産できる酵母を発見し、培養条件の検討により高い生産性を達成することができました。任期満了後の2008年4月からは合同酒精株式会社に入社し、最初の部署である酵素医薬品研究所では酵母中性ラクターゼの夾雑酵素を低減した高品質製剤を開発しました。2010年~2012年は青森県八戸市にある酵素医薬品工場で産業用酵素製剤の品質管理および製造工程の改良に携わり、品質向上やコスト削減に注力しました。なお、この当時にあった東日本大震災で八戸市一帯も停電し、夜の暗闇と寒さを体験し、電気が復旧した時の街灯がやけに明るく感じたことを覚えています。研究所に復帰してからは、プロジェクトリーダーとして異性化糖製造用固定化酵素の改良に携わり、2015年から本年の2月までは酵素グループマネージャーとして研究室運営や労務管理が中心となり、部下を率いて既存酵素製品の改良研究や新製品の研究開発を実施していました。

 今後の大学教育・研究活動に関しては実学主義の理念に応えられるよう、これまで様々な機関で培ってきた“ものづくり”の経験を基にして、「微生物ならびにその生産酵素を利用した醸造食品、食品素材製造に関連する生物工学的研究」を柱に活動していきたいと考えています。これらの教育・研究を推進するためには、学内だけでなく、OBやOGを中心とした社会とのつながりも重要になります。大学での勤務は初めてで不慣れな点が多く、ご迷惑をおかけすることもあるかと存じますが、お引き立ての程、よろしくお願い申し上げます

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