phytophthora1 of Lab. of Synthetic Bioorganic Chemistry

資源研の研究テーマ紹介

資源研の最近の研究テーマを紹介します。資源研では、微生物を始め植物、動物などが生産する何らかの作用がある物質に関して、構造の決定や、化学合成法の開発を主な研究テーマとしています。現在進行中のテーマについていくつかを紹介します。

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疫病菌のホルモンを合成せよ!

疫病菌(Phytophthora)はトマトやジャガイモを始めとして、様々な農作物に被害を与える病原菌の一種です。近年では、欧米で樹木が突然立ち枯れするという現象がこのPhytophthoraによって引き起こされていることが明らかになるなど、大変やっかいな病原菌なのです。Phytophthoraという名前の由来ですが、ギリシャ語のphyton(植物)+phthora(破壊者)といういかにも恐ろしげです。1840年代中頃にはその猛威によってアイルランド飢饉が引き起こされ、100万人程が亡くなったとされています。その飢饉の影響で、かのケネディー一家が米国へ移住したとされており、人類の歴史にも深く関わっています。彼らの中には、菌糸から造卵器と造精器を分化させ、融合した造卵器から卵胞子(写真参照)を形成させ次世代を生み出すという有性生殖をするものがいます。この卵胞子がやっかいでして、卵のように二重の硬い殻で覆われていて、低温、乾燥など悪条件下で数年単位で生存し、やがて条件が整った時に発芽して遺伝的多様性を獲得した次世代を誕生させるというメカニズムになっています。有性生殖により、薬剤耐性化や悪性化が引き起こされると考えられており、近年では薬剤耐性菌が出現し始めています。