生産科学分野 畜産マネジメント研究室
生産・流通・消費から日本型循環畜産を構築
畜産の経営経済問題について、わが国の水田を活用した新たな循環畜産の構築をめざして研究を進めている。水田への堆肥の多投入で多収飼料米を栽培し、収穫した籾やワラは鶏、豚、牛、羊などの家畜に給与し、生産された畜産物の流通・販売・消費と関連づけて実践的な研究活動をおこない、社会科学と自然科学の両面からアプローチしている。世界的な食料問題の動向を視野に入れながら、わが国の畜産経営の将来像を探求するとともに、次代の畜産を担う人材や後継者の育成にも取り組んでいる。
所属教員
学生の主な研究テーマ
・受精卵移植による和牛子牛生産の経費と収益性
・低フィチン酸含有米給与が鶏糞に及ぼす影響
・アニマルウエルフェア畜産について
・酪農経営における飼養形態の違いによる経済性の比較
・日本在来馬の保存と利活用に関する研究
・食料残渣を利用した資源循環型社会の構築について
・ブロイラーにトウモロコシと飼料米を給与した結果の比較
FREE TALK
私は、大学に入学し畜産に関連した勉強をするに従い、日本で生産し利用できる自給飼料を確立することに大きな関心を得ました。そこで、近年、新たな家畜穀物飼料として注目を集めている飼料米の可能性を、実際家畜に給与することで見出したいと考えました。
研究内容は、穀粒中のフィチン酸含量を低下させた米を用いた給与実験です。研究対象は採卵鶏で、飼料米配合飼料を給与した時との糞中のリンの量を比較しました。フィチン酸とは、リンが植物体において有機物として存在していることです。鶏や豚ではこの有機物を分解する酵素が少なく、体内ではわずかにしか吸収されません。リン自体は生物が生命を維持する上で必須な成分です。しかし、吸収されないリンは糞尿として排泄され土壌中に流れ出ると、湖や海で発生する赤潮の原因となり、水性生物の生態系を乱すことにつながります。畜産分野においてリン排泄削減は大きな課題の一つと言えます。その対策として、日本では人工的に麹菌からフィチン酸を分解できる酵素、フィターゼの飼料への添加が一般的ですが、飼料米自体にもフィチン酸量が低ければ、より環境への負担を軽減した生産が可能になると思います。
また、現在ではトウモロコシ等の穀物を海外から安く大量に購入し、日本の畜産を支えてきた輸入飼料のみの畜産経営は不安定になっています。世界的なバイオエネルギー増産、畜産物の需要増加などが日本への安定的な穀物飼料供給を困難にし、畜産農家の経営を圧迫する事態を招いています。今後、飼料米の流通形態や生産農家に対する補償制度の充実など社会学的観点での問題解決が急がれます。それと同時に、新たな給与技術の発見や、給与した家畜及び畜産物への影響、飼料米自体に機能性を付加することで、飼料米が国産飼料として確立させることも重要なことです。このことは、低いままの食料自給率の向上、増加する耕作放棄地や水田の有効利用に大きく貢献できます。
ヒトが家畜とともに、お米の素晴らしさを共有できる日はそう遠くはないかもしれません。
畜産マネジメント研究室は出来てまもない研究室です。そのため、実施する研究すべてが新たな発見になっていきます。飼料米研究では、まだどの研究機関でも試験されていない品種の米を扱い多くの成果をあげています。穀物高騰が続く近年では、日本の飼料自給率をあげる方法としてこの飼料米研究が大きく注目されています。そのため研究室でも飼育している鶏、羊に飼料米を配合した飼料を給与しています。その結果、鶏は産卵率が上がり羊は従来の飼料を与ええた羊とかわりなく成育し二頭の元気な赤ちゃんを産みました。研究室の主なテーマとしては飼料米があげられますが、個人がおこなう卒論研究は様々な分野を扱うことができ、他の研究室に比べて分野の縛りのようなものがないので、普段興味があることをそのまま卒論研究にすることができます。はじめに紹介したようにできたばかりの研究室なのでこれからも様々な分野に幅を広げていける研究室だとおもいます。 (福原 敏史)