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造園科学科

2019/11/9「造園伝統技法の基礎実習」の実施

東京農業大学世田谷キャンパスの正門に入ってアカデミアセンターへ向かう途中、メタセコイアの林が広がります。ここに大きな景石9個が眠っていました。かつての旧1号館の中庭に据え付けられた石組の石であり、綺麗な石英質の縞模様が入る「チャート」と呼ばれる石です。
2019年11月9日(土)の10時~16時、東京農業大学オープンカレッジ「造園伝統技法の基礎実習」では、伝統技法を用いたこれらの景石の運搬と据え付けの授業が実施されました。講師は,長年の実務経験を持つ緑進造園の齋藤悟先生(東京農業大学非常勤講師)でした。受講者14名(うち留学生4名)が作業着、軍手、剪定鋏、ヘルメットをもって実習に臨みました。

まずは齋藤先生および同社員2名の講師による実演が行われました。柱の組み立て、周りの樹木の頑丈な枝を使って固定し、チェーンブロックを取り付けます。次に石の体積の計測と比重の計算を行いました。大きい石は2トンほどあると推定し、景石を安全に吊り上げるためにワイヤーロープの種類を決めます。一本のワイヤーロープとカナテコを使いながら、景石を絶妙なバランスでゆっくり吊り上げ(揚重)、船の形をする「そり」に乗せます。
ここでいったん落ち着いた後、「ころ」を使って方向を細かく修正して目的地へ移動します。目的の設置場所に運ぶと、周りの景色に合う据え方について、日本庭園の伝統技法を踏まえて慎重に検討します。次に決めた位置の土を掘削し、再びチェーン柱を組み立て、景石を吊り上げ、予定地に据え付けます。最後は景石の周りの土を締固め、整地と植栽の移植を行います。
プロフェッショナルの技術を見た後、受講者が実際に他の景石をメタセコイアの林の各エリアへ運搬し、単独の景石もしくは石組として据え付けました。周辺環境と調和した景色を作り上げ,来年度の新研究棟のオープンに伴い、学生や来訪者を温かく迎えます。

近年、クレーン(ユニック)を使った景石の運搬と据え付けが主流となり、長く培われてきた日本の伝統的造園技術が失われつつあります。今回は狭小空間で活躍できるチェーンブロックとそりを使って、石材の運搬や据え付ける技術を学習しました。重い景石を扱う大変な作業ですが、専門家の指導の下で安全に実施でき、受講者は体験を通して、日本の伝統的造園技術の伝承とその原理を学習する大切さを実感しました。

(報告:張平星 東京農業大学地域環境科学部造園科学科助教)

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メタセコイア林床に置かれた景石と柱の下準備

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道具:ワイヤーロープ、チェーンブロックなど

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作業手順と安全事項の説明を受ける受講者

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柱とチェーンブロックを使った景石の吊り上げ

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「そり」と「ころ」を使った景石の移動

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景石の設置

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午後からは聴講生が実際に景石を運び,石組みを行いました。 

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