東京農業大学

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自己点検・評価

序章
自己点検・評価に当たって
第1章  建学の精神・教育
  理念,教育目的・教育目標
第2章  教育の内容
第3章  教育の実施体制
第4章  教育目標の達成
        度と教育の効果
第5章  学生支援
第6章  研究
第7章  社会的活動
第8章  管理運営
第9章  財政
第10章 改革・改善
第11章 将来計画の策定
第三者評価結果 

Chapter 2

将来計画の策定について
 将来計画の策定について、平成17年における展望

 東京農業大学短期大学部の創設から55年目を迎えて実施した今回の自己点検評価、開学以来3回目にあたるこの作業を終えて、本書に刻み込まれた一項目ごとの記述には、過去の2回には無かった新しい指摘が多く含まれて、近未来の計画策定を緊急に求める内容である。つまり本学にとって、現状を踏まえての将来展望を決すべき重要な時期・平成17年を強く意識させるものとなっている。

 

(1) 短期大学部が設置されている環境を考慮しての将来展望

 さて、本学を構成しているのは、生物生産技術学科、環境緑地学科、醸造学科、栄養学科の4学科であり、これらは総じて農学系である。平成16年の文部科学省統計によると、全国の農業系短期大学の総在学者数は、2449名であり、このうちの64.1%に当たる1570人が私立大学の学生であるとのことから、収容定員860人を持つ本学のシェアーは、短期大学全体の35%、私大の5割以上を占めているわけで、本学が日本の農業系短期大学教育に果している役割の大きさをうかがい知ることができる。これを確認の上で、本学を併置している東京農業大学における教育組織上の特性についてもみておきたい。現状の4学科のうち、醸造学科と栄養学科については、ほぼ同じ学科名の4年制学士コースである醸造科学科と栄養科学科が、母体である東京農業大学の応用生物科学部のなかに設置されている。また、生物生産技術学科については、この学科に設置されている分野や研究室一覧に見られるように、厚木キャンパス・農学部に設置されている4年制学士コース農学科と畜産学科との関係が深い。そして、環境緑地学科は、学科創設までの前身が農業科の造園コースであったことからも明らかなように、地域環境科学部の造園科学科と関係が深い学科である。

 このように本学が有する教育プログラムの殆どは、東京農業大学に既にある4年制学科の『2年間プログラム』と言っても過言ではない。このことは、本学における教育が当該学問分野における「凝縮された二年間の高密度教育を達成している」というこの点検評価書の中でしばしば登場する記述と相対している。

 

(2) 将来計画を策定するとき想定される、3つの選択肢

 このように現状を確認した上で、本学の将来計画の策定方針を提示してみたい。なお、この方針は、今回の自己点検評価終了時点において、母体である東京農業大学を含む全学が共有すべき内容としてまとめたものであるが、この自己点検評価作業とほぼ平行して本学独自に検討された短期大学改革の今後の方向についての草案も参考に、整理したものである。

 方針の第一に掲げなければならないのは、昨今の大学事情、なかんずく短期大学がおかれた状況を鑑みてのことである。つまり、短期大学としての存続を堅持するか、あるいは他の方向に転化するのかは、避けて通れない二者択一だということである。その一つ、短期大学としての存続を選択した場合、「2年間完結の教育機関」としての道筋と、4年制学部への編入学を当たり前とした「高等専門教育ファーストステージ論」に依拠した方向とがある。周知のように短期大学の教育は、初期においては、前者にある2年間完全収束の教育機関であったが、次第に4年制編入前提のファーストステージ教育機関に急変してきた経緯がある。

 そうした傾向を反映して、近年の短期大学改革においては、短期大学を廃止し、4年制学部へ改組変換する傾向が著しい。本学にあっては、志願者募集における母体・東京農業大学との密接な関係、ならびに本学教員の諸々の努力から、短期大学のままで継続できる状態が今日まで続いてきた。しかし、この状況が今後も持続するとして期待し続けることは困難な状況である。なぜなら、本学にあっても、短期大学に入学するも続いて編入学を志向する割合が、入学直後の調査段階で75%、卒業時実績で50%を超える状況になってきているからである。だからと言って、単純に短期大学の廃止を結論すれば足りるものでもないので、4年制学部への改組転換に当たり如何なる道筋を採るべきかに軸足を置いた将来展望探求の観点をここでは示したい。

 その将来の姿は、以下の3つの選択肢の中から選ばれた一つ、もしくは二つの組み合わせの中に設定されるであろうとするのが、この章の主題であり、自己点検評価後の次なるステップへのメッセージである。もちろんその間には、第三者評価の意見もいただけることになるので、その内容も勘案しなければならないことを付記したい。

 

選択肢1 : 4つの各学科に最も関連する既存の4年制学科に個々に吸収させる方向で短期大学部を全廃する

選択肢2 : 短期大学部が有するスタッフの中から選別された教員を軸に、既存の学部の中に新学科として増設
        する方向

選択肢3 : 努めて進化を伴った短期大学運営に努力し、当面継続可能とみなされる教育分野については、極力
        短期大学部として存続させる方向

 

 選択肢1は、本学の既存学科にとってみると、これまでの活動の延長上で、大きな改革を要することなく短期大学の廃止・4年制各学科への収容定員移行を可能とするシナリオである。最も簡単な方法であるが、関連の4年制学科においては、その規模を縮小すべきダウンサイジングの時期にあり、このことと矛盾することになる。

 選択肢2は、本学が平成16年度に独自に検討した短期大学改革草案に最も近いものであるが、新設学科のコンセプトを既存21学科との明確な区別の下で形成できるか否かが鍵である。また、現有のスタッフ等が学年進行と共に大学院博士前後期課程の指導教授として機能しえるよう慎重な点検評価をしなければならない。

 選択肢3は、現在本学にある4つの学科は、その教育内容等の特性において、あるいは、教員等の潜在力において一様ではないことから、一概に、この選択の可否を論じることは適切でない。すなわち、この案の特徴は、学科の個別対応主義を尊重する方向であるので、その際は、優れて「継続可能性の評価軸」を据えることにより、4学科を詳細に診断し、シミュレーションする中で、継続可能性が低下している学科や分野と可能性が期待できる学科や分野との峻別を行うことになる。

 

(3) 将来計画の決定にいたる道筋

 以上のような3つの選択肢が想定された候補であるが、これらを理想と現実の両面から突き詰めるなら、選択肢1は、消極的短期大学収束策でしかないであろうことから、現時点の東京農業大学が採るべき方向ではないように思える。逆に、選択肢2は最も積極的な改革案とみとれるが、新設一学科を組織するスタッフの大部分を現有スタッフで構成できるかが鍵である。もちろん新学科の増設には、新しいスタッフの採用を可とするものであるが、そのシーズが発見できなければならない。

 そして、選択肢3に関しては、段階的対応であることから現実味のある方向で、慎重に検討する価値ありと思われるものである。その理由は、「短期大学の存在意義がこれからも続く」とする考え方にたち新しい方策立案に、学校法人東京農業大学は積極的に取り組むのだと言う態度堅持も重要な選択の一つだと言えるからである。なぜなら、わが国において、短期大学という高等教育機関の存在を是とするか非とするかの選択ともこれが関係するからである。短期大学としての教育機関の存在意義はあるにもかかわらず、取り巻く環境の変化が最大の要因となって、その存続が危惧されているとするなら、この将来計画問題は、現実だけに束縛されるのではなく、ひとつ次元を上げて考えるべき問題だとも思えるからである。東京農業大学の社会的使命と貢献すべき次元は、このレベルまで昇華されつつあることを指摘し結びとしたい。

 

 

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