本学図書館は、東京農業大学図書館内に併置されている。したがって以下に述べる内容については、すべて本学と東京農業大学の共用が前提となっている。
東京農業大学における図書館は、明治40年頃農友会の一部を構成する学術部が図書部を創設し、農友会蔵書の閲覧を開始したことに始まる。その後大学の発展とともに様々な経過を経て、図書館としての歴史を重ねてきたが、常に教育・研究に必須の施設としての存在は変わることなく、現在に至っている。
平成元年度のオホーツクキャンパス開学及びそれに続く平成10年度の厚木キャンパス開学に伴って、世田谷キャンパスの図書館を本館とする分館・分室体制が整備されたが、地域性など各キャンパスの特徴を生かした図書館運営を推進し、図書館を各キャンパスにおける情報基盤整備の核とする観点から、平成16年度より各キャンパスの図書館を学術情報センターに名称変更して組織上独立させ、その上で各学術情報センター間の業務上の連携をこれまで以上に強化する新しい体制をスタートさせることとなった(なお、オホーツク分館は一足早く平成13年10月1日より生物産業学部教育研究情報センターとして独立して設置され、平成16年度より名称を変更した)。この組織改編により、本学図書館は、改めて世田谷学術情報センター傘下の東京農業大学図書館に併置されることになった。なお、各学術情報センターの管理運営に関する重要事項は、それぞれの運営委員会(世田谷:図書館運営委員会、オホーツク:学術情報センター[オホーツク]運営委員会、厚木:学術情報センター[厚木]運営委員会)で審議することになっているが、3キャンパスの連携を深める観点から、世田谷の図書館運営委員会にはオホーツク・厚木の各学術情報センター長及び事務室長が委員として入り情報の共有化に努めている。
図書館の目的は、東京農業大学図書館規程第2条に「図書館は、本学の学生、教職員等の学習、教育研究に必要な学術情報を収集・保管してこれを利用に供することを目的とする。」と規定されている。学術情報と一口に言っても近年の学術情報提供媒体の変化には著しいものがあり、従来からの紙媒体資料(図書・雑誌)の収集・管理を継続して行いつつ、新たな電子媒体資料(CD−ROM版、インターネット版等)の充実にも力を注いでいかなければならない。また、本学が教授する学問分野は本学学則第2条に記載されているとおり、生物生産技術学、環境緑地学、醸造学、栄養学等広義の農学分野であり、これらの分野に関する専門的な学術資料の充実を第一義的に図るとともに、大学の使命の重要な一側面である人間形成機能の一環として、一般教養的な資料の充実にも配慮する必要がある。さらに、教育・研究に有用な貴重資料・オリジナル資料コレクションの構築と保存、公開のための資料電子化・デジタル化も図書館としての重要な使命であり、その結果として特徴的な電子図書館の構築へと繋げて行く必要がある。加えて、大学図書館としての直接の目的ではないが、大学の社会的な使命の一端である「研究成果の社会への還元」をサポートする意味からも、地域社会への図書館開放を積極的に推進して行かなければならない。
以上のような目的・目標を達成するためには、当然予算面での裏づけが必要となるが、最近の厳しい予算状況の中では、資料費の現状維持さえ困難な状況になりつつあり、外国雑誌やデータベース等の毎年の値上がり分を勘案すると、実質予算は完全に目減り状態にある。このような状況の中で図書購入費や学術雑誌のタイトル数を維持し、なおかつ時代の要請に応じた電子ジャーナル等の電子資料を充実させて行くことは不可能に近い状況であり、何らかの打開策が必要となる。そこで消極的な方策として学術雑誌や継続購入図書の継続見直し(継続中止)を行う一方、積極的な方策として補助金の獲得を目指すとともに学内コンセンサスを得て、一部受益者負担的な考え方等の導入を検討すること、さらに3キャンパス学術情報センター間での資料の共有化並びに有効活用を図り、他大学等とのコンソーシアムを推進するなど、様々なアプローチを行って経費の節減及び新たな財源の確保に努める必要がある。
また、コンピュータセンターとの連携を強化して、本学全体のネットワークシステムと図書館システムとの整合性を図るとともに、学術情報センター傘下の「食と農」の博物館との有機的な連携を図ることも重要な課題である。
以上のように現在の図書館運営は様々な要因から大きな転換期を迎えていると言わざるを得ない状況であり、「厳しい予算状況」、「外国雑誌・データベースの高騰」、「多様化する資料形態への対応」、「資料収蔵残存スペースの狭隘化」、「進化するネットワーク環境への対応」、「電子図書館化への対応」、「休日・夜間開館等を含めた新規サービスへの対応」、「人事施策上の諸問題」「図書館の老朽化」等々様々な課題に直面している。このように厳しい状況下ではあるが、原点に立ち返ってみれば大学図書館としての最大の目的は、いかに本学の教育・研究に密着し、利用者である学生、教職員の立場に立った効果的なサービスを展開できるかという一点に集約されるであろう。この目的達成のためには図書館員側の意識改革が必要であると同時に図書館のサービス内容を効果的に広報し周知を図る努力もまた重要である。このような取り組みを通じて、教育・研究のサポート面における図書館の重要性がより多くの人々に理解されるようになれば、図書館員の専門性についての議論も深まり、自ずと図書館の「学術情報収集・管理・発信センター」としての存在が名実ともに確かなものになるであろう。また、その方向こそが、大学図書館に身を置く者の使命ではないだろうか。
図書資料については、基本的には本学が教授する学問分野である生物生産技術学、環境緑地学、醸造学、栄養学等の専門分野並びにその関連諸分野の専門図書を中心に収集を行っているが、入門書的な図書や一般教養的な図書についても受入を行っている。なお、授業に直接関連して教員が指定する「指定図書」など利用期間が限定される図書やマニュアル本など内容の改訂が頻繁な図書などについては、資産計上せず消耗品費で購入している。
学術情報センターで受入る図書の選択方法は複数あるが、概ね本学の教育・研究に有効活用される図書が選択されている。世田谷学術情報センター(以下「本センター図書館」という)では各学科・課程から選出された委員が、購入図書を決める「見計らい選書」を中心に選択を行っている。この「見計らい選書」は選書会場の確保が必要であるとともに、事前準備・事後処理に多大な労力を要するが、現物を手に取り、内容を確認した上で購入の可否が判断できるという大きなメリットがある。しかしながらこの方法だけに頼ると、書店が見計らい用に選んだ本の中からしか選択できないという危険性もはらんでいる。この「見計らい選書」のデメリットを改善するために、他の選書方法を併用して補完するとともに、あらかじめ図書館側で様々な出版情報を収集し、書店側に対して見計らいに展示する図書を指示するなど、図書館側主体の選書が行われるための方策を確立する必要がある。一方、インターネットや冊子体など各種出版情報をもとにセンター主体の選択も行っている。この他、学生・教職員からの「希望図書」を随時受け付け、余程高額な図書でない限りは購入している。なお、本センター図書館では、都道府県史や大学史関係の資料の収集、江戸期・明治期の農書の収集、などが特徴として挙げられるが、教育・研究に密着したオールラウンドな図書の選択・収集に比べ、本学に特徴的なコレクションの構築があまり進んでいないのが現状である。そこで選書にあたっては、本学としての特徴的なコレクションの構築に向けた「分野またはテーマ」の設定並びにその「分野またはテーマ」に沿った重点的な収集・選択の視点も必要である。その際は、新刊本の収集だけではなく、場合によっては古書店との連携による資料収集も必要となろう。
図書のデータ入力・管理については、国立情報学研究所の目録所在サービスである「NACSIS-CAT」に参加し、国立情報学研究所の目録に準じて本学の所蔵目録(OPAC)を作成しているが、本センター図書館では「見計らい選書」の結果購入が決定した図書を中心に受入図書の一部について、データ入力作業を外部委託している。なお、受入番号の古い図書データの遡及入力がまだ一部残っている。
一方、図書は利用者の利用に供するために収集されるものであり、形あるものである以上、利用の過程で紛失や破損などが生じ、利用に供せない状況となり得ることは当然のことである。また、記載内容が改訂されて利用価値を失った資料が存在することもまた事実である。しかしながら利用者サービス上の問題(データ上は存在するが実物の図書は存在しない)及び収蔵スペース上の問題(利用価値を失った図書が書架の一部を占めることにより、有効利用スペースを狭めている)から、図書の除籍は急務であるため、平成16年度より図書除籍取扱要領を策定し、今後計画的に重複した資料や資料価値の低下した資料の除籍処理を実施して行く予定である。
また、学術雑誌についても、専門分野並びに関連諸分野の資料を中心に冊子体の和雑誌・洋雑誌を継続的に収集している。洋雑誌の選定については、各学科・課程にアンケートを行った上、最終的に運営委員会の承認を得て実施しているが為替の変動の影響を直接受けることから予算処理を煩雑にしている面がある。また、学術雑誌は、逐次刊行物であることから、巻ごとに製本して保存に供しているが、収蔵スペースの狭隘化の問題や予算上の問題(製本費が発生)もあり、本センターでは平成16年度より製本業務見直しの第一歩として、寄贈雑誌について@今後も製本保存を行うものA電子媒体が発行されるまでは製本保存を行うが、電子媒体に移行後は製本保存を中止するものB電子媒体の存在にかかわらず製本保存を行わないものに分類し、製本保存を行わないものについては、一定期間(5年間)未製本の状態で保管後、廃棄する方針を立て運営委員会で了承された。一方、電子ジャーナルについては、現在購入契約しているタイトル数は2タイトルと少ないが、冊子体購入の副産物として無料でアクセスできる電子ジャーナルは極力閲覧できるようにホームページ上にリンクを作成している。現在、学術雑誌については、冊子体から電子ジャーナルへ移行する過渡期であり、新たな学術雑誌の選択・収集方針を早急に策定する必要がある。学内的なコンセンサスの構築も必要となる。
学術雑誌の範疇に入る資料として、二次資料がある。二次資料は書誌や索引誌などの総称で、一次資料である図書や学術雑誌そのものを探すための資料であるが、以前は冊子体が主体であった。しかしながら記載データ更新の即時性が特に求められる資料であることから、現在では電子媒体が主流となっており、一般にデ−タベースと称している。本学においても平成8年度前後から冊子体二次資料の購入を順次中止してCD-ROM版のデータベースに切り替え、平成13年度からインターネット版のデータベースを3キャンパス共通のネットワーク上で提供している。また最近は、その他にも電子媒体(CD-ROM版等)の資料が増加しており、随時受入を行って、図書館内のパソコンで利用提供している。
一方、視聴覚資料については、農林業関係・明治期からの府県別統計書関係・明治期の国会図書館蔵書関係等のマイクロ資料を所蔵しているが、予算面での制約もあり、今後積極的に受入を行う方針は今のところない。ただし、後述するオリジナル資料・貴重資料電子化の過程で、長期間の保存に耐えうる媒体として、資料のマイクロ化を実施しているので、その分については今後も増加して行く予定である。また本学図書館の特徴として昭和35年から組織上視聴覚係(その後変遷を重ねながら視聴覚部として定着するが、平成16年度からの組織改変に伴って部としては廃止となり、視聴覚業務の一部は「食と農」の博物館に移行することとなった)を置いて、視聴覚資料の収集・制作および関連技術の提供サービスに力を入れてきた経緯があり、教材用のスライドや自主制作の映画原版等についても多数所蔵している。これら現在の収蔵資料については継続して管理・運用を行うが、媒体の変化や時代の変化および図書館業務自体の変化に伴って、今後新たに受入を行う予定はない。次いでビデオテープについては担当教員からの希望を受入るとともに、本学の教育・研究分野に関連の深い内容の資料を厳選し、授業等の副教材として収集している。なお、従来は娯楽的な観点からの資料収集も行っており、映画関係のビデオテープ、レーザーディスクを多数所蔵しているが、現在はその方針での収集は行っていない。また音声テープについても、媒体の変化などにより、利用はほとんどなく、今後新たな受入を行う予定はない。
(1)図書、資料の収蔵数と資料費予算
平成16年度末における世田谷キャンパス本センター図書館における収蔵数は図書579,887冊(実験実習費で購入した部局長期貸出図書を含む)、学術雑誌1,645種類、視聴覚資料5,693種類等である。
次に本センター図書館における過去5年間の予算状況を以下に示した。
|
総予算 |
資料費予算
合計(総予算
に占める%) |
図書費予算内訳 |
雑誌資料費予算内訳 |
平成12年度 |
181,401,000 |
121,408,000
(66.9) |
47,000,000 |
74,408,000 |
平成13年度 |
179,273,000 |
114,849,000
(64.1) |
39,000,000 |
75,849,000 |
平成14年度 |
179,048,000 |
121,157,000
(67.7) |
38,500,000 |
82,657,000 |
平成15年度 |
176,948,000 |
120,252,000
(68.0) |
32,500,000 |
87,752,000 |
平成16年度 |
179,256,000 |
122,010,000
(68.1) |
40,120,000 |
81,890,000 |
※資料費予算には消耗品費での購入分は含まない。
※雑誌資料費の中にはデータベースを含む。
※部局予算を除く。
この5年間で総予算が2,145,000円減少(1.2%)したが、逆に資料費予算(消耗品費での購入分を除く)は602,000円増加(0.5%)している。これは学術雑誌(特に洋雑誌)の誌代高騰の影響によるもので、資料費の内訳を見てみると図書費は逆に6,880,000円も減少しており、総予算減少の中で学術雑誌の値上がり分を図書費で補填せざるを得ない構図がはっきりと現れている。そのため、見計らい選書の回数を年間8回から5回に減らしている。また図書と学術雑誌の予算配分比率(概算)について見ると、平成12年度には図書4:学術雑誌6であったものが平成16年度には図書3.3:学術雑誌6.7となっており、益々資料費の中で学術雑誌(データベースを含む)の占める割合が増加する傾向を示している。図書館総予算の大幅な増加は見込めない状況の中で、既に管理的経費は最低限のところまで削減しているので、資料費の中でも、毎年の洋雑誌及びデータベースの誌代高騰により、同一タイトルを維持するだけでも雑誌資料費は増大する一方であり、このままでは雑誌のタイトル数を毎年減らして行くか、図書費を削減するか、どちらかの選択をせざるを得ない予算状況になっている。資料費の削減は、直接教育・研究支援体制の後退につながって行く恐れがあり、このままでは時代のニーズに応じた電子ジャーナル等の整備などは、とてもおぼつかない状況にある。今までどちらかというと図書・雑誌購入予算は図書館独自のものといったイメージが学内的に定着しているきらいがあり、資料購入費の確保について理解が得られていない面があることも事実である。教育・研究支援体制構築のために図書館が取り組んでいる様々な努力を効果的に学内に周知し、大学側に資料費予算の確保についての理解を得るとともに、図書館のユーザーである各学科教員との連携を深め、各学科の教育研究経費の一部を受益者負担的に資料購入費の補填に充てるなど、新たな財源の確保が必要である。その第一歩として、本センター図書館で契約している電子ジャーナル及び電子データベースにより獲得している助成金(契約金額の半額助成)の一部についてだけでも、次年度の予算に反映されるようなシステムの構築実現を根気よく要求して行く必要がある。学術雑誌、特に洋雑誌の価格高騰については、海外のいくつかの独占的な出版社に頼らざるを得ない、構造的な出版界の状況が存在しており、なかなか個々の大学図書館レベルでは対処しきれない状況にある。
現在、学術雑誌は出版形態が冊子体から電子ジャーナルへと移行する過渡期にあり、今後確実に電子ジャーナルが主体になって行く可能性が高いと思われる。この機会をとらえ、電子ジャーナルへのシフトにあたっては、単独で契約を行うのではなく、現在進められている様々な大学のまとまりによるコンソーシアムへの積極的な参加を検討し、コンソーシアムとして出版社との価格交渉に臨み、少しでも価格高騰に歯止めをかける必要がある。
(2)施設の種類・面積及び資料収蔵能力
本センター図書館棟は昭和43年2月に竣工・開館したものであり、鉄筋コンクリート3階建、延べ床面積4,111.6uの建物である。その後、建物内の書庫の階層を増設したため、現在の延べ床面積は5,292uとなっている。建設当時の図書館のコンセプトは閉架式が主流であったため、建物の基本構造は、書庫と閲覧室が完全に分かれた形になっているが、開館後35年余の間に、各階のフロアの用途は何度か変更を重ねている。その中でも一番大きな変更は、図書館運営の主流が開架式にシフトしてきたのを受け、閲覧室に書架を増設して開架式のスペースを増加させたものである(平成9年度実施)。またこの間、図書館棟内の書庫・書架だけでは収蔵スペースが不足したため、別棟の倉庫2棟を収蔵庫として確保することとなった。なお、図書館建設の翌年から、書庫内に増設した積層書架は消防法上の関係で不特定多数の人間の出入りが制限されており、また別棟の倉庫は図書館棟から離れていることから、どちらも依然閉架式の書庫として、原則として利用者からの求めに応じ職員が資料の出納を行う形となっている。
なお、建物の老朽化が激しく、毎年建物維持のための修繕費が嵩んできているとともに、床の耐過重が200s/uと小さいため、2階以上は書架の増設が困難な状況である。また、空調設備を段階的に導入してきたため、書庫や各フロアにより複数の空調システムが共存して非常に複雑な体系になっており、古い空調機の故障も目立ってきている。建物の老朽化、残存資料収蔵スペースの狭隘化の問題等を勘案すると図書館棟の建て替えを視野にいれた年次計画の策定が急務である。その際には、開架を前提とした機能的なフロア設計と、将来を見据えた資料収蔵スペースの確保が必要条件となり、図書館側における真剣な議論を開始する必要がある。
下記に図書館棟及び倉庫等の面積と資料収蔵能力を一覧表に示した。
建物名称 |
種別 |
用途区分 |
面積(u) |
資料収蔵能力(冊)
|
図書館 |
サービススペース |
閲覧スペース
視聴覚スペース
情報端末スペース
その他(会議室等) |
883
227
112
541 |
|
管理
スペース |
書庫・開架書架
事務スペース
その他 |
1,323
374
1,832 |
書庫(2〜7層) 198,975
第1閲覧室 98,750
参考図書室他71,250 |
第一倉庫 |
管理 |
書庫 |
258 |
電動集密書架55,825 |
第二倉庫 |
管理 |
書庫 |
69 |
電動集密書架26,475 |
その他 |
管理 |
倉庫、空調室等 |
38 |
|
合計 |
|
|
5,657 |
451,275 |
※
面積及び収蔵能力冊数は平成16年度図書館実態調査の数字を用いた。
以上のように本センター図書館における資料収蔵能力は約45万冊である。平成16年度末の図書の冊数は579,887冊であるが、これには実験実習費で購入した部局長期貸出図書も含まれているので、全てが本センター図書館の書庫に収蔵される訳ではないが、消耗品費での購入図書も含めると学術情報センターの書庫及び開架書架は既に8割方埋まった状態となっている。今後は除籍基準に基づいた図書(重複図書や資料価値の低下した図書など)の計画的な除籍・廃棄が今後の図書館運営上、重要な業務とならざるを得ない状況となっている。
なお、主な施設としては、第1閲覧室、第2閲覧室、参考図書室1、参考図書室2、小閲覧室、パソコンルーム、視聴覚ホール、撮影スタジオ、集団視聴室、語学学習室、貴重書室、論文資料収蔵室、映像資料収蔵庫、マイクロ資料室、ブラウジングコーナー、会議室、特別閲覧室、大学史料室、書庫2〜7層等がある。
(3)機器・備品の配備状況
情報検索関連設備、機器・備品の整備状況については、別項に譲り、ここではそれ以外の利用者用設備、機器・備品等の配備状況について述べることとし、下記の一覧表に示した。
区分1 |
区分2 |
設備、機器・備品の名称 |
数 |
備考 |
視聴覚関係 |
設備 |
語学学習室
集団視聴室
視聴覚ホール
撮影スタジオ
現像室 |
1
1
1
1
1 |
プラズマディスプレイ
144席、ビデオ・スライド・OHP・16o・パソコン、会議用カウントシステム、マルチメディア遠隔会議設備
各種照明設備 |
機器・備品 |
ビデオ閲覧用ブース
レーザーディスク閲覧用ブーズ
ビデオ編集機材一式
フィルムレコーダースライド作成装置
貸出用機材各種 |
8
4
2
2
56 |
カメラ・OHP等 |
その他 |
設備 |
ブックディテクションシステム(BDS)
閲覧室モニター用テレビ |
2
3 |
入館人数カウント及び未貸出資料持ち出し防止設備 |
機器・備品 |
白黒コピー機
カラーコピー機
大型コピー機
マイクロリーダープリンター
証紙発券機 |
4
1
1
1
1 |
コイン式1・プリペイドカード式3
A1・A2サイズ
学外文献複写用 |
本センター図書館には、平成15年度まで、卒業論文作成のための写真撮影や発表用資料作成の補助、各種視聴覚機材の貸出・管理、農学写真講習会の実施等、視聴覚全般に関わる技術指導を含めた業務を主業務とする視聴覚部という部署が存在した。しかしながら、平成16年4月からの組織改編に伴って、視聴覚部が廃止となり、設備・機材の貸出・管理業務については引き続き図書館で実施するが、技術援助的な業務は「食と農」の博物館に移行することとなった。このような経緯もあり、視聴覚関係の設備、機器・備品は現在でも多岐にわたって提供されている。特に撮影スタジオの存在は図書館として特異であるが、動植物資料の生育状況等を写真に収めて発表に用いる農学分野ならではの設備であるといえよう。なお、著作権の範囲内での館内資料複写用に用意しているコピー機は、以前は自前で設置していたが、現在は生協にその運営を委託し、用紙の補給や紙詰まりの場合には図書館で対応している。現在旧視聴覚部が所掌していた設備・機材等の貸出・管理業務を図書館2階のカウンターで受け継ぎ、提供を行っているが、ビデオ(主にミニデジタルビデオ)やカメラ(主にデジタルカメラ)の利用が思いの外多く、貸出対応には多少とも専門的な知識を要するため、カウンタースタッフがローテーションで入れ替わる2階カウンターの共通業務としては位置づけにくい面が出てきている。
視聴覚設備・機材等の貸出・管理業務については、当面の間主担当者を現有スタッフの中から1名置くこととし、単純な貸出予約等の業務については、2階カウンターの共通業務として位置づける方向で検討する必要がある。しかしながら、大学の学問分野の性格上、教育・研究面で記録用にビデオ、カメラ等の視聴覚機材を使うことも引き続き多いことが予想されるので、「食と農」の博物館との間で今後の視聴覚サービスのあり方を再度協議するとともに、大学全体の方針として、このようなサービスをどこの部署でどのような範囲まで行うかという根本的な議論を行う必要がある。
(4)学生閲覧室の座席数等
学生閲覧室の座席数については、本センター図書館で949席となっている(学部と共用)。
メインの閲覧室である第1閲覧室、第2閲覧室に通常の閲覧テーブルを配置するとともに、参考図書室には狭い空間を少しでも有効活用するために、壁面にカウンターテーブルを設置するなど工夫を施している。また、2〜4名の少人数グループ用の小閲覧室が3部屋ある。さらに学生の試験期(7月・1月)で、利用が大幅に増える時期には、通常選書会場や会議室として使用している特別閲覧室や撮影スタジオを閲覧室として開放し対応している。なお、通常の閲覧席としては使用していないが、卒業論文や研究発表の会場として、視聴覚ホールが頻繁に利用されている。このように、閲覧座席数については、おおむね適切な規模で整備されている。しかしながら、通常の閲覧テーブルにおいては、1テーブル4席が理想のところ、1テーブルに6席を設置しており、学習環境上の改善が必要である。
本センター図書館では、数年前の施設改修により閲覧スペースをもうこれ以上増やせないところまで増やして活用しているので、現状での環境改善はあまり望めないが、今まで3階・4階の廊下に設置してあった植物標本類が移動したことにより、その跡地の壁面スペースにカウンターテーブル等の設置が可能なため、少しでも閲覧スペースを確保すべく、その方向での検討が必要である。なお、根本的な解決策としては、図書館棟建て替え時に基本的なコンセプトとして適正な閲覧スペースの確保を行う必要がある。
(5)開館時間及び開館日数その他図書館利用者に対する利用上の配慮
・開館時間及び開館日数
下記に平成16年度の開館時間を一覧表に示した。
区分1 |
区分2 |
開館時間 |
平 日
|
授業・試験期間中 |
9:00〜22:00 |
上記以外 |
春季休業期間中 |
9:00〜16:30 |
夏季休業期間中 |
9:00〜16:00 |
土曜日 |
授業・試験期間中 |
9:00〜17:00 |
上記以外 |
閉館 |
本センター図書館では、平成10年度より東京農業大学国際食料情報学部に夜間主コースの授業が開始されたことにより、図書館の開館時間を通常平日は22:00まで延長し(それ以前は20:00まで)、土曜日は17:00まで開館する(それ以前は閉館)こととした。初年度は、職員が平日20:00まで交代で勤務し、それ以降22:00までの間はアルバイトのみによる開館体制をとり、土曜日も職員が交代で勤務する体制をとったが、特に夜間の安全性等責任体制の確立が困難であった。そこで平成11年度より、派遣職員1名を夜間と土曜日に配置して責任体制を明確化するとともに、夜間に大学院生を配置することによって、継続可能な夜間及び土曜開館体制を構築することが可能となった。また、当初は平日20:00以降と土曜日については1階のみを開館とし、図書の貸出サービスは行わない形でのスタートであったが、徐々にサービスを拡大し、現在ではほぼフルサービスを行っている。
次に平成16年度年間開館日数を一覧表に示した。
学術情報センター名 |
年間開館総日数 |
土曜開館日数 |
休日開館日数 |
世田谷学術情報センター |
260 |
30 |
6 |
本センター図書館で平日夜間22:00までと土曜日の開館が恒常的に可能となったのは、派遣職員の確保に伴って、職員が「平日の昼間」と「平日の夜間及び土曜日」の両方に力を分散させる必要がなくなったこと及び職員が不在の場合の責任体制が整ったことに起因している。また、平成16年度より前・後学期試験期間中の日曜日各2日間並びに冬季休業中の2日間を開館して、利用者の便を図る予定である。
以上のように開館時間については、東京農業大学国際食料情報学部の夜間主コースの設置という周辺事情もあり、派遣職員の導入を前提とした平日22:00までと土曜日17:00までの開館を実現しており、利用者からのニーズに対し、一定の対応を実現している。また、試験期の夜間延長開館や土曜・日曜開館についても可能な限り対応している。なお、平成17年度より夜間主コースの募集が行われなくなることに伴い、夜間主学生がほぼいなくなる平成20年度以降の夜間開館体制について検討しておく必要がある。
・利用者への配慮
図書館における入館者数と図書及び雑誌貸出冊数の過去5年間の推移を以下に示した。
年 度 |
入館者数 |
開館日数 |
1日平均
入館者数 |
図書及び雑誌(年間) |
貸出者数 |
貸出冊数 |
1人当たり
貸出冊数 |
平成12年度 |
349,511 |
256 |
1,365 |
40,189 |
63,751 |
1.59 |
平成13年度 |
352,989 |
253 |
1,395 |
42,713 |
65,282 |
1.53 |
平成14年度 |
342,987 |
251 |
1,366 |
40,541 |
62,108 |
1.53 |
平成15年度 |
349,541 |
260 |
1,344 |
39,081 |
60,959 |
1.56 |
平成16年度 |
388,795 |
260 |
1,495 |
36,461 |
54,050 |
1.48 |
平成16年度は前年度に比べ、入館者数が約150名増えたが、貸出者数・貸出冊数共に減少している。これは図書館の主な利用目的が、学習の場所およびコンピュータを使った情報検索の場所となっていることを如実に物語っていると思われる。最近の学生の国語力の低下傾向の一因が読書離れにあると言われていることを考え合わせると、図書館として、もっと学生に読書の楽しさを伝え、読書の場としての図書館利用を啓蒙することも、教育支援の一環として重要な使命ではないかと思われる。
次に図書館利用者に対する利用上の配慮について、いくつかの点を以下の一覧表に示した。
項目 |
利用上の配慮 |
貸出可能冊数(通常期) |
学生 図書 4冊
教職員 図書・学術雑誌 合わせて20冊 |
貸出可能期間(通常期) |
図書 2週間
学術雑誌 1週間 |
閉架式書庫への入庫 |
教職員、大学院生のみ可(学部・短期大学部学生は不可) |
学外文献複写サービス
の申し込み |
図書館2階カウンターで申し込み用紙に記入
※電子的申し込みについて検討中 |
図書の現物貸借 |
平成15年6月より学外機関との図書現物貸借サービスを開始 |
レファレンスサービス |
質問・相談専用のカウンターを設け、毎日13:00〜15:00の間レファレンス担当者が常駐対応、レファレンス記録を定型フォーマットで蓄積 |
図書館利用ガイダンス |
*新入生全員に対して、学科別ガイダンス時またはフレッシュマンセミナーにて、図書館の基本的な使い方のガイダンスを実施
*要望に応じ、学科、ゼミ、研究室単位での図書館利用ガイダンスを実施 |
ホームページの運用 |
大学全体におけるホームページのフレームの中で図書館ホームページのメンテナンスを自前で実施
館員の中から2名をホームページ担当者にあて、きめ細かなメンテナンスを実施 |
コンピュータ検索結果の出力用紙の利用者への提供 |
*農大蔵書検索結果の出力については、専用プリンタに検索結果出力専用のA5用紙を事前にセットして提供
*農大蔵書検索専用機以外のインターネット端末での出力は、本人の申告により必要枚数のみ(A4)をカウンターで手渡し。 |
その他 |
*利用者の声の回収ボックスを設置して、回答を掲示
*本のリサイクルコーナーを設置
*本学の資格課程である学術情報課程との連携を深めることを業務目標の一つに置き、司書コース学生の実習受入を図書館業務として捉え、具体的な受入方法について検討し、平成17年度からの実施を目指している。 |
図書の貸出については、定期試験前から定期試験期間中にかけての試験期については、貸出冊数・期間が変更となり、全ての図書について貸出期間が3日間に変更となる。また、長期休暇期間中には「長期貸出」として、貸出冊数・期間が変更になる。
学外文献複写サービスについては、まだ図書館カウンターでの紙ベースでの申し込みで対応しているが、システム上はインターネット上での学外文献複写の申し込みが可能な状況になっているので、それに伴う業務の流れの変更等を十分確認し、コンセンサスを得た上で、利用者サービスの向上を目的とした新規サービスの導入を実現する必要がある。
利用者用プリンタにおける用紙提供の方法について、直接授業等に関わる以外のサービス部門での対応に関しては本学全体の流れとして、環境問題を考慮した紙資源の節約(ISOへの取り組み)の方向性もあり、利用者自身が紙を持ち込む形の考え方が主流となりつつある。とはいえ、現在の本センター図書館での対応は必ずしもその方向になっていない。この件については、本センター図書館の基本姿勢を提示するとともに、大学全体としての基本方針を確認する中で、その方針の趣旨に沿った対応を実現する必要がある。
・サービス支援体制
図書館の第一義的な目的は、教育・研究のサポートであり、そのためには各学科の教育・研究に密着した図書館サービスの実現は重要なことであるので、今後もその実効が上がるようなシステム作りが必要である。本センター図書館では、質問・相談カウンターを設け、レファレンスに専念できる体制の構築を目指しており、その他にも館員一人一人に担当学科を割り当て、各学科の教育・研究に密着したサービスを展開するための方策としての学科担当制を試行するなど、様々な取り組みを行っている。
なお、現在本センター図書館における専任職員数は15名(館長を除く)であるが、その内司書資格を有する職員は7名と半分をきる状況となっている。本学に限らず、最近の傾向として、大学全体の人事施策の中で図書館員の人事も一般職員の人事異動の一環として位置づけられるようになってきている。これには人的活性化のメリットもあるが、一方で教育・研究のサポートを目的とする図書館員の専門性が省みられず、この考え方だけで人事異動が行われると、これまで図書館として蓄えられてきた情報・経験の蓄積が継承されなくなる危険性をはらんでいる。また、今後は図書館業務のアウトソーシング化が急ピッチで進展する可能性があるが、なし崩し的なアウトソーシングの導入ではなく、まず専任職員の行うべき業務を明確化にした上で、人材養成も含めて慎重に検討を進めている。
(6)電子図書館サービスへの取り組み
平成15年9月、本センター図書館に電子図書館サーバが導入されたことにより、電子図書館サービスの展開が可能となったが、本センター図書館では、将来の環境整備を見越して、平成13年度から年次計画を立て、図書館の所蔵する貴重資料、オリジナル資料の電子化を業者委託する形で進めてきた。なお、この資料電子化には毎年500万円(学部との合算額)の運営費を委託管理費として計上しているが、日本私立学校振興・共済事業団の助成金「教育学術情報データベース等の開発」を申請し、半額助成を得て実施している。
これまでに電子化を行い既にホームページを通じて公開している資料を下記の表に示した。
年度 |
コンテンツ名 |
電子化 |
公開 |
平成13 |
農大新聞(全部) |
終了 |
学内公開済 |
江戸期・明治期の農書コレクション(一部) |
終了 |
学外公開済 |
平成14 |
明治期の本学卒業論文(3年計画1年目) |
終了 |
学外公開済 |
平成15 |
明治期の本学卒業論文(3年計画2年目) |
終了 |
学外公開済 |
平成16 |
明治期の本学卒業論文(3年計画3年目) |
終了 |
学外公開済 |
資料電子化の目的は貴重な資料の劣化防止とともに貴重な学術資料の公開による学問の発展への寄与にあるといえよう。本センター図書館では、幸いにも先人が情熱をもって様々なコレクションの構築を行い、上記の他にもいくつかのコレクションが現在に受け継がれており、その保存と公開が現段階に引き継がれており、さらに継承することが図書館の現代的な役目であると考えている。また、現在の視点による新たなコレクションの構築も次代のためには重要な責務である。今後も細々とではあるが、毎年電子化事業を進め、それを本学独自の電子図書館構築に繋げて行く所存である。
資料の電子化については、厳しい予算状況の中でも必要経費として捉え、毎年継続して行っている。しかしながら、このままの予算状況が続くと、現在の教育・研究に直結した資料の購入を優先せざるを得ないため、電子化事業の中断もあり得る状況である。電子化事業を維持するためには、貴重な資料の保存と公開の重要性を強くアピールし、資料電子化予算の確保を実現する必要がある。
(7)図書館ネットワークについて
・ネットワーク構築
各学術情報センターは前述したとおり、東京農業大学図書館として歴史を刻んできた世田谷の本館を母体として、オホーツクを分館、厚木を分室とする体制で再出発した。オホーツクキャンパス分館の立ち上げ時には、世田谷から未整理の資料を多数移送し、設立時の基本図書の一部とするとともに、世田谷キャンパス本館の図書館員が短期・長期で出張し、業務のサポートを行うなど、密接な連携を図った。一方、厚木キャンパス分室の立ち上げ時には、世田谷キャンパス本館の職員2名が職場移動で赴任したこともあり、直接現地に赴いての支援は行わなかったものの、受入図書のデータ入力を本館の担当部署が一括して行い、装備した図書を厚木へ移送するとともに、学外文献複写依頼業務についても本館で代行し、また支払請求伝票の起票業務も本館で行うなど、本館のカウンターの一部が厚木へ移動したようなイメージでスタートした。その後分館・分室共、それぞれの業務が軌道に乗るに従い、3キャンパスの連携を保ちつつ、徐々に地域性も踏まえた独自の運営を取り入れることとなり、平成16年4月に各キャンパスの学術情報センターとして組織上独立することとなった。
独立後の具体的な3キャンパスの連携としては次のような事が挙げられる。
a.マルチメディア遠隔会議システムを使った3キャンパス学術情報センター会議の定期的実施
b.世田谷キャンパス図書館運営委員会へのオホーツク・厚木各学術情報センター長の参加
c.キャンパスシステム担当者委員会の定期的開催
d.教職員ポータルを使った3キャンパス館員同士の情報共有
e.学術雑誌・データベース等の3キャンパス一括契約によるスケールメリットを活かした経費節減努力の推進
f.電子ジャーナル、データベース等のインターネットによる3キャンパス共通利用の推進
g. 3キャンパス蔵書の一括同時検索の実現
h. 3キャンパスの図書の共通利用(貸借可能)の実施
i.学内専用定期便(世田谷―オホーツク便、世田谷―厚木便、オホーツク―厚木便)を用いた、図書及び文献複写物の早 期移送
j.世田谷キャンパス見計らい選書会への厚木キャンパス教員・図書館員の参加
k.厚木キャンパス学生の世田谷学術情報センター図書館の直接利用
学部の各キャンパス学術情報センターとの打合せの中で、従来各学術情報センターそれぞれで購入契約していた洋雑誌について、平成17年度の前払い契約より、一番購入タイトルの多い本センター図書館で一括して契約することを決定し、そのことによりスケールメリットが出て、結果的には各キャンパスの洋雑誌購入費用を削減することができ、3キャンパス連携の実効を挙げることができた。また同様の協議を経て、データベースをインターネット版に移行したことにより、3キャンパス共通で同じデータベースを利用できるようになり、ソフト面での情報基盤整備を一部実現することができた。今後も学部の各キャンパス学術情報センター間の連携を強化し、3キャンパス共通で歩調を合わせる部分と各キャンパスの学術情報センター独自で進める部分の区分けを明確にして、利用者からのニーズに柔軟に対応できる体制を構築して行く必要がある。
次に学部の各キャンパス学術情報センターとの相互協力の一端を示す表を下記に挙げる。
<オホーツク・厚木から世田谷への文献複写依頼受付状況>
年度 |
オホーツクからの文献複写依頼受付件数 |
厚木からの文献複写依頼受付件数 |
平成14 |
859 |
1,403 |
平成15 |
948 |
1,541 |
平成16 |
883 |
1,906 |
平成16年度のオホーツク・厚木から世田谷への文献複写依頼の合計数2,789件は、本センター図書館で他大学図書館等から受ける分も含めた総受付数の約58%にあたる数値であると同時に、逆にオホーツク学術情報センターおよび厚木学術情報センターとしても他大学への依頼も含めた総依頼件数の3〜4割を占める数字となっている。このことは本センター図書館の資料、特に学術雑誌のバックナンバーへの依存度の高さの一端を示す事実である。
<世田谷―厚木間の資料相互貸借(学内便)状況>
年度 |
世田谷から厚木への移送冊数 |
厚木から世田谷への移送冊数 |
平成14 |
399 |
113 |
平成15 |
345 |
146 |
平成16 |
332 |
139 |
・ネットワーク環境の整備
本センター図書館における図書館システム及び各種情報関連システム、機器・備品等の整備状況並びにそれに伴うソフト面の整備状況は次のとおりである。
a.世田谷キャンパス学内LANの整備と時期を同じくして、平成11年4月より、生物企業情報学科の設置経費の一部を使っ てネットワーク対応のCD-ROMサーバを導入し、図書館に来ずとも各研究室の端末から二次資料データベースの検索 が可能となった。
b.平成12年10月の学内コンピュータの大規模リプレイスに歩調を合わせ、図書館業務システムを更新し、バージョンアッ プを行った。これにより、国立情報学研究所の新CAT、新ILLシステムへの対応が可能になることとなった。なお、サー バは図書館内に設置された。
c.平成12年11月より、本センター図書館内で初めてインターネット端末2台を利用者に解放した(その後急速にインターネッ ト環境の整備が進んで行くことになる)。
d.平成13年4月より、二次資料データベースをCD-ROM版からインターネット版に切り替えた。
e.平成11年9月に先行してリプレイスされた東京農業大学オホーツク学術情報センターの図書館業務システムと平成12年 10月に更新導入された本センターの図書館業務システムは、同系列の機種であるため、蔵書検索機能の統合が、平成 13年10月より実現した。これにより、東京農業大学のオホーツク学術情報センター及び厚木学術情報センターの蔵書も 含め横断的に検索することが可能となった。
f.平成13年10月より農大OPAC(図書館所蔵資料データベース)の学外公開を開始した。
g.平成14年4月より、図書館業務システムの中の雑誌システムを全面稼動させ、自動チェックインシステムを導入した。
h.平成14年10月に、本センター図書館内2箇所に学生が各自のパソコンを持ち込んでネットワーク利用できるITスタンドを 設置した。
i.大学全体としての全学ネットワークシステム更新プロジェクトに伴って、図書館においても平成15年9月に図書館業務用 クライアント端末の更新、図書館利用者用クライアント端末の更新と台数の増加を実施するとともに、電子図書館サー バの導入を実現した。なお、利用者用のクライアント端末には、Word、Excel、Access、Power Pointのソフトがインストー ルされた。従来は図書館の端末は蔵書検索のためというイメージが強く、図書館員側も蔵書検索最優先という意識が強 かったが、これにより、大学が学生のために用意する様々な情報へのアクセスポイントとしての端末が図書館にもあり、 その機能のひとつに蔵書検索機能もあるという考え方に意識転換するきっかけとなった。
j.平成15年10月より、電子図書館サーバを使用し、これまでに電子化してきた貴重資料、オリジナル資料の電子公開を、 図書館ホームページを介して開始した(一部については既にCD-ROMサーバを使って開始していた)。また、学内外の 農学関連情報を定期的に自動収集し提供する検索システムを稼動させた。
k.本センター図書館4階に新たにパソコンルームを開設し、インターネット接続端末16台を設置した。
l.平成16年8月より、図書館業務システムの機能を使って、利用者が自分の借りている資料の状況をパソコンから確認で きる「利用照会サービス」を開始するとともに、携帯電話から蔵書検索ができる「モバイルOPACサービス」を3キャンパス 共通で開始した。
m.平成16年11月より、Z39.50クライアント機能を使って、大英図書館、アメリカ議会図書館、UBC図書館の蔵書検索が3キ ャンパス共通で可能となった。
なお、現在の本センター図書館のシステム機器構成は下表のとおりである。
用途区分 |
機器種別 |
台数 |
利用者用 |
学生サービス用クライアント |
44 |
学生サービス用プリンタ |
6 |
図書館業務用 |
業務サーバ |
4 |
業務用クライアント |
21 |
業務用プリンタ |
8 |
事務用 |
事務管理用クライアント |
14 |
事務管理用プリンタ |
8 |
平成11年度に実施された東京農業大学オホーツク学術情報センターにおける図書館システムのリプレイス及び、次いで平成12年度に実施された本センター図書館における図書館システムリプレイスにより、図書館システムの機種統一が図られ、東京農業大学のオホーツク・厚木両キャンパスも含めた共通のサービス実現に向けたハード面での基盤整備が行われた。その後ソフト面では蔵書検索機能の統合が図られ、これを皮切りに、新図書館システムの機能を使って、各種利用者サービスの拡大を図ってきた。大きなコンセプトとしては、ネットワーク機能を駆使して、図書館の開館・閉館に関わらず、どこからでも電子的な利用サービスを提供することが挙げられる。この新図書館システムの導入により、確実に利用者サービスが拡大しており、そのリプレイスの時期及び機種の選択は効果的であったといえる。今後はスキルアップに努めるとともに、図書館システムSEとの連携を強化してネットワーク環境の整備が必要となる。また、今後も何年かおきに実施されるであろう図書館システムのリプレイスに際して、機種が大幅に変更となる可能性もあり、データ移行等にあたっても常に緊密な連携が必要となってくる。また、大学全体の基幹システムとの整合性も重要なポイントである。
一方、平成13年4月から、二次資料データベースをCD-ROM版からインターネット版に切り替えたことにより、共通の情報検索基盤が整備された。二次資料データベースは洋雑誌同様、価格の高騰が激しいので、利用状況を勘案した契約タイトルの見直しの必要性も出てくるであろう。
(8)図書館の地域への開放状況
従来は、原則として学外者には非公開というスタンスで、本学にしか所蔵していない資料に限って、図書館長の決裁で特別に閲覧を許可するという形をとっていた。しかしながら、大学の重要な使命の一つである「研究成果の社会への還元」をサポートする意味からも図書館の地域社会への開放は、大学図書館としても二の次にしてはいられない重要な課題になってきている。また、知的情報資源に触れる場として、地域社会が大学図書館に求めるニーズも高まってきているといえよう。このような状況を鑑み、平成14年4月より、これまでの「原則非公開」を「原則公開」とする大きな方針転換を行った。具体的な学外公開の内容としては、次の点が挙げられる。
a.社会一般に対する広義の農学分野の資料・情報提供居住地域は限定せず、広義の農学関連分野について調べ物をし たい方を対象に、資料の館内閲覧利用を可としている。その際は身分を証明する書類の提示を求めている。利用期間 は随時だが、定期試験期間や入試期間は除外している。
平成16年度の利用者数:119名(大学間相互協力及び卒業生を含む)
b.世田谷区民等に対する図書館を公開している。原則として15歳以上で世田谷区立図書館の「利用カード」を交付されて いる人及び本学エクステンションセンター受講生に、図書の館内閲覧利用を可としている。利用期間は原則として毎週 水曜日・土曜日。
平成16年度の利用者数:46名
c.夏季休暇中の高校生に地域は限定せず図書館の開放している。8月中の正味約15日間、学習場所としての閲覧室の利 用と資料の館内閲覧を可としている。
平成16年度の利用者数:12名
以上のように本センター図書館では、世田谷区民への公開実現など、ここ数年間でかなり地域開放が進んだといえるしかしながら学外公開にあたっては、今のところまだ館内閲覧に限り、資料の貸出を実現するまでには至っていない。
本センター図書館においては、その立地条件から、学外に対して全面開放した場合にかなりの来館利用が予想され、本来の学内向けサービスに支障を来たすのではないかとの懸念が依然として存在している。しかしながら、ここ数年の世田谷区民への公開並びに夏季休暇中の高校生への開放などの状況を見ると、それ程の懸念は必要ないようにも思える。ただし学外に対する全面的な開放のためには、施設面及び夜間・土曜日等専任職員が不在の場合、セキュリティ上の問題をクリアーする必要があるので、それらの課題を勘案し条件整備を行いながら、少しずつ利用範囲の拡大を図ってゆく必要がある。なお、過渡期の措置として、卒業生への対応については、学外者に対するよりも、よりきめの細かい対応の検討が必要である。
(9)国内外の他大学、他機関との協力
他大学、他機関との協力として、まず初めに挙げられるのは、国立情報学研究所が提供するNACSIS−ILLシステムを利用した図書館間の相互協力による文献複写の依頼・受付及び図書の現物貸借である。
以下に本センター図書館の過去3年間のILL依頼・受付状況を一覧表に示した(3キャンパス間のILLも含む)。
年度 |
学外文献複写依頼 |
学外文献複写受付 |
図書現物借受 |
図書現物貸出 |
平成14 |
2,338 |
4,452 |
― |
― |
平成15 |
2,172 |
4,384 |
21 |
31 |
平成16 |
2,291 |
4,833 |
88 |
59 |
自館にない資料の複写物を他館から取り寄せる「学外文献複写依頼」は、平衡状態を保って推移しているものの、自館の資料の複写物を他館に提供する「学外文献複写受付」は数も多く、増加傾向にある。学外文献複写業務は、依頼にしても受付にしても利用者が早く文献を手に入れたいと待っており、日々の着実な処理が要求されるため、件数の増加は直接図書館業務の負担増につながってくる。本センター図書館における学外文献複写の他大学への依頼がそれ程増えていないのは、自館にある学術雑誌およびそのバックナンバーで利用者のニーズがある程度まかなえているからであろう。今後の学術雑誌の所蔵のあり方(電子ジャーナルへの移行、製本の見直し等)は、このように学外文献複写業務にも大きな影響を与えて行くことになるであろう。
なお、平成16年4月より、従来国立大学間のみで実施されていたILLに関わる料金相殺制度が私立大学にも拡大して適用されることになったため、今年度よりこの制度に参加することとなった。これにより、従来は1件ごとに相手の図書館との間で料金のやりとりを行うため、図書館で現金を扱わなければならず、非常に煩雑な処理を伴っていたが、この制度に参加したことで国立情報学研究所が四半期ごとに各大学の依頼・受付の状況を集計し、依頼の方が多い債務超過の大学には請求書を送り、受付の方が多い債権超過の大学には超過分を振り込むという流れができ、1件ごとに料金を授受する必要がなくなった。またこの機会に本学では、ILLに関わる料金処理を経理課に移管することとなり、図書館で現金を扱う必要がなくなった。今年度から国立情報学研究所の料金相殺制度に参加した結果、多少とも業務の簡素化に繋がったことと思われる。
学外文献複写業務については、アウトソーシングを実現したり、検討している図書館もあるが、この業務を円滑に行うためには、自館の資料に精通している必要があるし、また他館の資料の収集状況等もある程度理解している必要があり、経験を要する業務でもある。今後人員増が望めない中での業務見直しに伴って、学外文献複写業務の位置づけをどのように置くか、十分議論・検討する必要がある。なお、学外文献複写依頼タイトルの統計を取って、自館にない資料で学外文献複写の依頼が多い資料については、自館での収集を検討するなどの措置も必要と思われる。
次に、他大学・他機関への紹介状の発行数について本センター図書館の状況を一覧表に示した。
年度 |
紹介状発行数 |
平成14 |
50 |
平成15 |
56 |
平成16 |
48 |
他大学、他機関との協力で次に挙げられるのは、地域的なつながりによるコンソーシアム等への参加である。本センター図書館においては平成13年12月に世田谷キャンパスが、国士舘大学、駒沢大学、昭和女子大学、成城大学、武蔵工業大学との間で、「世田谷6大学コンソーシアム」の基本協定を結んだことを受け、その中に図書館相互利用専門委員会が設置され、相互協力のあり方について検討して行くこととなった。これまでに専任教員と大学院生の館内閲覧利用を実現している。また、平成16年4月より東京都私立短期大学協会加盟短期大学の学生並びに教職員の相互利用を行う「東京都私立短期大学協会コンソーシアム」にも参加している。
今後は地域的なコンソーシアムだけではなく、例えば電子ジャーナルの共同契約のためのコンソーシアムなど、目的に合わせたコンソーシアムへの参加が増えてくることが予想される。単独契約とコンソーシアム契約のメリット・デメリットを十分検討し、予算的なメリットがあるものには、積極的に参加する姿勢が必要となるであろう。
一方国外の大学との相互協力関係は今のところ構築されていないが、今後海外の姉妹校図書館との連携を構築する必要がある。なお、本センター図書館で編集・発行業務を行っている本学の紀要「東京農業大学農学集報」は国内440機関、国外169機関に配布され、海外の貴重な資料との交換対象になっている。しかしながら農学集報については、本来資料の交換を目的として国内外の大学・研究機関に送付しているが、実際に交換が行われている資料は数少ないのが現状であり、厳しい予算状況の中でも見直しが必要となっている。今後は電子媒体での出版公開に切り替えてゆく方向の検討が必要であり、論文の著作権が本学の学術雑誌編集委員会に帰属することとなった平成12年度以降については、電子化の条件が既に揃っている。もう一つは今後大学の紀要としての位置づけを維持して行くか否か、また維持して行くとなれば、どのような編集方針とするか、実践総合農学会誌との関係をどのように考えるか、編集委員会の事務は本センター図書館に置くことが適切か等、根本的な議論が必要となっている。
なお、上記以外に本センター図書館では、農学系の情報を扱う専門団体として日本を代表する「日本農学図書館協議会」(以下農図協)の会員となっており、今後連携を深めて行く方針に基づいて、現在農図協の事務局を本学図書館内に設置している。