小島 弘昭 (教授・博士(農学)


Katsurazo flabellicornis(ゾウムシ科)
<プロフィール>

<研究テーマ>

ゾウムシ類を中心とした植食性甲虫の総合的研究(Integrated Studies of the Phytophagous Beetles, Especially Weevils

  分類,形態,生態,系統進化から潜在害虫,益虫の探索,害虫防除まで

応用昆虫体系学(Applied Insect Systematics

  害虫防除、益虫利用に体系学の成果を応用!

林冠昆虫学(Canopy Entomology

  林冠は深海とともに地球上最後の未開拓地!新発見、新種発見の連続!!

農業生態系の昆虫多様性に関する研究(Insect Diversity in Agro-Ecosystems

・島嶼部の昆虫相に関する研究Insect Fauna of the Islands

 

左:Cercidocerus indicator(オサゾウムシ科); 右:Ithycerus noveboracensis(広義のミツギリゾウムシ科)

 

<自己紹介>

 学部時代にゾウムシ(甲虫目:ゾウムシ上科)を研究材料として選んで以来,これまで一貫してこの類の分類をベースとした総合的自然史研究に取り組んできた.ゾウムシ上科は,生物界最大の分類単位であるゾウムシ科を含み,現在知られているだけでも6万種,推定種数は少なく見積もっても20万種以上と言われている超巨大分類群である.また,植食性であることから,農林業上重要な害虫から,雑草の生物的防除,花粉媒介に用いられる益虫にいたるまで,経済的,応用的に重要な種が多く含まれる.膨大な種数を含むゾウムシ類について,イギリス,ドイツ,カナダ,アメリカ,南米,オーストラリア,アフリカなど世界各地の研究者と連携し,世界のゾウムシ相を解明しようという,21世紀の多様性生物学,あるいは分類学最大のチャレンジテーマに取り組んでいる.私の担当は,おもにアジア-太平洋地域であるが,高次レベルでの関係を調べる際などは,世界的視野に立った材料の検討も行っている.また,ゾウムシ類は,植物と密接に関係しながら進化してきたグループで,ゾウムシ-植物の相互関係にも深い関心を持ちつつ研究を進めている.

 これまで,日本国内はもとより,東南アジアを含む東アジア各地に出かけ調査を行い,有用植物の送粉者などを含む多くの新種や新属を発見記載し,擬態やカムフラージュに関する新たな知見を見出すなど,この地域のファウナの解明に貢献してきた.また,ゾウムシ類の進化を考える上で重要な特徴が含まれる頭部形態の詳細な観察からこの類の系統仮説と高次分類体系について,これまでの常識を覆す仮説を森本桂博士と提唱するなど,詳細な比較形態学的研究に基づく,系統仮説や新たな高次分類体系の提唱といった分類体系の整備につながるインパクトのある仕事を行うよう心掛けてきた.今後は,さらなる視点からの比較形態学的研究や分子データを利用したゾウムシ上科の体系学的研究,体系学の成果を害虫防除などへ応用する応用昆虫体系学にも取り組んでいく.

 アジア地域の材料を主に研究していることと,膨大な種数を含む分類群を扱っていることから,日華系生物群の起源と進化,林冠昆虫相の多様性,島嶼部の昆虫相にも興味を持っており,林冠研究については,最新の調査法であるフォギング法をはじめ,各種トラップを用いた調査研究に取り組んでいる.日華系生物群についても,ツツジ科やツバキ科植物を寄主とするハモグリゾウムシ類の分類と生態,日華系の延長と思われる北半球温帯の隔離分布,熱帯を挟んだ北半球と南半球の温帯の隔離分布などを示す分類群の分類,系統,生物地理について,寄主植物の利用様式などと絡めた研究をスタートさせる予定である.

 また,水田を中心としたアジアの農山村における昆虫類の多様性に関する調査研究や伊豆諸島,南西諸島をはじめとする国内島嶼部の昆虫相に関する調査研究も行っている.

    

左:フォギング法による林冠調査(和歌山県)
中:気絶して落ちてきた昆虫を受け取るトレイ(福岡県)
右:地上30mのキャノピーウォークウェイにつり下げた訪花性昆虫の誘因トラップ(ボルネオ・ランビル国立公園)

<進行中のプロジェクト> 

・ゾウムシ上科の分類学的,系統進化学的研究

 日本産ヒメゾウムシ亜科のモノグラフ(吉原一美氏との共同研究)

 アジア—太平洋地域のクチブトゾウムシ族(一部,養老孟司氏との共同研究)

 世界のオサゾウムシ科の分類と系統進化(一部,Chris Lyalとの共同研究)

 ハナゾウムシ類(’flower weevils’)の分類,系統,生物地理

日本産ゾウムシデータベース(小檜山賢二氏,森田正彦氏との共同研究)

・原始的な植物における訪花性甲虫相の多様性と寄主利用の進化,有用送粉者の探索(科研・代表)

・ゴンドワナ起源の陸塊に隔離分布する食材性昆虫類の分子に基づく系統生物地理学的研究(科研・分担;荒谷邦雄氏らとの共同研究)

・アジア産農林害虫・有用昆虫の種情報の体系化・ネットワーク化と分散検索システム(科研・分担;多田内修氏らとの共同研究)

・昆虫相から見た里山の環境評価(学内プロジェクト研究・分担)

・北陸地域の中山間地の集落における指標生物の選抜(農水プロジェクト研究「農業に有用な生物多様性の指標及び評価手法の開発」・分担)

・熱帯アジアの農業生態系で有用な天敵昆虫資源の探索(科研・連携)

・伊豆諸島の甲虫類の種および遺伝的多様性の解明とホットスポットの推定(科研・代表)

・急速な農耕地拡大で絶滅が危惧されるベトナム・ラオスの天敵・中立昆虫相の解明(科研・連携)

 

ゾウムシ上科の系統進化と寄主植物との関係(小島,2004)

<計画プロジェクト> 

・水生雑草の生物的防除資材として有望な水生・半水性植食性甲虫の探索・利用

・水生・半水性ゾウムシ類の分類と生態

・シュロゾウモドキ族 Metrioxenini(アケボノゾウムシ科)の分類と生態

・旧世界のクモゾウムシ亜科の分類と日本産種のモノグラフ

・土壌性アナアキゾウムシ亜科の分類(おもに日本産)

・マイクロネシア,ポリネシアのゾウムシ

・キクイムシはゾウムシか(科)?

・食材性ゾウムシ類の分類と生態

・日本産ゾウムシ大図鑑

 

研究業績については研究者シーズをご参照ください。

  60mタワーテラスでの林冠昆虫調査(ボルネオ・ランビル国立公園)

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