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トカラ列島採集記 後編

前編(奄美・宝島編)はこちら

博士前期過程2年 寺井純汰

※本調査は十島村役場の許可のもと行いました※

トカラ列島採集記後編(悪石島、中之島編)は寺井がお届けします。
私は前編の林と同じくゴキブリが専門であるため、ことあるごとにゴキブリの写真が出現します。ご容赦ください。

5日目

宝島→悪石島の移動日である。
午前4時起床。眠い、眠すぎる。
日付が変わるくらいまで採集を行なっていたのでろくに寝られていない。
しかしフェリーの時間が迫っているため速やかに港へ向かう。

宝島港は午前5時10分出港である。余裕で暗い。

朝焼けの中の子宝島

午前7時、悪石島着。港のすぐ近くまで山が迫っており、平らな地形はほとんどない。
宝島とは全く違う様相を呈していた。

悪石島港

宿関連の手続きを済ませ、軽く島を回った後に採集を行なった。

 

この島における最大の狙いはアカボシルリゴキブリである。
この種を奄美大島で採集するのはかなり骨が折れたが、
この島では個体数が多いのかあまり時間をかけなくても得られた。

トカラヤギ
個体数はかなり多く、採集していると近くでガサガサ歩く音がしたりする。気が散る。

ミナミイシガメ
移入種である。

夜間はルッキングでゴキブリを探した。
宝島と異なり、サツマゴキブリが非常に多いことが印象的だった。

マダラゴキブリ
時期から外れていたのか、成虫で見られたのはこの1個体のみだった。

サツマゴキブリ
無数にいた。

ツヤアカゴキブリ
赤みがかった体色が非常に美しい。

こうして私がゴキブリ採集をしている間に、同行者たちはなんとクロマルカブトを採集していた。
ずるい!翌日もその場所へ行く約束を取り付けた。

6日目

悪石島最終日である。昨日とは別のポイントで採集を行なった。
悪石島にいそうだと考えていたゴキブリは前日に概ね採集できていたため、個体数を稼ぐことを目指した。
私はアカボシルリゴキブリを狙って採集をしていたのだが、あまりとれなかった。
全くとれないことはなかったのだが、同行者がとれている中で思うようにとれなかった。
そこに林からの「見落としているんじゃないですか?」という言葉が追い討ちをかける。辛い。
夕方まで粘っていたら、嶋本先輩が何頭か譲ってくださった。大変ありがたかった。

林内
ビロウの多さが特徴的だった。


島はリュウキュウチクだらけである。

港で食べたお弁当

夜間は約束のクロマルカブト採集へ。草地に多くの個体が見られた。満足である。

7日目

悪石島→中之島の移動日である。船の出港は午前7時である。
宝島の午前5時に比べれば楽であるが、眠い。
今までの遠征は夜間採集中心だったから早起きなんてしたことなかった…。

狭そうな港内でも器用に転回していたフェリーとしま

平島

諏訪瀬島

中之島
トカラ列島最高峰の御岳が目を引く。

宿にチェックインし、採集へ向かう。今までの宿とは異なり、洋風のコテージ風の宿であった。

採集は島の外周を通る林道付近で行なった。
島の環境は今までの島とはまた異なり、照葉樹林が多く、林床や葉上のゴキブリの採集はしやすかった。
ウスヒラタゴキブリやサツマツチゴキブリなど、
今までの島でも見られた種ばかりであるが、短時間で多くのゴキブリが採集できた。


底なし沼
(本当にそういう名前)

 

夕食
非常に美味しかった。

ゴキブリ採集の本番は夜間である。
ということで意気揚々と夜間の林道に繰り出していったのだが、
サツマゴキブリ以外のゴキブリがほとんど見つからなかった。


無数にいた。

環境はかなり良い雰囲気だったが、サツマ以外のゴキブリがほとんど見つからなかった。
少し寒かったのでその影響もあるかもしれない。心も寒い。諦めて寝た。

8日目

午前中から採集を行なったが特筆すべきものはとれなかった。
その後、トカラ列島最高峰である御岳へ登った。

トカラ馬

噴火する諏訪瀬島
かなりの頻度で噴火しており、皆で驚いていたが島民曰く普通に起こることらしい。

御岳は頂上の近くまで車で登ることができる。
しかしかつて階段等で整備されていたと思われる登山道は中央までびっしりとリュウキュウチクが生えており、
行く手を阻まれながらの登山となった。今回の調査で最も体力を消耗したのは言うまでもない。

御岳の登山道
写真中央にある階段の枕木が見えるだろうか。

その代わり?か山頂の景色は圧倒的な素晴らしさで、竹藪に揉まれて疲れきった我々の心身を癒してくれた。

山頂は岩場と草原である。

天気が非常に良く、口之島の奥に口永良部島や屋久島が見えた。

下りは登りと比べて遥かに楽だった。

最後の夜間採集を終えた後のお酒は格別だった。


晩酌中に撮影した星空

9日目

最終日である。
フェリーとしまの出港は午前10時30分である。
楽勝だぁ!
のんびりした朝は宝島の5時発、悪石島の7時発を乗り越えてきた我々にとってのご褒美になった。
行程はおよそ8時間である。私はのんびりとくつろげる船旅が非常に好きなので、
今回の調査における密かな楽しみであった。

先輩から頂いた黒糖焼酎
さんぴん茶で割るのは初めてだったが、まろやかな味であり非常に美味しかった。

こうして、私にとってはかなり久しぶりかつ最長期間であった遠征調査が終わった。
感想としては、やはり長かったということがある。
日程が長いのに加えて、奄美大島、宝島、悪石島、中之島と周った島の数も多いため内容も濃く感じた。
しかし終わってみると寂しいもので、長かったような、短かったような、複雑な感情が生まれた。
また行きたいな。

鹿児島港

おわり

バナースペース