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秋のトカラ遠征(奄美・宝島編)

修士1年 林幸希

※本調査は十島村役場の許可のもと行いました※

ここ数年行きたいと切望していたトカラ列島についに行けることになった。

メンバーはD2の嶋本さん(専門:カメムシ)、M2の寺井さん(同ゴキブリ)、
私(同ゴキブリ)、B4の松田くん(同カメムシ)のカメムシ&ゴキブリ組4人だ。

今回の遠征は奄美から入って宝島、悪石島、中之島と徐々に北上し最後に鹿児島から帰るルートで計画を立てた。
ついでに奄美でもちょこっと採集して、奄美では滞在せずそのまま宝島へ向かう予定を立てていた。

しかし、ハプニングは初日から始まる…

1日目

「明日の名瀬便は出港しません。」

…宝島に向かうフェリーの乗船券を買いに来て聞いた最初の言葉だ。耳を疑った。
どうやら先週の台風の影響でフェリーの運行に遅れが出ているらしい。
幸い、その翌日に出港するとのことで、予定に1日ズレが生じただけで、
予定していた島に行けなくなるなるほどのものではなかった。
しかし、明日(深夜2時)に出る予定だったので今夜泊まる宿をとっておらず、
パニックになったが、寺井先輩が以前奄美で泊った宿がたまたま空いており、当日予約でなんとか事なきを得た。

宝島に行くまでの準備を整えたので、早速奄美で採集を行なった。

サツマツチゴキブリMargattea satsumana

この時期の南西諸島の林床を覗けばまず見られるゴキブリである。
自分が現在メインで研究を行なっている種なので、今回も普通にいるようで安心した。
秋から冬前に羽化する種で、この個体は終齢幼虫である。

タカサゴキララマダニ

サツマツチゴキブリが採れた林床と同じところにいた。
自分は、ゴキブリは大好きであるが蜘蛛やダニはあまり得意ではないので、見かけると結構萎える。

 
 

直翅がたくさん見れた。

緑色のタイワンクツワムシ

タイワンクツワムシの緑色型なんているの!?新発見では!?
と一瞬盛り上がったが、探してみると結構出てくる。
調べてみたら羽化直後は緑色で時間が経つと褐色になるらしい。残念。
おそらくこの時期に羽化したからたくさん見れたのだろう。

明日も奄美で採集できる予定になったのでこの日は余裕を持って早めに引き上げた。

2日目

採集ポイントに着いた途端もの凄い雨が降っていた。
しかし、前日そこまで大した成果を得てなかったのもあり、居ても立っても居られず、
雨の中飛び出して採集をした。松田もそれについて来た。
先輩二人は雨が止むまで車で待機していたが、結果としてすぐに止んだのでそれが正解だったのだろう。

リュウキュウクチキゴキブリ Salganea taiwanensis ryukyuanus

奄美の材割りでは結構な頻度で見ることができるゴキブリ。
亜社会性で、最近つがいが互いに翅を食い合うという論文が出て盛り上がっているゴキブリである。

チビゴキブリ Anaplectella ruficollis

採れると思ってなかったゴキブリ。
本種は奄美から八重山まで分布しているが稀な種で、採集した話をあまり聞かない。
これが採れただけでもフェリーの予定がずれてしまった分を取り戻せた気がする。
自分は以前石垣でも本種を採集しているが、今回の経験と合わせて、
こいつの好む環境が分かってきたような気がする。

オオシロアリHodotermopsis sjostedti
(A. 兵アリ,B. 働きアリ,C. タカサゴシロアリ兵アリ)
比較用に昔採ったタカサゴシロアリを入れてみた。

今回の遠征で初めて見た(気がする)。あまりに大きくてビックリした。
そしてなによりすごいと思ったのは、材を壊して巣が丸見えになった当初はうじゃうじゃとうごめいていたのに、
あっという間に奥の方に隠れて外から姿が見えなくなったことである。あんなに大きいのにすごい。
ちなみに上記のチビゴキブリは本種の巣内から得た。

孵化したてと抱卵していたジムカデがいた。
オオムカデ類がこのように抱卵するのはよく見てきたが、ジムカデでは初めて見た。

明日から始まるトカラに向けて腹ごしらえ。
トカラ列島には飲食店が無いので今のうちに食べたいものを食べておく。

フェリーとしま2

これからの遠征でしばらくお世話になる船。
出航は深夜2時だが、前日の18時から乗船できる。
ただし、21時には施錠されるので早めに入っておくのが良い(当日の1時からまた乗れるようである)。
今回はギリギリまで採集していたため、21時ギリギリに着いた。

3日目

朝5時に着いた。奄美から宝島の距離だとたった3時間で着いてしまう。とても眠い。
宝島の宿の予約は残念ながら2人分しか確保できず、
残りの2人はコミュニティセンター(通称コミセン)に泊めていただけた。
宝島は2日間あるので入れ替わりで泊まることにした。
この日は自分と寺井先輩がコミセン、松田と嶋本さんが宿に泊まる。

宝島のコミュニティセンター(コミセン)

まだ早朝なので、コミセン組も宿組も朝ごはんを食べてから二度寝。
ちなみに宿では食事が出るがコミセンでは出ない。
また、売店もひとつしかないので事前に持ち込んでおくことが無難である。

自分たちがカップラーメンをすすっている間、向こうはこんな朝ごはんを食べていたらしい。羨ましい。

早速宝島で採集だ!!!
とりあえず外周をぐるっとまわって環境を見てみることにした。

良い景色だ。

牧場も広々としていて牛も気持ちよさそうだ。

 

ウバタマムシ 何故かたくさんいた。

後で知ったことなのだが、ここに分布しているのは宝島と小宝島のみにいる固有亜種らしい。
7月にもタマムシ専門の佐伯先輩がここに来ているのだが、その時には全く見られず、
そもそも松が見渡す限り全てが枯れているのでもういないんじゃないかと思われていたらしい。

そんなことは露知らず、こんなにたくさんいるなら絶対佐伯先輩も取っているだろうと思い込んで、
数匹つまんだ程度でリリースしたが、後で「もっと採ってきてよ!!」と軽くお叱りを受けた。報連相は大事。

観音洞

宝島はサンゴ礁の隆起で形成された島であり、こういった島は洞窟が沢山存在する。
この観音洞はその中でも最大の洞窟である。
宝島の名前の由来は昔、海賊がここにやってきて宝をここに隠したことだとされている。
実はここでホラアナゴキブリを採集したという報文が出ている。

ホラアナゴキブリという名の宝、是非採りたい。

洞窟内には謎のモリゴキブリの若虫が!!!!

洞窟のモリゴキブリと言えば、ミヤコモリゴキブリやエラブモリゴキブリなどの超珍品を連想するが、
この幼虫は探すと結構出てきた。なんなら洞窟の外でも採れてしまった。

最初の一匹はもしや!!と興奮したが出れば出るほどその興奮は薄れていった。
寺井先輩はまだとんでもないやつの可能性があると言っていたが自分は過度の期待はしないでおく。
キスジやキチャバネ辺りの若虫だろうと推測するが、ゴキブリは若虫時点で同定できないことが多く、
この種もそういった類のものなので、持ち帰って飼育してみることにした。羽化してくれ。


海がめちゃめちゃ綺麗なのもサンゴ礁の隆起で形成された島の特徴だ。
こういった特徴は島の出き方が同じ宮古島と一致していて面白い。

松田と嶋本さんはとても入りそうにしていた。

 

林内に入るとトカラハブが!!!!

宝島、小宝島の固有種である。
毒性はホンハブより弱いらしいがかなりの数を見たので林内に突っ込むのが中々怖かった。
写真を撮ろうとして近づくと飛び跳ねてくるのでかなり攻撃的である。

ハネナシコロギスが交尾していた。

4日目

既にメインで採りたいものは3日目に大体採れたので、
まだ採れてないものを回収しつつ洞窟探索に重点を置いた。

ホラアナゴキブリはまだ採れない。

宝島は小さいので各々行きたいとことまで歩いて採集した。
嶋本さんは歩いて女神山に登ったようだ。すごい。

前述した通り、宝島に存在する洞窟は観音洞だけではない。
報文には洞窟の場所が書かれた地図も載ってはいるが、
いざ照らし合わせて行ってみても自分で見つけるのは中々難しい。
こういう時は島民に聞くのが一番である。

宿のおばちゃんから聞いた洞窟に入ってみると中々良い洞窟ではないか!
これはいるぞ!ホラアナゴキブリ!!

と意気込んで探してみるも…

またお前か…
ゴキブリはいるがホラアナはいない。

いかがわしい形の鍾乳石(石筍)

オオゲジだ。
先ほど蜘蛛が苦手な話をしたが、オオゲジも正直苦手だ。
というか洞窟にいるやつに限ってめちゃめちゃデカい。
この個体も冗談抜きで20cmはあったはず。
狭い洞窟という環境でこんなデカいのが現れたら本当にビックリする。
特に、2,3mmの小さい虫を探してる時は…

洞窟の入り口で寝ていた。

先輩はトカラマダラゴキブリの成虫を採っていた。
自分は幼虫しか採れなかったので羨ましい。
結局宝島でホラアナゴキブリを採集することは叶わなかった。
しかし、ゴキブリだけでなく色んな宝を手に入れたような気がする。

後編(悪石島・中之島編)へつづく…

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