・図書、学術雑誌、視聴覚資料、その他教育研究上必要な資料の体系的整備とその量的整備の適切性
【現状】
(1)資料の収集方針及び収集・受入れの方法
(図書資料)
基本的には本学が教授する学問分野である広義の農学関連諸分野の専門図書を中心に収集を行っているが、入門書的な図書や一般教養的な図書についても受け入れを行っている。学術情報センターの予算で購入する図書及び各部局の実験実習費で購入する図書については、原則として学生(大学院生を含む)の利用に供する資料を主体に選定し、教員の研究用図書については、個人研究費で購入することとしているが、現実的にはその境界を定めることは難しく、金額の高低で判断せざるを得ない面があることも事実である。なお、授業に直接関連して教員が指定する「指定図書」など利用期間が限定される図書やマニュアル本など内容の改訂が頻繁な図書などについては、資産計上せず消耗品費で購入している。
学術情報センターで受け入れる図書の選択方法は複数あり、各センターで共通する部分も多いが、それぞれにおいて特色ある選書方法を取り入れている。世田谷学術情報センター図書館では、各学科・課程から選出された委員が書店の持ち込んだ図書の現物に付箋を入れて購入図書を決める「見計らい選書」を中心に選択を行っている。また、オホーツク学術情報センターではTRC新刊情報をもとに、図書情報部会委員の協力のもと選書を行っている。一方、厚木学術情報センターでは世田谷の「見計らい選書」に参加すると共に、特定分野の出版リストの中から学生が本を選ぶ「学生選書」を取り入れている。この他各センター共、学生・教職員からの「希望図書」を随時受け付け、余程高額な図書でない限りは購入している。なお、世田谷学術情報センター図書館では都道府県史や大学史関係の資料の収集、江戸期・明治期の農書の収集、などが特徴として挙げられる一方、オホーツク学術情報センターでは北海道関係の基本資料の充実などが特徴として挙げられる。また厚木学術情報センターでは農場に隣接したキャンパスの特徴を活かして、農学関係の基礎資料を収集すると共に野外実習・観察等で使う携帯用の動植物図鑑などの充実も特徴として挙げられる。
図書のデータ入力・管理については、国立情報学研究所の目録所在サービスである「NACSIS−CAT」に参加し、国立情報学研究所の目録に準じて本学の所蔵目録(OPAC)を作成しているが、世田谷学術情報センター図書館では「見計らい選書」の結果購入が決定した図書を中心に受入図書の一部について、また厚木学術情報センターでは受入図書のほとんどについてデータ入力作業を外部委託化している。なお、世田谷学術情報センター図書館では受入番号の古い図書データの遡及入力がまだ一部残っている。
一方、図書は利用者の利用に供するために収集されるものであり、形あるものである以上、利用の過程で紛失や破損などが生じ、利用に供せない状況となり得ることは当然のことである。また記載内容が改訂されて利用価値を失った資料が存在することもまた事実である。そこで、本来定期的な蔵書点検が必要であると共に、その結果を受けて「図書の補填」又は「補填しない(できない)場合の登録抹消(図書の除籍)」が必要となる。本学においては、長い間図書の除籍基準が定められていなかったことから、これまで戦災により焼失した一部の図書等を除いて、除籍処理がなされてこなかった。しかしながら利用者サービス上の問題(データ上は存在するが実物の図書は存在しない)及び収蔵スペース上の問題(利用価値を失った図書が書架の一部を占めることにより、有効利用スペースを狭めている)から、図書の除籍は急務であるため、平成16年度より3キャンパス学術情報センターで協議して、図書除籍取扱要領を策定し、今後計画的に必要最低限の除籍処理を実施して行く所存である。
(学術雑誌資料)
学術雑誌についても、広義の農学関連諸分野の資料を中心に冊子体の和雑誌・洋雑誌を継続的に収集している。しかしながら最近の厳しい予算状況の中では、特に洋雑誌の値上がりに予算措置が追いつかず、3、4年に一度の割合でやむを得ず購入費を予算内に納めるための洋雑誌の継続見直し(継続取り消し)を行わざるを得ない状況にある。その際は、各学科・課程にアンケートを行って、各タイトルの必要度の調査を行うと共に、タイトルごとの利用状況も勘案した上で、継続取り消し対象タイトルをリストアップし、最終的に運営委員会の承認を得て実施している。なお、学術雑誌は原則として1月〜12月が各巻の出版サイクルとなっており、特に洋雑誌では1月号から安定的に入荷させるために、10月中に翌年1〜12月分の契約を交わし前払い金として出版社に支払う商習慣がある。そのため前年度予算に前払金支払支出として予算計上する必要があると共に、為替の変動の影響を直接受けることから予算処理を煩雑にしている面がある。この前払い契約は、従来キャンパスごとに行っていたが、平成16年度より購入タイトル数の一番多い世田谷学術情報センター図書館で契約の一括とりまとめを行うことにより、スケールメリットが出て代理店の手数料が下がった結果、契約金額を安く抑えることができた。また、学術雑誌は、逐次刊行物であることから、巻ごとに製本して保存に供しているが、収蔵スペースの狭隘化の問題や予算上の問題(製本費が発生)もあり、世田谷学術情報センター図書館では平成16年度より製本業務見直しの第一歩として、寄贈雑誌について@今後も製本保存を行うものA電子媒体が発行されるまでは製本保存を行うが、電子媒体に移行後は製本保存を中止するものB電子媒体の存在にかかわらず製本保存を行わないものに分類し、製本保存を行わないものについては、一定期間(5年間)未製本の状態で保管後、廃棄する方針を立て、運営委員会で了承された。一方、電子ジャーナルについては、現在購入契約しているタイトル数葉2タイトルと少ないが、冊子体購入の副産物として無料でアクセスできる電子ジャーナルは極力閲覧できるようにホームページ上にリンクを作成している。
学術雑誌の範疇に入る資料として、二次資料がある。二次資料は書誌や索引誌などの総称で、一次資料である図書や学術雑誌そのものを探すための資料であるが、以前は冊子体が主体であった。しかしながら記載データ更新の即時性が特に求められる資料であることから、現在では電子媒体が主流となっており、一般にデ−タベースと称している。本学においても平成8年度前後から冊子体二次資料の購入を順次中止してCD−ROM版のデータベースに切り替え、平成13年度からインターネット版のデータベースを3キャンパス共通のネットワーク上で提供している。また最近は、その他にも電子媒体(CD−ROM版等)の資料が増加しており、随時受け入れを行って、センターごとに、センター内のパソコンで利用提供している。
(視聴覚資料)
視聴覚資料については、世田谷学術情報センター図書館において農林業関係・明治期からの府県別統計書関係・明治期の国会図書館蔵書関係等のマイクロ資料を所蔵しているが、予算面での制約もあり、今後積極的に受け入れを行う方針は今のところない。ただし、後述するオリジナル資料・貴重資料電子化の過程で、長期間の保存に耐えうる媒体として、資料のマイクロ化を実施しているので、その分については今後も増加して行く予定である。また本学図書館の特徴として昭和35年から組織上視聴覚係(その後変遷を重ねながら視聴覚部として定着するが、平成16年度からの組織改変に伴って部としては廃止となり、視聴覚業務の一部は「食と農」の博物館に移行することとなった)を置いて、視聴覚資料の収集・制作および関連技術の提供サービスに力を入れてきた経緯があり、教材用のスライドや自主制作の映画原版等についても多数所蔵している。これら現在の収蔵資料については継続して管理・運用を行うが、媒体の変化や時代の変化および図書館業務自体の変化に伴って、今後新たに受け入れを行う予定はない。次いでビデオテープについては担当教員からの希望を受け入れると共に、本学の教育・研究分野に関連の深い内容の資料を厳選し、授業等の副教材として収集している。なお、世田谷学術情報センター図書館では、従来娯楽的な観点からの資料収集も行っており、映画関係のビデオテープ、レーザーディスクを多数所蔵しているが、現在はその方針での収集は行っていない。また音声テープについても、媒体の変化などにより、利用はほとんどなく、今後新たな受け入れを行う予定はない。
一方、オホーツク学術情報センターにおいては、自学及び生涯学習用として利用度の高い放送大学関連の視聴覚資料の充実を図ると共に、DVDタイトルの充実にも努めている。
(2)図書、資料の収蔵数と資料費予算
平成15年度末における各学術情報センターの図書、資料の所蔵数は別表41の通りであり、3キャンパス全体で図書691,549冊(実験実習費で購入した部局長期貸出図書を含む)、学術雑誌(定期刊行物)2,777種類、視聴覚資料6,455種類等を所蔵している。また、別表42に過去3年間の図書受入状況を示してあるが、1年間の受入冊数は厚木学術情報センターでは約2,000冊、オホーツク学術情報センターでは約3,000冊とほぼ平均的に推移している。一方、世田谷学術情報センターでは、この3年間に年間受入冊数が約8,000冊から5,000冊へと大幅に減少している。これは後述する厳しい予算状況から、図書費を削らざるを得なかったことが最も大きな原因であるが、各学術情報センターにおける選書方法の違いにも一部起因するものと思われる。
次に各学術情報センターの過去5年間の予算状況を以下に示した。
<世田谷学術情報センター図書館(部局予算を除く)>
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総予算(円) |
資料費予算合計
(総予算に占める%)
|
図書費予算内訳(円) |
雑誌資料費予算内訳(円) |
平成11年度 |
187,743,000
|
113,204,000
(60.3)
|
46,988,000
|
66,216,000
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平成12年度 |
181,401,000
|
121,408,000
(66.9)
|
47,000,000
|
74,408,000
|
平成13年度 |
179,273,000
|
114,849,000
(64.1)
|
39,000,000
|
75,849,000
|
平成14年度 |
179,048,000
|
121,157,000
(67.7)
|
38,500,000
|
82,657,000
|
平成15年度 |
176,948,000
|
120,252,000
(68.0)
|
32,500,000
|
87,752,000
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※資料費予算には消耗品費での購入分は含まない。
※雑誌資料費の中にはデータベースを含む。
<オホーツク学術情報センター(部局予算を除く)>
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総予算(円) |
資料費予算合計
(総予算に占める%)
|
図書費予算内訳(円) |
雑誌資料費予算内訳(円) |
平成11年度 |
31,500,000
|
14,200,000
(45.1)
|
5,500,000
|
8,700,000
|
平成12年度 |
31,180,000
|
14,970,000
(48.0)
|
5,800,000
|
9,170,000
|
平成13年度 |
31,700,000
|
14,900,000
(47.0)
|
6,700,000
|
8,200,000
|
平成14年度 |
31,260,000
|
14,750,000
(47.2)
|
6,550,000
|
8,200,000
|
平成15年度 |
30,380,000
|
16,600,000
(54.6)
|
8,300,000
|
8,300,000
|
※資料費予算には消耗品費での購入分は含まない。
※雑誌資料費の中にはデータベースを含む。
<厚木学術情報センター(部局予算を除く)>
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総予算(円) |
資料費予算合計
(総予算 に占める%)
|
図書費予算内訳(円) |
雑誌資料費予算内訳(円) |
平成11年度 |
31,357,000
|
20,200,000
(64.4)
|
20,000,000
|
200,000
|
平成12年度 |
39,280,000
|
20,733,000
(52.8)
|
17,000,000
|
3,733,000
|
平成13年度 |
37,902,000
|
19,849,000
(52.4)
|
16,000,000
|
3,849,000
|
平成14年度 |
38,127,000
|
20,092,000
(52.7)
|
16,000,000
|
4,092,000
|
平成15年度 |
36,426,000
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19,298,000
(53.0)
|
15,000,000
|
4,298,000
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※資料費予算には消耗品費での購入分は含まない。
※雑誌資料費の中にはデータベースを含む。
世田谷学術情報センター図書館では、この5年間で総予算が10,795,000円減少(5.7%)したが、逆に資料費予算(消耗品費での購入分を除く)は7,048,000円増加(6.2%)している。これは学術雑誌(特に洋雑誌)の誌代高騰の影響によるもので、資料費の内訳を見てみると図書費は逆に14,488,000円も減少しており、総予算減少の中で学術雑誌の値上がり分を図書費で補填せざるを得ない構図がはっきりと現れている。そのため、見計らい選書の回数を年間8回から5回に減らしている。また、図書と学術雑誌の予算配分比率(概算)について見ると、平成11年度には図書4:学術雑誌6であったものが、平成15年度には図書2.5:学術雑誌7.5となっており、益々資料費の中で学術雑誌(データベースを含む)の占める割合が増加する傾向を示している。
次にオホーツク学術情報センターでは、この5年間、総予算はほぼ31,000,000円前後で推移しており、図書費予算と雑誌資料費予算もほぼ均衡を保って推移している。なお、オホーツク学術情報センターでは資料費の財源として北海道からの助成金を活用するなどして、限られた予算をできるだけ資料費に向けるように努力してきた。
また厚木学術情報センターは、平成10年度に図書館分室として開設され、開設直後の重点的資料整備のため、初年度は20,000,000円の図書費が計上された。その後も重点的資料整備の方針が継続され、図書費の一部を雑誌資料費に振り向けたものの、資料費全体としてはほぼ毎年同額で推移している。また、それ以外に消耗品費での購入図書予算も一定額確保し、学生の利用に直結した図書の整備を図っている。
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