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学校法人 東京農業大学

新・実学ジャーナル 2025年10月号

新・東京情報大学長 就任インタビュー

「情報」×「看護」で育む、未来を切り開く挑戦力

開学から37年目を迎えた東京情報大学に新たな学長が就任いたしました。
吉本博明学長就任にあたっての意気込みやここでしか聞けないようなお話を伺いましたので是非ご覧ください。  

―学長就任にあたって率直なお気持ちをお聞かせください。

日本で最初に「情報」を大学名に冠した大学の学長として着任するにあたり、その歴史の重さと重責に身の引き締まる思いです。これまでの先輩方が作られてきた歴史を汚すことのないよう、誠心誠意、東京情報大学の舵取りに邁進する所存です。

  • ―学長に就任し、今日までに印象に残った出来事はありますでしょうか。
  •  

初出勤に先立ち、東京農業大学世田谷キャンパスの本部で辞令交付を受け、その夜、東京情報大学キャンパス内にある野球部の寮「絆寮」に入寮しました。鹿児島県から自分の車で持ち込んだ身の回りの物を快く部屋まで運んでくれた野球部皆さんの明るい笑顔とはつらつとした挨拶が今も眼に焼き付いています。以降、朝、昼、晩の食事を彼らとともにしながら、東京情報大学の未来を構想しています。寮から学長室まで小径を歩いて3分程ですが、小径の景色はなんともいえないゆったりした気分になります。

東京情報大学絆寮食堂にて (前列右から2番目 吉本学長)

吉本学長の考える東京情報大学の魅力について教えてください。

東京情報大学は、パソコンが一人一台ではなかった時代に誕生しました。それらの歴史と蓄積が東京情報大学の魅力を支えています。例えば、近年、問題が深刻化しているサイバー犯罪においては、株式会社日立システムズ様との協働による特別講義を正課の授業として開講していますが、この授業には千葉県警をはじめとした多くの県警の担当者が毎年参加しており、実際にサイバー犯罪の取り締まりの現場で働いている卒業生もおります。

デジタルコンテンツ分野においても、多くの才能あふれる卒業生が制作の現場で働いていますし、東京情報大学では近年、急成長するeスポーツにも注力しています。eスポーツは2025年に世界市場約4.5兆円、日本市場も約1,450億円に達すると推計されています。今後5年間でさらに20%以上の成長が見込まれる注目産業であり、単なる競技としてだけでなく、チームビルディングや戦略的思考など、マネジメント教育においても高い教育効果を発揮する分野です。

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2025年8月実施 e-スポーツ大会

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CanSat

【缶(Can)】+【人工衛星(Satellite)】を略したもの。
衛星と同じ機能を持った空き缶サイズの模擬衛星を、ドローンなどで上空50m程度まで打ち上げ、落下後、自動制御で目的地を目指す競技。

意外に知られていないのが、東京情報大学の宇宙開発への貢献です。米国ネバダ州で開催される世界大会「ARLISS(A Rocket Launch for International Student Satellites)」をはじめ、国内外のCanSat大会で通算15回以上の優勝実績があります。

ARLISSでは世界中の大学と競い合い、AI・システムデザイン研究室の斎藤ゼミと秋山ゼミが率いるチームはこれまでにいくつもの大会で優勝経験を持ち、技術力・教育力が国内外で高く評価されています。

看護学部は、「情報」×「看護」というキャッチフレーズに象徴されるように、情報に強い看護師育成が魅力です。AIの進展によりホワイトカラーの仕事が大きく変容する中で、看護の在り方も大きくかわります。その時に、AIを駆使しながらAIでは代替できない心に寄り添う看護師が求められます。AI教育にいち早く取り組んできた東京情報大学だからこそ、未来を見通した「情報に強い」看護師育成が可能です。2025年度からはVR教材も演習に導入しました。これにより臨地実習では経験できない手術室の中や救急救命の現場を仮想現実(VR)の中でリアルに体験することができるようになりました。

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CanSat 世界大会
打ち上げロケットと開発チーム

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看護学部看護学科 VR演習

―これからの東京情報大学について方向性をお聞かせください。

「情報」という言葉に包含される事象は、単にコンピュータ上で操作されるデジタル情報だけではありません。五感、すなわち、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の身体をセンサーとする知覚も情報です。言い換えれば、身の回りのすべての事象が情報なわけです。東京情報大学は、総合情報学部と看護学部の2学部からなる大学ですが、狭義の情報のみならず、広義の情報を幅広く取り扱う学問分野を持つことが特徴です。今後は、両学部の有機的な連携を強化し、あらゆる情報を科学する大学として成長させていきたいと思います。

―それぞれの学部でより力を入れたい取り組みを教えてください。

≪総合情報学部≫

「情報システム」「データサイエンス」「情報メディア」の3学系で構成されます。国が将来の成長分野と位置付けるIT分野が学問領域です。情報システム学系は約28兆円規模の国内IT市場を担うシステム・ネットワーク・ゲーム開発技術者の育成、データサイエンス学系は3兆円規模に拡大するビッグデータ・AI市場で活躍する分析人材を養成します。情報メディア学系は10兆円超のデジタルコンテンツ市場や急成長するeスポーツ・VR/AR分野にて新たな価値を創出する人材を輩出し、東京情報大学としての存在感を高めます。

≪看護学部≫

看護業界の現状は、病院看護8兆円、市場成長著しい在宅・訪問看護4兆円という巨大市場ですが、人材不足が深刻な分野です。東京情報大学は「情報に強い看護師」の育成を掲げています。医療現場は電子カルテや遠隔医療、手術ロボットなど高度な情報化を先行導入してきた業界であり、看護師も日常的に情報機器を活用していますが、看護における情報教育は不足しています。東京情報大学は医療情報デバイスを自在に扱える看護師養成を強みとし、分野のトップランナーを目指します。特に政府が推し進める「アドバンスト・エッセンシャルワーカー(AIを駆使できる看護師)」にも積極的に対応していきたいと考えています。

また、今後は、学ぶ場所に捉われないハイフレックス型の講義の拡充やアントレプレナーシップ教育にも力を入れていきます。近年、学生の学ぶ意欲の低下が懸念されています。学生の学ぶ意欲を刺激し、チャレンジする楽しさをアントレプレナーシップ教育では充実させ、学生の満足度と自己承認の向上に努めたいと考えています。

―「情報」「看護」どちらも暮らしに密接関わる分野ですが、これまでと今後の地域連携について教えてください。

東京情報大学は、千葉市、香取市、佐倉市、四街道市と連携協定を締結しております。また、前述のとおり株式会社日立システムズ様をはじめ多くの企業との連携にも力を入れています。さらには、2024年度から実施されている文部科学省「DXハイスクール」採択校に対し、多くの高等学校へプログラムの提供や講義開発のサポートをしております。

看護学部の地域連携事業は、地域包括支援センターや訪問看護ステーション、地元病院など200以上の協力施設と連携し、実習や健康イベント、公開講座などを実施しています。具体的には、連携協定を締結した自治体地域住民の健康相談、予防医療推進、災害時支援活動、子ども・高齢者向け健康セミナーやストレス・マネジメントプログラムの展開、また地域保健活動やICTを活用した地域包括ケアに力を入れています。このほか、行政・企業との産学官共同研究も積極的に実施し、地域が抱える健康課題の解決を目指した研究や、地域医療従事者への研修・情報化支援、キャリア教育、セルフモニタリングツール開発など幅広い活動内容を展開しています。

地域のさまざまなステークホルダーのみなさまに「情報大が近くにあってよかった」と言っていただけるような「地域に愛される大学」を目指して、積極的に地域との交流を進めてまいります。

―吉本学長ご自身のことについてもお聞かせください。学生時代の思い出や影響を受けた人物などはいらっしゃいますか?

私は高校1年生の時、当時珍しかった登校拒否児でした。その当時、書道を担当していただいた故 城戸筑山先生には、いわば命を救っていただきました。人生においてつまずきは誰しもあるものですが、そのつまずきに寄り添ってくれる教師に巡り合えたことが、私の人生をこの歳まで継続させることになりました。この経験から、何かにつまずいている生徒や学生、その保護者の方々に出会ったときは、誰よりもよき理解者であろうと心がけており、誰よりもその痛みがわかるのではないかと自負しています。

その経験から大学では臨床心理学/精神分析学を学ぶことになりました。その後、家業の手伝いを通じて文系から理系に転じ、農学の研究者になりました。私の人生は、一直線ではない雑草だらけの「あぜ道」であったと自認していますが、あぜ道を歩いたからこそ今の私のキャラクターを形成したとも思います。

―大切にしている価値観や座右の銘について教えてください。

「信なくば立たず(民無信不立)」孔子『論語(顔淵編)』

「チャンスの神には後ろ髪がない(Opportunity knocks but once.)」ポセイディッポス/レオナルド・ダ・ヴィンチ

「神は細部に宿る(God is in the details)」ミース・ファン・デル・ローエ

私は、出会った人との縁で今日まで生かされてきました。その縁は、ほんの一瞬立ち現れるもので、一瞬にして過ぎ去っていく後悔も多く経験しました。したがって、常に出会いの瞬間を見逃さないように注視しつつ、与えられた仕事については、細部をおろそかにしないように自分なりに全力で仕事を進めてきました。その諸々に今は感謝するばかりです。

「おもしろき/こともなき世を/おもしろく/棲みなすものは/心なりけり」(高杉晋作/野村望東尼)も好きな言葉です。たとえ世の中が面白くない世であっても、その世界を輝かせるのはあなたの心次第である。つまり、ハートとマインドが重要だと思っています。

最後に学生・教職員・卒業生・地域の方々へメッセージをお願いします。

東京情報大学は、歴史と実績に裏打ちされた素晴らしい大学です。学生のみなさんは、ここで学ぶ喜びを大切にしてください。教職員のみなさまは、ここで働く意義をかみしめてください。卒業生のみなさんは、この大学で学んだ誇り高く持ってください。地域のみなさまには、どうかみなさまの期待をお寄せください。全力で皆様の暮らしにコミットする「地域に愛される大学」になって参ります。

吉本博明 第8代東京情報大学長 
1992年早稲田大学卒業。2006年九州大学大学院生物資源環境科学府森林資源科学専攻(博士後期課程)修了。博士(農学)
第一工業大学工学部自然環境工学科教授、南九州大学健康栄養学部 食品開発科学科教授、同大学副学長を歴任し、2025年4月より学校法人東京農業大学参与。

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