理事長メッセージ

学校法人
東京農業大学理事長大澤 貫寿

学校法人東京農業大学は、東京農業大学の初代学長横井時敬先生が掲げた建学の精神「人物を畑に還す」、教育の理念「実学主義」を継承し、各傘下学校の特徴を活かした特色ある教育・研究を推進し、広く社会に貢献してまいります。

今、社会は大きな変革期を迎えています。超情報化社会Society(ソサエティ)5.0に突入し、経済は労働集約型から知識集約型へと移行しつつあります。AI(人工知能)が一般化し進化していく社会で、人間に求められるのは、知識を基盤に新しいアイデアや構想を生み出す創造性やコミュニケーション能力であることは明らかです。そうした大きな構造変化に対応した教育研究を、法人としてどう実践していくのかが問われています。

大学に関しては、都市部と地方での大学の序列化が進み2極化、さらに3極化と格差が広がっています。東京農大と東京情報大では、これまで入試制度改革や、新学部設置、学科再編、広報強化など、さまざまな手立てを間断なく進めてきました。しかし今後18歳人口が100万人を割り一層の厳しさを迎えるにあたり、さらに時代の変化に即した適切な対応が求められています。いかにそれぞれの学部学科の特色を打ち出していくか、そして教育の質的向上や研究の高度化、グローバル化などを通して学生の質を保証する出口管理を徹底し、大学の社会的発信力を向上させていくことが基本です。学部長、学科長の下、教職員一体となった対応を進めていく体制を整えることが喫緊の課題だと考えています。

少子化時代の私学の初等・中等教育は、人間と社会について深い見識を持った主体的で洞察力に富んだ思考力の育成に努めることが重要です。特にAIによる代替が不可能な分野で新たな職能に対応できる柔軟な能力、そして未来の変化を予測、理解し主体的に判断できる能力の育成が必要です。これまでの教育方法のあり方を見直し、少人数対応授業法や研究指導法さらに評価のあり方まで見直していく必要があります。またこれからは、多様な年齢層やさまざまな国籍を持った学生・生徒・児童が教育を受ける時代になっていきます。法人や各学校のIR(財務情報や学習成果の調査分析など)の必要性が高まってきています。これら各種データと各学校が独自に設計したeポートフォリオの組み合わせによる学習指導ツールの開発が必須となり、そのための基盤整備を進めていかなければならないと考えています。

これまで、施設、設備の整備にも力を入れてきました。東京農大では研究拠点となる世田谷キャンパスの研究棟、厚木キャンパスの実験実習棟や改組に伴う施設、設備の拡充を進め、東京情報大では看護学部実習棟を、中学高校ではキャンパス整備や情報通信設備の充実などを積極的に図ってきました。さらにこれまで東京農大が蓄積してきた教育資源の活用を図り、独自の質の高い教育を通して地域での発信力の向上と併設校連携強化の一環として農大稲花小を開校し、法人の学園化を進めてきました。


これからの学校法人の経営は、少子化と文部科学省の定員管理の規制が厳しくなるなか、量的拡大から質的再編の方向に舵を切らざるを得ないことは明らかです。これらを踏まえ策定した第三期中期計画と中長期財政計画の下、安定的財源を確保し、収支の均衡を図り、確かなデータに基づいた経営基盤の確立に努めていきます。法人の使命は、小中高から大学各部門の教育・研究の独立性を尊重し、それぞれの発展を支援することにあります。そのための努力は惜しみません。