技術科教育研究室
日本の木工具の歴史的研究、および、中学校技術科教員を
めざす学生に実践的な指導を行っている。
研究室所属 教員:星野欣也 助教授(博士(学術))
(Dr. HOSHINO kinya)
略歴 業績 学会等
担当科目:「木材加工」、「金属加工」、「機械」、
「総合演習」、「教育実習」

伝統技術を活かした技術教育
昔の大工さんはどんな道具を使っていたのでしょう?
京都や奈良の古社寺、あるいは古い町並みの民家は木材
を主な建築材料にしています。ところが現代の建築物は、
金属やガラス、プラスチック系の材料などが多く使われ
ています。また、ときおり見かける住宅建築では、基礎
工事の後に柱が立つと以外に早くでき上がってしまいま
す。電動工具などで効率よく作業をしているためでしょ
う。つまり、主に木材加工を行った昔の大工さんが使っ
た工具は現在のものとは違うものでした。 私たちの祖
先は木材の性質を理解していて「適材適所」に利用し、
木目や木肌の味わいを活かして用と美を兼ね備えた建築
物を手作業で多くの時間を費やして造りました。
材料を比較すると、木材の他に、土を素材とした壁や
瓦、紙、石、砂などほとんどが自然のものを用いていま
す。これに対し現代の建築材料は廃棄に多くの問題をか
かえています。
昔の技術を探る
実用の工具は使い果たされほとんど残りません。昔の
工具を知るには、加工の対称となる木材の種類や性質、
加工技術、家具調度品の種類や用途、歴史的背景などを
理解しなければなりません。また、文献に記されたり絵
画に描かれた内容から、形状や用途の一部を知ることが
できます。伝統技術によって作業をしている現代の職人
衆を訪問することも、使用方法や技術内容を探る手掛か
りとなります。談話によって、以前から疑問であった記
録上の言葉や名称が氷解することもしばしばあります。
他に江戸時代までの鉄製品は、主に砂鉄を素材とした製
鉄法による鉄鋼材料が使われ、明治時代以降の鋼材とは
性質が違います。これをもとに歴史的資料を見分けるこ
ともできます。 例えば、大鋸(おが)という製材用の
ノコギリは室町時代に使われ始めました。現代でもノコ
ギリで挽いた屑を「オガクズ」と呼んでいます。
手作業を伝える
文化財となっている建築物は多くの職人が関わりまし
た。最近、こうした伝統技術の素晴らしさに魅せられた
若者たちが、厳しい職人の世界に弟子入りし、自らの手
で遠い昔の職人達を上回る建築物を建てたいと励んでい
ます。
この様なプロの職人たちではなくても、数十年前まで
一般家庭の炊事、洗濯、掃除など簡単な道具を使った手
作業でした。子供達も小さなナイフで鉛筆を削り刃物の
扱いに慣れていました。しかし、生活に便利な電化製品
が普及しすると、進化した器具任せになり素材の感触や
手加減の感覚は分からなくなりました。こうした環境に
育った大学生が手作業をすると新鮮な驚きを示します。
時間をかけて鋭く研ぎあげたカンナで削った木製品は大
切に扱っています。
木片や金属など素材を加工すると、硬さ、強さ、暖か
さなどの性質を実感することができます。また、手加減
を誤ると怪我をすることもあります。子供達がこうした
体験をすることは人格形成に必要なことです。しかし、
このチャンスは中学校技術科「ものづくり」の時間だけ
となってしまいました。
本学では、中学校技術科の教員免許が得られます。
技術科教員は重要な使命を担っているのです。そのため
には教員自身が基礎技能を身につけていないと「おもし
ろい授業」が展開できません。こうした技術を幅広く理
解するために、伝統的な技術内容を研究し明らかにして
後世に伝えなければならないと考えています。
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最終更新日 2005年4月1日 Last updated on April 1,2005.