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激闘・兵庫県冬の陣!

学部1年 土屋昂靖

サツマヒメカマキリ―冬季に幼虫で越冬するカマキリ―

この虫の存在を知ってからどうしても採ってみたいという気持ちが抑えられず情報はないものかと調べてみるも、採集記もあまりヒットせず生息地も絞れない。

大学に入学してから採集を始めた筆者は採集力に乏しく、今期はあきらめようと思っていた。

そんな時、日ごろからお世話になっているD2の大島先輩に
「サツマヒメを採りにいかないか?」
との話をいただき、同行させていただくことになった。

1日目

同期で私と同じくカマキリ好きの田口さんと大島先輩に空港で合流し、
関西国際空港へ飛ぶ。3月上旬、巷は新型コロナウイルスの流行により大騒ぎだ。
空港も心なしかすいているように感じた。
関空から車で兵庫へ向かう。
車内では大島先輩から虫について様々な話を教えていただいた。

無事にポイントに着くもあいにくの雨。
空港で調べた時点ではポイントに到着する頃には止む予報だったのだが…。
雨天下では採れないという情報も無いので試しに1時間をめどにビーティングをしてみることに。

ポイントは落葉広葉樹を主体とした雑木林で、カシの幼木やアオキなどの常緑樹が混じっている。
大島先輩によると、人の目線ほどの丈の常緑樹に本種は多いとのこと。
この情報を頼りに手ごろな丈の木をたたいていくも、うーん。
でない。
マイマイガの幼虫やカメムシ類はポロポロと落ちるものの一向に姿を現さないサツマヒメ。
田口さん、大島先輩も苦戦しているようだ。やはり雨天時のビーティングは分が悪いらしい。
結局、3人ともお預けを食らったままタイムリミットを迎え、宿のある淡路島へと向かう。

2日目

宿を出て島内のS山へ向かう。先日とは打って変わって良い天気だ。

アワジヒメオサムシやオオオサムシなどが得られないものか、と前日の夜に目星をつけていた崖を巡って崩していくも、石交じりだったり乾燥していたりでなかなか厳しい。
そもそも淡路は四方を海に囲まれているため風が強く乾燥しがちな土地なのだという。
ビギナーの私にはキツイ…。
材割で得られたキイロスズメバチやオオゴキブリ、樹皮下から得られたゴミダマをつまみ、
県本土のサツマヒメのポイントへ再アタックに向かう。

S山で採集した昆虫

しかし、明石海峡を渡る際、本土側に文字通り暗雲が立ち込めているのが見える。
どうやら県北では今日も雨が降っているらしい。
道中にポツポツと雨に降られるもポイントに昼頃に到着。先日と同様に常緑樹の低木を叩き始める。

低木をビーティングする

しばらく黙々と叩いていると、大島先輩がサツマヒメを落としたとのこと。
現場に駆け寄るとネット上に2個体のサツマヒメの姿が(とてもかわいい)。
ありがたいことに2個体落ちたので私と田口さんに1個体ずつ分けてくださるそうだ。
サツマヒメを受け取り、再びビーティングを始めようとした矢先、ポツポツと雨が降り始める。
最悪だ。しばらくすると雨はなんと雹に…。超最悪だ…。

ネットが濡れるのが嫌だったので、雹が止むまで材割などして待つ。
しばらくすると雹が止んでくれた。

林内をひたすら叩いて回っていると、昨日の虫に加えてハムシ類、テントウムシ類、アミメカゲロウ類、フユシャク類などが得られたものの肝心のサツマヒメは姿を現してくれない。
田口さんも本命は採れていないようだ。

葉裏に潜むクサカゲロウ
大島先輩に相談すると、
「林内でも、場所によって個体数の密度に違いがある。枯れ葉の引っかかった枝の方がよい」、とのこと。
密度の高いエリアに絞って枯れ葉付きの枝を徹底的に叩く作戦に変更。

レクチャー通りに枯れ葉付の枝を叩いていると…ん…?
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」(表現できない叫び)
夢にまで見た(実際に夢で見ている)虫がネットに乗っているではないか!

サツマヒメカマキリ

サツマヒメを容器に収め、改めて落ちてきた木を眺める。
お手本通りの枯れ葉が引っかかった人の背丈ほどの常緑樹の低木だ。
この木を参考にしてビーティングを再開するとすぐさま2個体目が!
嬉しさのあまり変な笑いが湧いてくる(今思うとかなりキモかったと思う)。
程なくして田口さんの叫び声が聞こえた。無事サツマヒメを落とせたようだ。

夢中でサツマヒメを撮影する田口さん

その後は、私も田口さんもコツを掴み、次々と追加個体を採集できた。
大島先輩はルッキングに挑戦し、2個体を発見。ビーティングでは観察できない自然な姿を拝むことができた。

葉裏に潜むサツマヒメカマキリ

全員満足いく数採集でき、日も落ち始めたので宿へ帰ることに。
宿では反省会という名目でカマキリ学界隈の話や昆研、研究についてなど様々な興味深いお話をしていただいた。

サツマヒメのポイントで採集した昆虫

3日目

最終日は島内でサツマヒメを探した。
大島先輩が事前に目をつけていたポイントをめぐるも、1箇所目は車での侵入が厳しく断念。
2箇所目は先日のポイントとは環境がずれていた。
3箇所目は環境的に悪くなく、餌になりそうな虫はポロポロ落ちてくるが…。
枝に引っかかった枯れ葉が無い。
風が強い淡路では引っかかった枯れ葉はすぐに飛ばされてしまうのだろう。
その後、島北部の河川沿いで再びオサ堀に挑戦するも乾燥が激しくボウズ。
時間の関係もあり帰路に就くことになった。
乾燥に悩まされた淡路ではあったが、是非時期を変えてリベンジしてみたい。

※今回の採集では、様々な面で大島先輩にお世話になりました。
この場を借りてお礼申し上げます。

ー完ー