博士前期課程一年 瀬戸山 知佳
鹿児島県には、二つの大きな半島がある。
西を薩摩半島、東を大隅半島という。
この二つの半島の自然環境は、陸地で繋がっているにもかかわらず、全く異なる。
小島先生の感覚では、二つの半島は地形によって島状に隔離され、薩摩半島と種子島、大隅半島と屋久島の間で自然環境が類似しているらしい。
今回は、半島間で環境の乖離した薩摩半島・大隅半島のミズギワカメムシ類を確保するため、小島先生・M2の瑤寺さんの調査に同行させてもらった。
1日目に薩摩半島、2日目に大隅半島の外周を回り、各々の調査を行うこととした。
滞在中の天気予報は、初日から最終日まで雨。
予報が外れることを祈ったが、 非情にも、鹿児島到着日の夜は土砂降りの雨音を聞きながら眠りについた。
(写真 鹿児島市内)
小島先生は強力な晴れ男体質で、今までの調査で雨に降られたことはないらしい。
しかし、この日の薩摩半島は一日中雨。何故だ。
小島先生だけ神社でお参りを済まし、薩摩半島の南部に向かう。
なんでも小島先生は占い師に、“非常に良い守護神が付いているから大事にするように”と助言を受けたらしい。律儀な人だ。
この日は、薩摩半島の海沿いを巡った。
筆者の調査対象は、ミズギワカメムシ類という水際に生息するカメムシである。
そのため、河川や止水域を調査させていただいた。
(写真 止水域)
天候は悪化する一方だったが、調査をはじめると天候は気にならない。
雨に打たれながら、ただ黙々と調査を行った。
各々成果はあったが、止まない雨に段々と士気が下がってくる。
最近の激務による寝不足で、小島先生は疲労が溜まっている様子。
(写真 上裸で頑張る小島先生)
少数ではあるが、各自の目的の昆虫は採集でき、 まずまずの結果で1日目を終えた。
朝方、雨雲レーダーを確認すると、大隅半島の3分の2が濃度の高い雨雲に覆われていた。
薩摩半島に雨雲はかかっていない。確実に採集順路を誤った。初日に大隅半島を回ればよかった。
ニュースによると、今回の雨は50年に1度の大雨らしい。運が悪すぎる。
車に乗り込み、大隅半島行きのフェリーが出る船着場に向かう。
昨日と打って変わり、晴れ間の見える薩摩半島の空を憎々しく眺めていると、小島先生がおもむろに口を開いた。
「この雨、俺のせいなんだよ。」
急に何を言い出すのだ。
「今、俺50でしょ。この雨も50年に1度でしょ。俺の行いの悪さが50年溜まって、今この雨を降らしてるんだよ。いやぁ絶対俺のせいだ。」
小島先生の疲労が限界に達したようだ。
しかし、確かに最近の小島先生には、いくつか思い当たる悪行があったように思う。
途中、鹿児島県の荒田八幡宮で下車し、 この日は、学生も小島先生に便乗してお参りを済まし、大隅半島へ向かった。
無事にフェリーが大隅半島へ到着し、車で南下する。
途中、タルタルプラザ(道の駅)に寄り、ソフトクリームを食べた。
もこもこしている。うまい。濃いミルク感が堪らない。
しかし、外で食べ始めると外気に触れた部分が一気に溶け出してきた。
味わっている暇はない。一気に口の中にかき込んだ。
駐車場に大量の斑点を残してしまい、申し訳ない。今度は室内で食べることにする。
(写真 ソフトクリーム)
その後、南下を続けたが雨足はどんどん激しくなる。
先ほどの道の駅にあったパンフレットに、雄川の滝というものが紹介されていた。
細く繊細な滝の写真が掲載されている。
折角なので、行ってみた。
(写真 雄川の滝)
パンフレットに掲載されていた滝は、見る影もない。
ここはイグアス(アルゼンチン)か?ナイアガラ(アメリカ)か?
ここでの調査は諦め、昼食をとることにした。
花瀬にある濵田農園さんのレストランにお邪魔した。
ここではクラシック音楽を聞かせてブドウ栽培をしており、そのブドウを用いたワインの製造も行なっている。
値段も見ず豪快にワインを注文する小島先生。小心者の自分には到底できない。
デラウェアのロゼワインとメルローの赤ワイン。
ロゼワインは果実味溢れる香りと優しい甘さで、鬱々とした気分を癒してくれた。
赤ワインは物理的に強いとろみがあり、このようなワインは初めてだったので、感激させられた。
各100本しか作られていない希少なワイン。こんな出会いをさせてくださった小島先生に感謝。しかし、会計は譲れない。
お料理は、地鶏の唐揚げとニジマスの塩焼き、花瀬産の蕎麦をいただく。
歯ごたえが良く濃厚な香りがする地鶏、 柔らかく口の中でホロホロと解けるニジマス、 そばの香りを存分に堪能できる花瀬のお蕎麦、贅沢すぎる。
このままだとグルメツアーになるので、最後は大隅半島北部の大隅湖へ向かった。
(写真 大隅湖)
各々大隅湖周辺で調査を行う。
筆者の目当てであるミズギワカメムシ類は、30個体ほど採集できた。
成果はあったが、これが晴れていればさらなる成果があったかもしれない。
3人でもう一度調査に来ることを誓い、調査を終えた。
薩摩半島に戻り、最終夜の夕食は天文館のお洒落なお店でいただくことにした。
若い女性が一人で営む、アジアンチックで雰囲気の良いお店だった。
(写真 お洒落な前菜)