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小島先生が降らした50年に1度の雨

博士前期課程一年 瀬戸山 知佳

鹿児島県には、二つの大きな半島がある。

西を薩摩半島、東を大隅半島という。

この二つの半島の自然環境は、陸地で繋がっているにもかかわらず、全く異なる。

小島先生の感覚では、二つの半島は地形によって島状に隔離され、薩摩半島と種子島、大隅半島と屋久島の間で自然環境が類似しているらしい。

今回は、半島間で環境の乖離した薩摩半島・大隅半島のミズギワカメムシ類を確保するため、小島先生・M2の瑤寺さんの調査に同行させてもらった。

0日目 鹿児島市内

1日目に薩摩半島、2日目に大隅半島の外周を回り、各々の調査を行うこととした。

滞在中の天気予報は、初日から最終日まで雨。

予報が外れることを祈ったが、 非情にも、鹿児島到着日の夜は土砂降りの雨音を聞きながら眠りについた。

1日目 薩摩半島

(写真 鹿児島市内)

小島先生は強力な晴れ男体質で、今までの調査で雨に降られたことはないらしい。

しかし、この日の薩摩半島は一日中雨。何故だ。

小島先生だけ神社でお参りを済まし、薩摩半島の南部に向かう。

なんでも小島先生は占い師に、“非常に良い守護神が付いているから大事にするように”と助言を受けたらしい。律儀な人だ。

この日は、薩摩半島の海沿いを巡った。

筆者の調査対象は、ミズギワカメムシ類という水際に生息するカメムシである。

そのため、河川や止水域を調査させていただいた。

(写真 止水域)

天候は悪化する一方だったが、調査をはじめると天候は気にならない。

雨に打たれながら、ただ黙々と調査を行った。

各々成果はあったが、止まない雨に段々と士気が下がってくる。

最近の激務による寝不足で、小島先生は疲労が溜まっている様子。

(写真 上裸で頑張る小島先生)

少数ではあるが、各自の目的の昆虫は採集でき、 まずまずの結果で1日目を終えた。

2日目 大隅半島

朝方、雨雲レーダーを確認すると、大隅半島の3分の2が濃度の高い雨雲に覆われていた。

薩摩半島に雨雲はかかっていない。確実に採集順路を誤った。初日に大隅半島を回ればよかった。

ニュースによると、今回の雨は50年に1度の大雨らしい。運が悪すぎる。

車に乗り込み、大隅半島行きのフェリーが出る船着場に向かう。

昨日と打って変わり、晴れ間の見える薩摩半島の空を憎々しく眺めていると、小島先生がおもむろに口を開いた。

「この雨、俺のせいなんだよ。」

急に何を言い出すのだ。

「今、俺50でしょ。この雨も50年に1度でしょ。俺の行いの悪さが50年溜まって、今この雨を降らしてるんだよ。いやぁ絶対俺のせいだ。」

小島先生の疲労が限界に達したようだ。

しかし、確かに最近の小島先生には、いくつか思い当たる悪行があったように思う。

途中、鹿児島県の荒田八幡宮で下車し、 この日は、学生も小島先生に便乗してお参りを済まし、大隅半島へ向かった。

無事にフェリーが大隅半島へ到着し、車で南下する。

途中、タルタルプラザ(道の駅)に寄り、ソフトクリームを食べた。

もこもこしている。うまい。濃いミルク感が堪らない。

しかし、外で食べ始めると外気に触れた部分が一気に溶け出してきた。

味わっている暇はない。一気に口の中にかき込んだ。

駐車場に大量の斑点を残してしまい、申し訳ない。今度は室内で食べることにする。

(写真 ソフトクリーム)

その後、南下を続けたが雨足はどんどん激しくなる。

先ほどの道の駅にあったパンフレットに、雄川の滝というものが紹介されていた。

細く繊細な滝の写真が掲載されている。

折角なので、行ってみた。

(写真 雄川の滝)

パンフレットに掲載されていた滝は、見る影もない。

ここはイグアス(アルゼンチン)か?ナイアガラ(アメリカ)か?

ここでの調査は諦め、昼食をとることにした。

花瀬にある濵田農園さんのレストランにお邪魔した。

ここではクラシック音楽を聞かせてブドウ栽培をしており、そのブドウを用いたワインの製造も行なっている。

値段も見ず豪快にワインを注文する小島先生。小心者の自分には到底できない。

デラウェアのロゼワインとメルローの赤ワイン。

ロゼワインは果実味溢れる香りと優しい甘さで、鬱々とした気分を癒してくれた。

赤ワインは物理的に強いとろみがあり、このようなワインは初めてだったので、感激させられた。

各100本しか作られていない希少なワイン。こんな出会いをさせてくださった小島先生に感謝。しかし、会計は譲れない。

お料理は、地鶏の唐揚げとニジマスの塩焼き、花瀬産の蕎麦をいただく。

歯ごたえが良く濃厚な香りがする地鶏、 柔らかく口の中でホロホロと解けるニジマス、 そばの香りを存分に堪能できる花瀬のお蕎麦、贅沢すぎる。

このままだとグルメツアーになるので、最後は大隅半島北部の大隅湖へ向かった。

(写真 大隅湖)

各々大隅湖周辺で調査を行う。

筆者の目当てであるミズギワカメムシ類は、30個体ほど採集できた。

成果はあったが、これが晴れていればさらなる成果があったかもしれない。

3人でもう一度調査に来ることを誓い、調査を終えた。

打ち上げ(余談)

薩摩半島に戻り、最終夜の夕食は天文館のお洒落なお店でいただくことにした。

若い女性が一人で営む、アジアンチックで雰囲気の良いお店だった。

(写真 お洒落な前菜)