学部3年 佐伯智哉
7月末、⁇「屋久島行かない?」…え?行きたいかも。いや、時季が遅いか…
フットワークの軽さとノリは大切。急きょ、約1週間後の屋久島遠征を決めた。
日程は5日間、採集は実質2日間。
メンバーは、小島先生、金子さん(D2、コガネムシ専門)、私(B3、タマムシ専門)の3名である。
朝5:00、起床。朝は苦手だが、仕方がない。
しかし、始発バスより早い時間のため駅まで歩いて行かなければならない…初っ端からツライ…。
学生にタクシーという概念はない。
羽田空港を出発。遠征毎に翼のマークを撮るのが私のこだわり。
鹿児島空港に着いた後は、勢いそのまま鹿児島本港へ。
港までの道中はほとんど日を遮るものはなく、すでに汗だく…。
そして、腹ごしらえにラーメンを食べる。
食べている最中に、暑さで思考にバグが起きていたことに気がつく…。ラーメンはおいしかった。
屋久島宮之浦港着。海と空、山々のコントラストが圧巻。
早起きのせいか、高速船では爆睡。気がついたら屋久島に到着していた。
体は南西諸島の気候を感じているのに、目の前にそびえたつ山々に屋久島を感じる。
初めての屋久島に興奮しながら、バスで宿のある安房まで行くことに。
宿で荷物整理を終えると時刻は15:00程。
特にポイントの選定もしてこなかったため、とりあえず屋久島っぽいところへ。
道中のヤクザルたち。車道のど真ん中で毛づくろいをする。
どんどん標高を上げ、“ヤクスギランド”へ。場所が場所なので採集はNG。
到着後すぐに管理の方?から「時間も時間だから“紀元杉”を見に行くといい」
と勧められたので行くことに。
圧巻の紀元杉。小柄な私と比べるとその大きさがうかがえる。
車と比べてもこの大きさ。もはや杉とは思えない…
屋久島の壮大さを感じ、明日からの採集に思いを馳せる。
帰路で軽く採集をしたが、そもそもあまり虫が採れない。
あれ、さっき思いを馳せたばかりなのに…。場所が良くないんだ、そう、それしかない。
この日は、小島先生と合流しトラップを仕掛けに林道へ。
タマムシを採集しているとトラップを仕掛けることはほとんどないので勉強になる。
トラップを仕掛け終えると、先生は現地ガイドさんの所へ。
お昼には戻ってくるとのことで、それまで採集することに。
林道とはいえ、環境が良いせいか全体的に暗め。
タマムシ屋にとっては、ノリノリにはちょっとなれない。
とはいえ、採集するからには採る!が今年のモットーなので、長竿を伸ばしては戻しを繰り返す。
クモガタナガタマムシ Agrilus mallotiellus
その名の通り、上翅に雲状紋があるおしゃれなナガタマ。
ウエノナガタマムシ A. uenoi
時季が遅いせいか、採った時にはすでにボロボロ…
そのほかマスダクロホシタマムシ(以下タマムシ略)、ムネアカチビナカボソ、オオダンダラチビがいくつか採れた。まあ、時季も時季だしね。こんなもん。
お昼は、現地ガイド兼カメラマンさんの所で事前に準備していただいた
うどんをいただく。現地の取り組みや、先生の思惑等いろいろとお話を伺った。
午後も午前中と同じ林道へ。
日が暮れるまで採集できるので、さらに奥まで進んでみることに。
奥に行くとスダジイが多い開けた場所に出た。
これは…いる!徹底的にスダジイを掬いまくる。
カラカネナカボソ屋久島亜種 Craebus ignotus matsudai
屋久島亜種は青紫色が強くて一番好き。少なくはないけれど、採れるとうれしいやつ。
ヤクシマクリ Toxoscelus yakushimensis
意外と個体数は多く、多数得られた。
予想通りの2種を採ることができてホクホク。
こいつらは時季的にそんなに遅すぎではないのかも?
そのほかは、特に振るわず。良さげな立ち枯れの根元に地表の方々の亡骸を見つける。
マイマイカブリとクチキゴキブリ?せっかくなのでマイマイカブリだけお持ち帰り。
夜は小島先生と現地の方々と安房のバーで。タンカン酒がおいしかった。
最近の大学生について心配された(いろいろな意味で)そうだが、そんなことはない…ないはず。
サンプル(我々)のクセが強いんじゃぁ~!
朝。タマムシ日和。とりあえず、先生の宿へ向かう。
先生は現地の方と約束があるそうなので、我々は島の反対側の林道へ。
と、その前に金子さんに野暮用があるそうで現地の牧場へ。
お察しの通り、糞虫を狙うためのトラップに協力してもらったようだ。
コガネムシ屋の本懐らしいが…。トラップを昨日の林道に仕掛けたあと、目的の場所へ。
道中のビュースポット。近くに展望台もあり口永良部島を望むことができる。
林道の入り口付近で降ろしてもらい、私はひたすら林道を歩いて採集していくことに。
序盤は杉植林やタンカン畑が多く、成果はショボショボ。
休憩していると足元にアギトアリがいたので採った。撮ってはいない。初めて見たから、つい。
進んでいくと、数本のカシ類に目がいったので掬ってみる。
アマミクリ T. amamiensis
黒地に銀白色の毛斑が渋い。小楯板が金色なのがポイント高い。
初採集のかっこいい種を得られて萎え気味だったテンションも回復しさらに先へ。
ほどなくして、数本のアカメガシワの樹冠が掬える場所を発見!
ナイスなアカメガシワたち。クモガタナガやムネアカチビナカボソが多数得られた。
御神木たちから本遠征の必要最低限の目標を達成することができ満足。
途中、金子さんと合流。するとすぐにお目当てのタマムシが網に入った。
ナオミナガ A.naomii
屋久島固有種ナガタマムシ。良い虫具合は展足に現れる。
ナオミナガと思われる羽脱痕。寄主植物は示唆されているが、確定かなこれは。
暗くなってきたので帰ろうとしていたところに青いきらめきを発見。
ルリナカボソ C. niponicus
屋久島は多い印象だったが、時季のせいか全日程でこの1頭のみしか出会えなかった。
日が暮れたので帰宅。夜は宿の方が兼営している居酒屋で。
トビウオの唐揚げ。飛んでいる!!海上を飛ぶトビウオ見たことないけど!
その夜、ソーティングをしていると2頭採ったはずのナオミナガが1頭しかいない…
…はぁ、そういうとこだぞ、まじで。
登山の日。朝4:00起きで小島先生と合流。登山の前に、朝食と昼食のお弁当を買いに行く。
本来は予約必須なのだが、わざわざ作っていただいた。大変ありがたい。
車を走らせ、登山口へ。登山口ですでに標高1350mほどある。
登山口。The 悪天候…道も木もびしょびしょ…
とりあえず、登りながら考えることに。登っていくと、屋久島らしい環境に囲まれていく。
最近折れてしまったらしい、屋久杉の巨木。
このような名前のつかない縄文杉レベルのものがまだまだあるらしい。
登れども天候は優れず、雨まで降ってくる始末。
先生が引き返す判断をしたので、ちょろっと調査をして惜しくも引き返すことに。
モミを掬う。モミにモミハモグリゾウムシというのがいるらしい。採れなかったが。
登山口に戻った後、すでに下界に戻っていた金子さんの迎えを待ち、3人でトラップを回収することに。
タマムシは0。悲しい。素晴らしいサシガメと良いヒゲナガゾウムシは入っていた。ずるい。
“コガネムシ屋の本懐”は大当たりだったそう。さすがである。
午後。先生は宿へ、我々は昨日の林道へ。
昨日、金子さんと合流した場所まで車で行き、私はさらに先へ行くことに。
昨日と同じ木でナオミナガを追加。
その後、徹底的に林道沿いを掬って行ったがなかなかタマムシは採れず…。
とはいえ、後に本遠征最大の発見をしていたことが分かる。今年の私はセンスが光る。
高速船の時間まで少しだけ林道に寄ることに。ツバキを掬えとのことで掬う。
屋久島のツバキシギゾウムシを狙ってのことだったが残念ながら採れなかった。
かなり長いという口吻を見てみたかったが…。
港に行く前に、益救(やく)神社へお参りに。
お参りをする先生。現地の方には不評だった悪Tシャツ。
先生に港まで送ってもらい屋久島を後に。先生は、その後2週間ほど屋久島に残り満喫したそう。
初めての屋久島、特攻遠征だったが、かなり楽しむことができた。
今までで一番お土産を買ってしまったのもそのせいかもしれない。
登山できなかったことや時季が遅かったことなど、いつかリベンジに行きたい。
調査に誘っていただいた先生や同行していただいた金子さん、現地でお世話になった方々に厚く御礼申し上げる。
完