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屋久島電撃戦

博士前期課程1年 嶋本習介

急きょ屋久島に行くことになった。

もともと、今年の秋に屋久島行きを計画していたのだが、先生にお誘いいただき、初夏の段階で渡島が実現した。

今回のメンバーは小島先生と、樽君(アリヅカムシが専門)、瀬戸山さん(同ミズギワカメムシ)、
私(同ヒラタカメムシ)の院1年生3名に3年の平林君(同カミキリムシ)を加えた学生4名である。

7/7

初日の朝の段階でもう事件が発生しており、3年生の彼が原付ですっ転んで血だらけぼろぼろ、
かつ、電車の遅延で飛行機にもギリギリで滑り込んできた。

…大丈夫だとは言っていたけど…ほんと??

鹿児島港。かわいい高速船。

船窓から。屋久島が見えた!

鹿児島港を発って2時間弱、我々を乗せた高速船はあっという間に屋久島に到着した。

レンタカーを借り、宿にチェックイン。

ひろい!

今回は安房に宿をとったため、宮之浦港からは想像以上に距離があった。

丸い島の回りに外周道路、のパターンの島は移動に時間がかかる。

朝早い便で羽田を発ったものの、飛行機、バス、高速船と乗り継ぐうちに時刻はもう夕方。

宿でいそいそと準備をし、まず最初のポイントへ向かう。

事前に航空写真を見て予想していた通りだが、それにしても杉が多い。
植林だらけで今後のポイント選びに難儀するのは間違いない…覚悟を決めた。

そして、ポイントへ。

材の様子を確かめながら林道を歩いていく。湿度や林のクオリティは申し分ない。

ヤクシマナガキマワリ。たくさんいる。

頸吻な方。

カビに侵されたカミキリ。

夕暮れ間近まで採集をしたのち、同期がFITを、私がライトFITをかけ、採集終了。

ライトトラップをこの林道の奥で行うことに決定した。

発電機一式を持ちこんでのライトだが、
林道(超超長い!)奥まで、(超超重い!)発電機を運ぶはめになり、
その役を引き受けてくれた樽くんには感謝しかない。

ライト点灯!

モンキゴミムシダマシ…。

なお…そこまでしたのにも関わらず、ライトには大したものが来なかった。
ライトの写真がモンキゴミダマで終わっていることからお察しいただけるであろう。
吹き上げチックで良い場所だと思ったのだが。
成果たる成果といえばミズギワカメムシくらい。
ミズギワを扱っている瀬戸山さんに渡したら喜んでいたのでよかった。

ウスバ…。

宿で先生と明日以降の計画を立てる。

7/8

この日、小島先生と平林くんは別行動で登山の予定である。4時半にガイドと宿で待ち合わせとのこと。
…が、関係ない我々までその時間に起きることになった。
音で目が覚めるほど強烈な雨が降っているのだ。。

え、この雨で行くの?と、とても疑問だったが、それでも登山班は出発していった。

二度寝し、次に起きたときには雨が止んでいた。

彼らはきっと大丈夫と信じ、我々も出発。

屋久島の森。植林多っ!

林道を流しながら採集を行った。

道中、ヤクザル、ヤクシカを目撃。

ヤクザルは完全に人を舐めきっており、子連れでも道の真ん中で平然とくつろいでいる。
車で近づいても、退きやしない。

林道沿いのポイントでは、稜線のある1箇所の、それも、とても狭い範囲に
大量のヒルが密集しているヒルゾーンがあり、げんなりした。

鹿が多いせいだと思い気をつけていたが、意外にも、今回の調査行ではこれっきりヒルを見ることはなかった。
よくわからない。

アギトアリ。

キガシラハサミムシ。


サツマヒサゴゴミムシダマシ。屋久島には固有の良いヒサゴくんが何種かいるが、残念ながらサツマ。

カタボシエグリオオキノコ。どこで会ってもイケメンです。

申し訳ないことにあまりこれといった虫の写真がない…。

午後は軽く…あまり軽くなかったが登山をしながら引き続き調査をした。
こちらのポイントは私的には大当たりで、研究対象のカメムシが多く得られた。

苔むした岩の上。杉の実生。

山頂。

ツツジが美しい。

吹き上げになっているので、ちらほらと虫が飛んでくる。

異常な数のハエ。

いい大きさの甲虫が飛んできたので大慌てでビーティングネットで受ける。

キマワリでした。

樽くんはオオキンカメを採っていたが、逃がしてしまったらしい。おい。

山頂付近ではビーティングでロドピナが落ちた。
期待したが、「普通の方」で少し残念。
ここで得られたヒサゴゴミダマくんも、これもやっぱり普通の子。

林内。すぐガスる。

宿に戻り、登山後の平林くんと合流、昨日の林道へ。

セスジナガキマワリ。

平林くんがどうやら「良い」ヒゲナガゾウを採集したようだ。

採集しながら聞いたところ、登山班は豪雨で待機を余儀なくされ、壮絶な調査になっていたらしい。

夕食後、宿からそう遠くない公園に街灯を見に行った。
テニスコートの明かりの水銀灯が凄かったのだが、さすがに遠慮。

アケビコノハ。

ヒメホシカメムシ。

ノコ。

いやー…写真撮ってるのが奇跡みたいなメンバー…。

ミツギリゾウムシ。
近くの材で交尾中の個体。体格差がすごい。
今回の調査を通し、かなり多くの個体を観察した。まぁ、残念ながらみーんなただのミツギリゾウ。

夕飯にチャーハンを作った。

7/9

島の反対側の林道を目指す。
ここでは樽くんの専門のアリヅカムシが爆発していたらしく、狂ったようにシフティングしていた。

対して、我がヒラタカメムシの成果はボヤ程度。
ただ、これまでの調査で採集できておらず少し焦っていたグループを採集でき、ほっと一安心した。

サツマニシキがとまっていた。

さすが湿度の高い島である。苔むした沢。
その湿度から高速で朽ちていってしまうのか、ドンピシャの美味しそうな材は少ない。
予想通り杉林に阻まれ、もどかしいまま最終日を終えてしまった。

コモンチビオオキノコ。そんなにcommonではない、と思う。

ミツギリゾウムシの擬死。

鹿の橋

最後はトラップ類の回収に向かう。

果たして…

ソーティングの結果、今回のライトFITのサンプルで特筆すべき成果はヒゲナガゾウムシぐらいだった。
髭がしっかり長いタイプのヒゲナガゾウは今まで採ったことがなく、
いつかライトFITで落としたいと思ったいたところだった。

一方、黒い大きな影がある!と期待したのが巨大なニセノコギリカミキリだったのにはとてもがっかりした。
(クロシデよりはマシ。臭くないから。)

カメムシは平常運転で、そんなに入っていない。
一日目にトラップの付近で珍しいカメムシを一頭採集していたので、
その追加を期待したのが、期待はずれに終わった。

それでも、いつかとんでもないカメムシが入ることを信じて、私はライトFITをかけ続ける…。
めげないぞ…決して…。

夜は小島先生と安房のバーで今回の調査を振り返った。
先生は来月また屋久島を訪れるそうだ。
私も、不完全燃焼感が否めないので機会があればまた来ようと思う。

7/10

屋久島特産パッションフルーツ。おいしい!

この日は片付けオンリーで離島。帰りも高速船だ。

鹿児島でしろくまを食べ、帰京する。

ちなみにこの5日後、私はまた鹿児島の地を踏むことになる。
その話はまた別の採集記で

次の採集記 大隅の夢 へ続く…